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御恵贈の御礼丨松尾剛行『キャリアプランニングのための企業法務弁護士入門』(2023年、有斐閣)+私論:企業が弁護士を採用したくない理由3つは忘れないで!

いつも大変お世話になっております。(2023年には日本組織内弁護士協会リーガルリスクマネジメントガイドライン研究会主催の講演会でも登壇でご一緒した)敬愛する桃尾・松尾・難波法律事務所パートナー松尾先生から御恵贈をいただきました。心より感謝申し上げるとともに、本Blogでもご紹介をさせていただければと存じます。

書籍のご紹介

本書の特徴 松尾先生の「キャリアプランニングのための企業法務弁護士入門」がいよいよ発売です。若手弁護士を対象にしたガイドブックといえると思います。本書では、法務の基本から予防法務、戦略法務、さらにはAI・リーガルテック時代の弁護士像に至るまで、幅広いテーマをカバーしています。実務経験に基づいたアドバイスや具体的な業務の進め方が紹介されており、法務キャリアを考える学生や新人弁護士にとって参考になる内容が多く含まれています。

先生のご高著のお買い求めは、 https://amzn.to/3Tjx5cH をご参照ください。

書籍のテーマに関連した別トピック ― もう1つ大事なこと

この本に関連して私がどうしても補足したいこと―若手弁護士自身が調べ学ぶこと

米田憲市編『会社法務部[第12次]実態調査の分析報告』(商事法務、2022年)241頁には、下記のとおり、弁護士資格を持った人を採用するときの「心配事・懸念」がきちんと調査されています。2015年(8年前)に置いて既に、私の肌感覚とも一致する通り、弁護士を採用したくない理由TOP3は明確であり続けたといえます。

  1. ビジネスセンス(に欠ける)
  2. 企業文化や企業風土に対する理解(に欠ける)
  3. 組織人としての意識(に欠ける)
https://inhouselaw.org/inhouse/archives/2486
  • 敬愛する松尾先生ですので、関連して現役の組織内弁護士・法務部員として、私見・所感を謹んで申し上げますと、本書が工夫・ヒントを沢山共有しつつも、キャリアプランニングにおいて盲点になりがち、かつ、争点化していないテーマ(本書は企業法務を取り扱う「法律事務所」のアソシエイト弁護士向けの研修講義録に近い)として「way of working」に注意が必要があるのではないかと考えます(なお本書の価値を一切損なうものではなく、そこを分かって読むと◎という趣旨です)。
  • 松尾先生が、お会いした方はご存知のように、鋭く知性がずば抜けて高く、かつ、相手をリスペクトして和ませてお話をされる柔らかい対人インターフェースをお持ちですので、おそらく問題が顕在化していないと拝察しているのですが、常人である私及び多くの新人弁護士はそうはいきません(対クライアント・お客様、転職時の対チーム・上司など)。
  • かつての私自身を振り返れば、また、悲しいことに世の中にあふれる「弁護士バッチ」を売りに企業への就職・転職活動を行う「弁護士弁護士しちゃっている若手」が、企業法務の知識・ノウハウ以上に見落としがちなテーマが「way of working」です。本書のような知識を身に着け「弁護士弁護士」してくると、さあ、問題も大きくなってきます。
  • キャリアの失敗・ズレも、客観的証拠はないため感想レベルですが、弁護士本人が意識していない他の人々との「way of working」を構築するレベルが低い・成熟していないことがある気がしています。なお、アソシエイト時代には、優秀なソルジャーである他の知的能力が重視されるため、対外的な性格的・人格的な課題は棚上げされたままになる傾向も否定しづらいです。
  • 弁護士資格を持っている方が嫌われる理由は、既にデータ[下記再掲]で明らかになっています。キャリアプランニングのためには、どういうソフトスキルも必要なのか、そこは下記の結果を謙虚に踏まえて、足りないと思われる方(弁護士)は、「way of working」の修練が必要となるでしょう。そして、キャリアプランニングにもっとも欠けていて、ロースクール・司法研修所・法律事務所で十分にトレーニングできていないのは、下記弁護士採用の「懸念」ファクターだと謙虚に思うのですが、皆様いかがでしょうか?
米田憲市編『会社法務部[第12次]実態調査の分析報告』(商事法務、2022年)241頁

引き続きご指導ご鞭撻をどうぞよろしくおねがいします。

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(了)

※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。なお、誤植、ご意見やご質問などがございましたらお知らせいただければ幸甚です(メールフォーム)。

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