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D&I丨弁護士の男女差の研究[2/4]丨杉野勇「法律事務所勤務弁護士の収入と所得に影響する基本的要因とその男女差」自由と正義75巻12号(2024)15-26頁 ―以降土曜掲載―

◯✕ 問題<正解は末尾>
問題1

次の文は正しいか?― インハウス勤務の割合は、男性弁護士のほうが女性弁護士より一貫して高いというデータが示されている。

問題2
次の文は正しいか?― 法律事務所で働く女性弁護士は、キャリアが長くなるほど男性弁護士と同程度の所得を得られるという傾向が明確に示されている。

問題3
次の文は正しいか?― インハウス勤務の場合、男女いずれも長期的データは不十分だが、法律事務所勤務と同等かそれ以上の所得を得るケースがあると指摘されている。

日弁連の機関誌『自由と正義』に掲載された先生方の論文に準拠して、私達弁護士を取り巻く「男女差」について、データを踏まえて、説明できるようにする合計4回(土曜日掲載)の企画となります。D&Iについてお話する機会があれば、記載されているデータは引用できるようにしておきたいと思います。

杉野勇「法律事務所勤務弁護士の収入と所得に影響する基本的要因とその男女差」自由と正義75巻12号(2024)15-26頁

1つ知見を広げる「本日のメモ」

私が個人的に興味を惹かれた先生の御指摘のポイントは、インハウス弁護士(組織内弁護士)について記載された下記の3点です。謹んで引用いたします。

  1. 「年長者より若年者、男性弁護士より女性弁護士のほうが、インハウス(企業や官公庁)で働く傾向がやや高い。このデータでも、インハウス勤務の男性は1,331人中76人(5.7%にとどまるが、女性では659人中84人(12.7%)である。司法修習期別にインハウス勤務の割合をみると、40~59期では男性4.6%、女性5.6%、60~65期では男性5.4%、女性10.4%、66~71期では男性9.3%、女性15.3%と、期が新しいほど女性がインハウスを選ぶ比率が高い。」
  2. 「弁護士キャリアを弁護士登録年数(調査票では5年刻みで質問)で表し、法律事務所とインハウスの総収入・総所得の平均値を男女別に比較すると、インハウスでは長期的な傾向は不明ながら、特に所得に関しては法律事務所と同等以上である。多少の男女差はあるものの、キャリア年数とともに所得も増加していく。一方、法律事務所では所得の男女差が大きく、キャリアに伴う所得の伸びが女性でやや小さいため、インハウスは女性弁護士にとって相対的に好ましい職場である可能性が示唆される。」
  3. 「また、法律事務所でもインハウスでも、女性だけは登録10~15年で一旦収入・所得が落ち込む傾向が見られる。30~40代の女性会員においては、弁護士活動に従事していなかった割合が高いと第1章で指摘されたが、弁護士活動を継続している場合でも同時期に収入・所得が一時的に低下する傾向がうかがえる。」

ご関心があるかたはぜひ原文をご高覧ください。

自由と正義はお買い求めいただけます。日弁連の公式サイトはこちらです。
https://www.nichibenren.or.jp/jfba_info/publication/subscription.html

<本日の答え合わせ>
問題1

次の文は正しいか?― インハウス勤務の割合は、男性弁護士のほうが女性弁護士より一貫して高いというデータが示されている。
答え:✕
解説:本文では「女性のほうがインハウス勤務の割合が高い」と示されており、男性のほうが高いわけではない。

問題2
次の文は正しいか?― 法律事務所で働く女性弁護士は、キャリアが長くなるほど男性弁護士と同程度の所得を得られるという傾向が明確に示されている。
答え:✕
解説:本文によれば「法律事務所では所得の男女差が大きく、キャリアに伴う所得の伸びは女性のほうが小さい」。よって同程度になるとは書かれていない。

問題3
次の文は正しいか?― インハウス勤務の場合、男女いずれも長期的データは不十分だが、法律事務所勤務と同等かそれ以上の所得を得るケースがあると指摘されている。
答え:◯
解説:「インハウスでは長期的傾向は不明ながら、特に所得は法律事務所と同等以上」と指摘されている。

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(了)

※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。なお、誤植、ご意見やご質問などがございましたらお知らせいただければ幸甚です(メールフォーム)。

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