【御礼と報告】私儀 Associate General Counsel 就任へ (2/28の誕生日🎂によせて)

【御礼と報告】Associate General Counsel 就任へ ―米国IT企業の法務部門における厳しい”基準と競争”に関する若干の考察⛰️ (2/28の誕生日によせて)

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2月28日の誕生日の直前、大きなニュースがございました。

御礼と報告

謹啓、浅春の候、皆様におかれましては、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。 日頃より温かいご指導、ご鞭撻を賜り、心より御礼申し上げます。

私事で大変恐縮ではございますが、この度、2026年3月1日付で、Airbnbの「Lead Counsel(リードカウンセル)」から、「Associate General Counsel(アソシエイト・ジェネラルカウンセル」へ昇進し、かつ、所管する国がNortheast Asia(日本及び韓国、順不同)に拡大する運びとなりましたことを謹んで報告致します。

新しいジョブタイトル 「 Associate General Counsel, Northeast Asia」

ミニ解説:Airbnbの法務部門における職位は、グローバルに共通する基準・ポジションであり、日本固有・日本法人内のものではありません。具体的には、Airbnbでは、各国レベルの法務責任者がGeneral Counselを名乗ることはなく、米国のCLO・General Counselを頂点として、Deputy General Counselが二番目、Associate General Counselが三番目、Lead Counselが四番目、Senior Counselが五番目、Legal Counselが六番目、Associate Legal Counselが七番目、という職能・レベル分けが世界横断的・統一的になされています。

2015年に参画してから約10年6ヶ月。42歳の誕生日に訪れたこのビッグニュース・節目は、私自身にとって全く予期せぬものでした。「あと数年はさらなる修行を積まねば」と新年に誓ったばかりの身であり、その責任の重さに身が引き締まる思いです。

あくまで一人の人間のささやかな経験ではございますが、グローバル法務という広大な山脈で私が垣間見た景色を、これまでの感謝を込めて共有させていただきます。

Associate General Counsel とは何か?についてはこちら(別タブで開きます)ご参照

1. 10年半の歩み:未熟な登山者としての「標高ゼロ」からの出発

私がAirbnbにアジアで3番目の弁護士として採用いただいたのは、2015年8月のことでした。「採用いただいた」と記したのは、採用の面接過程から本採用に至るまで、数えきれないほどの方々の助けがあり、この機会を授かったという自覚があるからです。

当時は、多国籍企業(MNC)の法務部門という未知のフィールドに対し、覚悟こそあれど装備は不十分な、いわば「標高ゼロ」の登山者でした。日本と韓国という二つの巨大な山嶺を前に、先達に道を示していただき手を借りながら、手探りで登攀(とうはん)を敢行する日々が始まりました。

登山ルートの変遷と、原点への回帰

  • 2015年:Legal Counsel として入社 日本・韓国の両事業に関するあらゆる法的課題に対し、文字通り隅から隅まで全領域を担当。未知の規制という断崖に挑む毎日でした。その後、事業の成長に伴い各国に専任の弁護士を迎える体制となりました。
  • 2018年:Senior Counsel へ昇進 より高度なルートの開拓とともに、登山ガイドとしての修行を積ませていただいた時期です。
  • 2020年:Lead Counsel 就任 日本という山の責任者として一つのベースキャンプに到達。世界各地の同僚に対し、より高度なサポートを提供する役割を担いましたが、此処から先は断崖絶壁⋯米国IT企業で最も高い壁の1つがそびえ立ちます。

再び日本と韓国(順不同)を含む「北東アジア」全域をサポートさせていただける新たなステージが始まります。このような重責を担わせていただけることは、組織内弁護士としてこの上ない光栄です。

2. 目の前に現れた「絶壁」:グローバル法務におけるAGCという分水嶺

さて、グローバル企業、特に米国IT企業の法務キャリアにおいて、Lead CounselとAssociate General Counselの間には、それまでの歩みとは次元の異なる「垂直な壁(絶壁)」が存在することを知りました。

私は当時の上司に感謝をしています。私が死力を尽くせばAssociate General Counselに3年や4年でなれるかも!と言うふうに勘違いをしていたら、これは極めて厳しい登山になっていたと思います。想像してみてください。実際は3,000メートルある山を、1,500メートルと言うふうに伝えられていたら、1,500メートルに近づいたあたりから「まだなのか」「いつなんだ」と唸る非常に厳しい登山が続きます。はじめから3,000mとわかっていたら、1,500mを過ぎても黙々と力を蓄え、頂きを目指して、歩みを進められます。そうでなければ、1,500m以降はまるで終わりなきマラソンです。

「Directorレベル」という稀薄な空気の中で

様々な、Associate General Counselの方にインタビューをかさね、徐々に、私はそのAssociate General Counselという世界がどのようなものなのか、同僚が昇進するまでのやっていたことや、昇進するまでの苦労を丹念にノート1冊にまとめていきました。

伝聞ではあるものの、共通する話として、グローバル企業の世界基準の少なくないものにおいて、Associate General Counselへの昇進は米国本社における「Director(ディレクター)レベル」への参入を意味する、とてつもない壁であることが見えてきました(General CounselそしてDeputy General Counselに次ぐ三番目のポジションなので考えてみたら当然ではあります)。この壁を越えた先に広がるのは、単なる法律の専門性だけでは通用しない、より高次の責任が伴う(当時、雲の下から見えない頂きを不安そうに眺めていた私にとって)「雲上の稜線(りょうせん)」でした。

なお、実際は、Associate General Counselの稜線の先にはさらにまだまだ高い峰(Deputy General CounselやGeneral Counsel)が続きますが、今の私からはまだ、その雲間の先を伺い知ることはできません。そのようなものをぼんやりみていては、剣ヶ峰から足をすべらせて、稜線から滑落してしまうかもしれません。足元を見て1歩1歩進まねばという気持ちです。

このステージで求められるのは、以下のような、経営に直結する包括的なインパクトではないかという仮説を、Lead Counselの後半時代から徐々に持ち始めました。

  • 包括的な経営への寄与: リーガルの枠を越え、事業の成否を分ける判断にいかに深く寄与できるか。
  • リーダーシップの純度: 多様な文化が交差するチームを、一つのビジョンで誠実に牽引できるか。
  • 「ビジネスケース」の承認: 本社のエグゼクティブに対し、そのポジションが事業上不可欠であることを立証し、厳しい審査を経て承認を得るプロセス。

この過酷な基準は、まさに酸素の薄い高地での活動に似ています。自分一人の力では到底登りきれないこの絶壁を前に、私が唯一の杖として握りしめていたのは、日々の研鑽から生まれたささやかな言葉と、登山を見えるところ見えないところ応援し、環境を整えてくださる周りの方々の存在でした。

「引き上げていただいている」という感覚は常に忘れませんでした。逆に、私(またはあなたが)「自力(だけ)で登っている」と考えたら、実際の登山はさておき、組織・チームワークで成果を出している組織ではきっと何かを誤解している可能性があります(なお、価値観は多種多様なのでこれは私の価値観にとどまります)。

3. 登攀を支える装備:個人のミッションと心の羅針盤

環境が過酷であればあるほど、自身の「原点」が命綱となります。

「着想・達成欲・目標志向・社交性・学習欲の5つの強みを生かした最高のアドバイス(法律に限らない)を提供し、注意深く、欺瞞なく、本物の努力を続けること」

この自分自身の30年計画のミッションを遂行するため、私は毎日、毎朝・毎晩、手帳の裏表紙に刻んだ言葉を自分自身に問いかけ、歩みを進めています。

原因と結果、そして謙虚な準備

  • 「浅はかな人間は運を信じ、流れを信じる。強い人間は因果関係(原因と結果)を信じる。」(ラルフ・W・エマソン)
  • 「完璧な準備のあるところに勝利は訪れる。人は、それを幸運と呼ぶ。」(ロアール・アムンゼン)

(常々色々なところで言ったり書いたりしておりますが)私自身は、自分は得意なことは限られており、うまくいったことを丁寧に振り返ると必ず「見えるところ・見えないところ」の双方で誰かが環境を整えてくださった場合が(うまくいっていた理由の)ほとんどであると気がつきます。

これは米国企業の中では、「これは俺が達成した」「あれは私の手柄だ」そういうふうにアピールしたほうが、より大人びた自信を持った人間に見えると言う一般的な法則・お作法もあるのですが、あまり私はそのように考える方やアピールに馴染めていません。

今回の節目もまた、皆様から頂いてきた1つ1つのご支援の「原因」の結果として謙虚に受け止めたいです。そして、さらなる高嶺へ向けて「完璧な準備」を怠らないこと。それが、私なりの登山の方法かもしれません。

「吾唯足知」—— 稜線でこそ抱くべき慎み

また、2026年から新たに加えた「吾唯足知(われただたるをしる)」という言葉。

高度を上げれば上げるほど、視界は開けますが、同時に自分自身の小ささと、まだ遥か先にある頂の圧倒的な高さを痛感します。 今の環境に深く感謝し、足るを知る心を持つこと。その満たされた心があって初めて、欺瞞のない、本物のアドバイスができるのだと信じています。

4. 結びに代えて:次なる高嶺を、皆様と共に

2026年、私は「Empty hands(空っぽの手)」の精神で元旦のスタートを切りました。過去に固執することなく、一度装備を整え直し、真っさらな気持ちで、「Day 1(入社したあの日)」と同じかそれ以上の謙虚な気持ちで、新しい役職そして北東アジアの事業部門の皆様と新たな稜線に向き合います。

この『inhouselaw.org』は、私が登山中に見つけた景色や、厳しい気象条件を切り抜けるための知恵を共有する、ささやかな「山小屋」のような存在でありたいと考えています。

42歳。Associate General Counsel。 新しいステージでも、皆様と共に悩み、共に学び、次なる高みを目指して、注意深く「本物の努力」を続けてまいります。一人の人間としての限界を常に自覚しつつ、これからも謙虚かつ真摯に歩んでまいる所存です。 今後ともご指導ご鞭撻のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。

皆様のおかげで、誕生日を迎え、今「ここ」にいることができています。多様な価値観がございますが、私自身の価値観としては、今回の大きなマイルストーンも、自分の力で達成したと言う勘違いをすることなく、さらに多くの学ぶべきことがあると言う自分の心のシグナルを大切にして、下記の個人のミッションに基づいて、最高のアドバイス(法律に限らない)ために、「注意深く、欺瞞なく、本物の努力を続け」たいです。欺瞞のない本物の努力、それは、私がいつまでたっても日々深い自信をもって「今日はできた」と言い切れないものだからです。

「着想・達成欲・目標志向・社交性・学習欲の5つの強みを生かした最高のアドバイス(法律に限らない)を提供し、注意深く、欺瞞なく、本物の努力を続けること」

謹白

2026年3月1日

渡部 友一郎

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(了)

※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。なお、誤植、ご意見やご質問などがございましたらお知らせいただければ幸甚です(メールフォーム)。