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『戦略的なイノベーションへの新しいアプローチ』メモ(3)丨ハーバード・ビジネスレビュー最新号23年9−10月号

ハーバード・ビジネス・レビュー最新号(英語)に掲載された論文をノロノロ読んでおります。後日、講演や文献で利用できそうな気になる論文を備忘的にまとめています。次に、興味深く読み進めたのが『イノベーション』をより分析的に生起させるための枠組みを論じた論文でした。

なお、英語力に乏しく、自身の理解に限界があるため、必ず、ご自身で原典をご購読・ご精読いただけたら幸いです。

Haijian Si, Christoph Loch, and Stelios Kavadias (2023). A New Approach to Strategic Innovation: A tool for connecting your projects with your goals, Harvard Business Review, 101(5), 120-129.

メモ丨バッテリー企業のBAT社の取り組み実例

1. BAT社の業績と市場ポジション

  • バッテリー企業のBAT社の鉛酸(LA)バッテリーユニットの事例。
  • BAT社は再生可能エネルギーの台頭に伴う大きな機会を見込んでおり、風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギー源からのエネルギーを蓄える大型リチウムバッテリーの開発専門部門を設立。しかし、自動車バッテリーにおける「古い」鉛酸技術にも成長の潜在力があると信じており、この市場の年間成長目標を30%に設定

2. 鉛酸バッテリーユニットの課題と強み

  • 主要な顧客は自動車メーカー(新規バッテリー用)およびディーラーや修理工場(アフターセールスの交換販売用)。ユニットの強みとしては、低コスト、高品質の製品、広い製品範囲、効果的なサービスプロセス、競争力のある製品機能が挙げられる。
  • その大きさに比べて比較的大きなイノベーション予算を有しており、年間約2000万ドルを約40のプロジェクトに投資

3. イノベーション戦略の不一致

  • バスケット分析を使用してイノベーション活動を評価すると、リーダーシップ層の考えと実際の活動との間にギャップが存在
  • 低リスクのプロジェクトに引き寄せられていたため、新しい提案は保守的になっていた。

4. 新技術へのシフトの必要性

  • 業界のトレンドや顧客の需要の分析から、新たな鉛酸バッテリーの機会を探る。
  • LA技術だけでは自動車バッテリー市場での十分な成長を生み出すことができないとの結論
  • 結果として、低電圧の車のアクセサリーネットワークの新しいリチウムバッテリーを開発するためのタスクフォースの組織が決定される。

5. イノベーション戦略の再評価

  • BAT社はイノベーションの方向性を大きく変更。イノベーションの予算は4060万ドルに倍増し、2000万ドルが外部の研究機関およびBATのリチウムユニットとの共同でリチウムスターターバッテリーを開発するR&Dプロジェクトに投資されることとなる。

6. まとめと示唆

  • 企業の戦略とイノベーション投資との間の明示的な「牽連性」の探求は、変革的な影響を持つ可能性がある。このプロセスは、BAT社に市場内の戦略的変化を活用するための再位置付けを助け、伝統的な境界を越える新しい大規模なプロジェクトへの大きな新しい投資をもたらす結果となった。

今日はここまで。引き続きどうぞよろしくお願いします。1歩1歩。

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(了)

※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。なお、誤植、ご意見やご質問などがございましたらお知らせいただければ幸甚です(メールフォーム)。

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