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テック企業の組織内弁護士は「データ活用」して助言せよ丨<新連載>精読『Workplace Strategies for Technology Lawyers』[6/36]【木曜/土曜 掲載】

問題の所在+ソリューション[各連載回に共通]

Problem Statement (問題の所在) 私は、現在、『リーガルリスクマネジメントの教科書』の姉妹編となる「新しい書籍」を心を込めて執筆しています。新著は、組織内弁護士として、法務部門の中で、少ない摩擦で充実した活躍をするための様々な私の失敗と学びを透明性をもってまとめた本になります。法律の専門家から組織内弁護士への「transformation」には多様な支援が不可欠です

ソリューション ある日、Amazonの書籍の中に、海外の組織内弁護士に対して同じ視点からTip(ヒント)を提供している書籍に出会いました。本書は「Do you want to stand out as a successful in-house counsel?」と問いかけます。海外と日本の違いはあるかもしれませんが、海外で100以上の高レビューを獲得している書籍を一緒に精読していきましょう。

想定する読者 法務部門の方(とりわけ組織内弁護士)、外部弁護士の方、ロースクール生・司法修習生の方

テック企業の組織内弁護士は「データ活用」して助言せよ

講義ノート

本書の筆者は、テック企業でリーガルリスクを評価するときには、数字やユーザー行動などの具体的なデータが大きな意味を持つと指摘します。

たとえば、「この問題が影響するユーザーは何人か」「同じ不満やクレームが過去にどの程度発生しているか」「当該顧客がどれほどの売上を占めるか」など、データを入手することで見えてくるリスクや優先順位はまったく変わってくると主張します。

さらに、もしデータがない場合は、社内の分析チームや関連部署に依頼して新たに調査してみるのもひとつの手段であると助言します。

私個人の考え⋯皆様はどう思われますか?

私個人の考えとしては、意思決定の際にデータを積極的に取り入れることには大いに意義があると思います。皆様はどう思われますか?

私は「賛成」です。

たとえば、小売業の仕入れをイメージしてみてください。勘だけで大量に商品を発注するのではなく、過去の売上実績や顧客の購買履歴を分析したうえで仕入れ数を調整すれば、在庫リスクを減らしつつ利益を最大化しやすくなります。

法務の世界でも同様で、「過去の問い合わせ数はどれほどあったか」「実際にどの程度のユーザーに影響があるか」といった具体的な数字を示すことで、社内の納得を得やすく、必要以上にビジネスの手足を縛ってしまう事態を回避できます。

さらに、本書の著者が強調する点は、私が常日頃考えている「リーガルリスクマネジメントにおけるライクリフッド分析」の重要性ともまったく一致しています。たとえば、ボタンの文言を少し変えるだけでどれほど訴訟リスクが低減されるのか、過去にそれが原因のクレームが実際にあったのかどうかといった情報を確認せずに抽象的にリスクばかりを唱えていては、組織内弁護士が「細かいことでビジネスを萎縮させる存在」と思われかねません

データを用いて「どこを直すと、どれだけ効果があるのか」を示すことこそ、テック企業のビジネスを前進させる鍵だと感じます。

皆さんは、どのようにデータを活用されていますか。ぜひご意見をお聞かせください。

Workplace Strategies for Technology Lawyers ―原典の推薦―

David Sclar. (2021). Workplace Strategies for Technology Lawyers.

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(了)

※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。なお、誤植、ご意見やご質問などがございましたらお知らせいただければ幸甚です(メールフォーム)。

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