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どうでもいい超細かいことまで指摘してうんざりする上司丨リーガルリスクマネジメントの教科書みんなの相談室(8)丨営業時間 火曜朝

1. 本日の相談室(火曜日朝のみ営業)

法務部門の方

相談内容 渡部先生、相談があります。今のチームリーダー(上司)が、異様に細部にこだわりすぎ、どうでもいい重要でない部分に時間を取る人です。正直、なるべく関わりたくないのですが、上司なのでどうしようもなく、今日も仕事に行くのがうんざりします。助けてください。

わたなべ

共感 ご相談、ありがとうございます。あなたからすると、上司の方が重箱の隅をつつく方とお感じなのですね。枝葉末端に拘泥すると仕事が進まず、かつ、関係者の調整をするのは相談者様ご自身であり負担も増加します。お辛いお気持ちは正当だと思います。ここは想像ですが、上司への承認や相談は広範です。したがって、契約書のレビューに限らず、メモランダムなどの成果物、事業部への回答方針などあらゆることに、この上司の方の干渉が入り、相談者様の「自律性」が害され、結果的に、ストレスが生じていると想像しています。まずは、人間だれでもこのような状況では、きっと、同じ気持ちになると思います。


私なりに心を込めた回答 

結論

今回は「私ならどうするか」から申し上げますと、私は、様々な負の感情やバイアスを一旦棚上げして、きっと、この上司の方と時間を取ってお話をすると思います。なぜでしょうか? ― 以下、順番に私なりの視点でお話します(誤解や盲点があればご容赦ください)。

作業1:上司をレジェンドに置き換え

まずは、全く「あり得ない」逆のシーンを想像してみましょう。

質問です。あなたの方針、ドラフト、契約書、メモなどを細かく修正したり指摘を入れてくる人が、弁護士界のレジェンドだったらイライラしますか??(貴方が密かに尊敬する弁護士でも上司でも、もし周りにいなければ、久保利先生、中村直人先生を想像してみてはいかがでしょうか)

― おそらく「ご指摘ありがとうございます!」「おお、レジェンドはそう考えるのか!勉強になるな!」となると思います。きっと、「無駄な時間を取らせるなよ、イライラさせるな」といった心の中の悪態はゼロだと思います。

作業2:心のイライラの解像度

今回のご相談をみたとき、私の誤解があれば恐縮ですが、相談者様は、①上司を多分無意識にリスペクトできていないこと(正確には上司がリスペクトに値するマネジメントに失敗しており信頼を失っていること)、かつ②「どうでもいい重要でない部分」と思っている部分に「なぜ」時間を取っているかという背景や理由に納得できていないこと(正確には上司が意図を理解させなければならないので、この意味でも上司は努力を要する)、の2つを抱えになっていると感じました。

先程の「上司」を「レジェンド」に置き換えた事例では、あなたは、無条件に、①②の2つを充足していませんでしたか。①指摘者に対しリスペクトの念をもっていること、及び、②「なぜ」時間を取っているかという背景や理由に納得していたこと(=レジェンドが言うのだから理由があるに違いないというハロー効果 or 推定が働いている)。

まとめ丨リスペクトして理由を直接聞く・探る

以上を踏まえて、冒頭に戻ると、私であれば:

  • まず、①自分のプライドや予断を捨てます。「いい仕事をする」という点にのみフォーカスして上司を一旦リスペクトします。
  • 次に、②「なぜ」その修正・変更等の指摘をしているのか順番に理由を聞いていきます。「意味がわかりません!」というような反抗的態度ではありません。強い好奇心をもって、「私はここは特に修正や変更を要しないと思ったのですが、どういう背景でご指摘をなさったのか、自分の理解を100%にしたく、教えてください。次回以降はご指摘をいただかなくても自分で理由がわかれば反映できると思います」と真剣に伝えます。ひとたび、修正の理由が論理的にわかれば、それを私が上司の方に出す前に仕上げれば、上司は「楽」ですよね。

負の気持ちは相手に伝わる(あなたもマイナス評価されうる)

あなたのイライラ、上司に漏れ出ていませんか? そして、ご注意ください。視点をかえると、管理職側から見るとこういう風に見ているかも知れません。―「なんでこんな細々と俺が指摘しないとできないんだよ。そしてなんで何度も同じ修正をさせるんだよ」とイライラされているかもしれません。

⚠ なお、あなたは悪くなく、その変更理由や背景を納得感をもって伝えていない上司に責任の所在があることは、貴方のために、申し上げておきます。

原則「ミスコミュニケーション」を減らそう。なお、例外的に(稀に)話がどうしても通じない人もいることも覚えておこう

ですので、やるべきことはシンプルです。時間を頂いて、モヤモヤイライラしている「重要でないこと」とあなたが思うのに、なぜ上司が「重要だ」と考えてこだわっているのかを明確にしましょう。愚痴愚痴とお互いがお互いのレイヤーで文句を言っているよりも、よっぽど素敵な法務部門ではないでしょうか。1on1や定期面談でしょうもない雑談をする暇があったら、自分(上司)から積極的に部下に対して「言いにくいことかもしれないけど、どうしたらもっと仕事がやりやすくなるか?」を聞いて勉強しましょう。

なお、この手のコミュニケーションをしようと思っても、話が通じない方もいらっしゃるのも事実。「誰でも万人話せばわかる」は幻想です。

以上全くの個人の見解であり、価値観は多種多様であると思いますが、なにかしら相談者様が前向きにお仕事に取り組まれるきっかけになれば幸いですし、できれば、この上司の方も相談者様との会話を通じて、成長してくださることを願っております(上司の成長はあなたの責務ではないので、無理なら、高い水準で自己他己を気遣える上質な人々が揃っている新しい組織に身を置けるよう転職に向けて準備を重ねましょう)。

教科書該当箇所 渡部友一郎『攻めの法務 成長を叶える リーガルリスクマネジメントの教科書』今回は該当なし(日本加除出版、2023)

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(※順不同:肩書は2023年2月時点:個人の見解です)

https://www.kajo.co.jp/c/book/07/0701/40940000001

(了)

※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。

渡部推薦の本丨足りない、は補えばいい