【日曜朝連載】名著『法律家へ激震(Legal Upheaval)』第7回―関与の三原則「創造性・協働・イノベーション文化」を築くために(その2)

図表・データ | 組織内弁護士研究ノート® | 法務部とインハウス弁護士の金貨
【日曜朝連載】名著『法律家へ激震(Legal Upheaval)』第7回―関与の三原則「創造性・協働・イノベーション文化」を築くために(その2)

◯✕ 問題<正解は末尾>
問1 次の文は正しいか?―「Googleのプロジェクト・アリストテレスは、チーム成功の最大要因はメンバーの専門知識量だと結論づけた。」

問2 次の文は正しいか?―「Sigal G. Barsadeの研究によれば、ポジティブ感情はネガティブ感情と同程度に集団内へ伝染する。」

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毎週日曜の朝に更新し、日本では未翻訳の名著に光を当てます。

著者ミシェル・デステファノ氏マイアミ大学ロースクール教授であり、ハーバード・ロースクールのエグゼクティブ教育プログラムでも教鞭を執る法律教育者です。米国法曹協会からLegal Rebelに選出され、フィナンシャル・タイムズでも「最も革新的な弁護士」トップ20の一人と評価されています。

現在、Airbnbのグローバル法務で各国のリーガルテックに触れる中で、本書のポイントを自分なり取捨選択して謹んで共有したいと考えました。学びの途上として整理した私なりのメモを、毎週日曜朝に全12回でお届けします。

本連載を最後までお読みいただければ、法律事務所でも企業でも「新しい時代の法律家」に求められる視点をデスゲファノ教授から学べると思います。本書から共に学ぶ時間を、私自身も楽しみにしています

Michele DeStefano, Legal Upheaval: A Guide to Creativity, Collaboration, and Innovation in Law (Ankerwycke 2018). [Amazonで原著購入― ハードカバー版のみ]

関与のルール2:オープン・ハート(開かれた心)

デスゲファノ教授は、弁護士に求められるのは知性だけでなく開かれた心と論じます。

  • 「共感」はデザイン思考とチームの心理的安全を支え、温かさが迅速な信頼構築を導きます。感情は伝染するため、リーダーは前向きな気持ちを示し、文化的失敗を恐れず学ぶ姿勢を示すことが重要です。
  • 「助ける」とは即答で解決案を押し付けることではなく、傾聴と協働で当事者が自ら改善できる環境を整えることを指します。
  • スーパースター偏重は組織を弱体化させ、フォロワーや多様な仲間との連携こそが持続的成果をもたらします。

デスゲファノ教授によれば、これらが法律家の「オープン・ハート」の核心であり、創造性とイノベーション文化の土台になるのです。

<本日の答え合わせ>
◯✕ 問題


問1 「Googleのプロジェクト・アリストテレスは、チーム成功の最大要因はメンバーの専門知識量だと結論づけた。」
答 ✕

理由 本文では、同プロジェクトが最重要視したのは専門知識ではなく、メンバーが安心して発言できる「心理的安全性」であると述べているため誤りです。

問2 「Sigal G. Barsadeの研究によれば、ポジティブ感情はネガティブ感情と同程度に集団内へ伝染する。」
答 ◯

理由 本文は、バーサドの実験で肯定的感情も否定的感情と同じく感染し、協力やパフォーマンスを高めると示されたと説明しているので正しいです。

お休みにお目通しをいただき、ありがとうございます。

原著購入の推薦 最後に、本書は「AI時代」到来前の2018年に刊行されながら、リーガルオペレーションや「テック×法務」を先取りし、リーガルテック導入時に直面する障壁を分かりやすく説明しており、非常に学ぶ価値の高い書籍であると考えています。もし研究・実務などでご関心があれば、右のURLからぜひご購入をご検討ください。[Amazonで原著購入― ハードカバー版のみ]

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ご相談・講演のご依頼などはこちらからご連絡を賜れますと幸いです。


(了)

※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。なお、誤植、ご意見やご質問などがございましたらお知らせいただければ幸甚です(メールフォーム)。