
◯✕ 問題<正解は末尾>
問題1
次の文は正しいか?― 2020年調査によると、女性弁護士の比率は10%未満であり、2010年調査よりも減少している。
問題2
次の文は正しいか?― 女性弁護士は家事・育児・介護を理由に弁護士活動を休止する事例があり、男女間の就労形態の違いが浮き彫りになった。
問題3
次の文は正しいか?― 本特集の分析対象は法律事務所勤務弁護士のみであり、今後も組織内弁護士に関する調査は行わない方針とされている。
滝口広子「弁護士業務の経済的基盤調査報告書2010と2020の比較から見えてくる現状」自由と正義75巻12号(2024)8-14頁
私が個人的に興味を惹かれた論説のポイントは3点です。
- 弁護士業務改革委員会は、女性会員の業務課題に焦点を当てるPTを2022年度に発足し、2010年調査と2020年調査の比較を実施した。2020年調査では女性弁護士の比率が18.7%に上昇し、20・30代の割合も男性より高い。一方、家事や育児・介護を理由に弁護士活動を休止する女性も見られ、男女で就労形態が異なる傾向が浮き彫りになった。
- 女性弁護士はインハウスの割合が高いが、法律事務所に所属する場合でも、事務所の規模や地位、労働時間、収入面で男性との格差が確認される。たとえば、女性の収入や顧問先数は男性より少ない。一方で、大規模事務所進出や多様な働き方を選択する事例も増加している。
- ネクストステップとして、数値データの公開や研究者との連携を通じ、性差を是正する施策を検討中。将来的には組織内弁護士も含めた総合的な分析を行い、より実効的な対応策をまとめる方針。海外の女性弁護士の事例では政策介入で改善したケースもあり、本調査結果は性差問題の解明・是正策立案に役立つ基礎資料という見方。
今回の特集は、中間報告として法律事務所勤務を中心に、収入・所得・配偶者の職業など多面的に検証した論稿が掲載されている。2010~2020年の弁護士数増加・組織多様化の一方で続く男女格差を踏まえ、法社会学や社会調査の知見を活用した改革が必要であると主張している。最終的には、女性弁護士の地位向上と法曹界全体の発展を図るため、さらなる分析と具体策の充実を目指していることが読み取れる。
ご関心があるかたはぜひ原文をご高覧ください。

https://www.nichibenren.or.jp/jfba_info/publication/subscription.html
<本日の答え合わせ>
問題1
次の文は正しいか?― 2020年調査によると、女性弁護士の比率は10%未満であり、2010年調査よりも減少している。
答え:✕
解説:「2020年調査では女性弁護士の比率が18.7%に上昇した」と本文にあるため、10%未満で減少という記述は誤り。
問題2
次の文は正しいか?― 女性弁護士は家事・育児・介護を理由に弁護士活動を休止する事例があり、男女間の就労形態の違いが浮き彫りになった。
答え:◯
解説:本文に「家事や育児・介護を理由に弁護士活動を休止する女性が見られ、男女で就労形態が異なる傾向が浮かび上がった」と記されている。
問題3
次の文は正しいか?― 本特集の分析対象は法律事務所勤務弁護士のみであり、今後も組織内弁護士に関する調査は行わない方針とされている。
答え:✕
解説:本文では「将来的には組織内弁護士も含めた総合的な分析を行う方針」であると記されており、「今後も行わない」とは書かれていない。
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(了)
※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。なお、誤植、ご意見やご質問などがございましたらお知らせいただければ幸甚です(メールフォーム)。
日弁連の機関誌『自由と正義』に掲載された先生方の論文に準拠して、私達弁護士を取り巻く「男女差」について、データを踏まえて、説明できるようにする合計4回(土曜日掲載)の企画となります。D&Iについてお話する機会があれば、記載されているデータは引用できるようにしておきたいと思います。