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東京弁護士会様 講演録丨リーガルリスクマネジメントの教科書(3/4)法務がビジネスを支える最前線

Airbnbでのリスクマネジメント体験:法務がビジネスを支える最前線

外資系企業での法務の仕事は、日本の法律とグローバルスタンダードの狭間で絶えずバランスを取りながら、リスクを管理していくことが求められます。Airbnbでの私の体験は、まさにその難しさと挑戦に満ちたものでした。しかし、この経験から得た学びは、法務がどのようにビジネスの成長を支えるべきかを深く考えるきっかけとなりました。

この記事では、Airbnbでの具体的なリスクマネジメントの事例を通じて、法務の役割の進化と、現代における実務への適応についてお話しします。

新天地での挑戦:未知のリスクとの遭遇

2015年、私はAirbnbの日本法務チームの一員として参加しました。当時のAirbnbは急成長中のスタートアップで、日本市場への進出もまだ手探りの状態でした。その中で、私たち法務チームは、日々新しいリスクに直面し、解決策を模索していました。

入社当初、私が最も驚いたのは、Airbnbがいかにしてリスクを受け入れつつ、ビジネスを推進していたかという点です。多くの日本企業では、リスクを回避することが最優先されますが、Airbnbではリスクを理解し、それをどのようにマネージするかが重視されていました。

リスクを受け入れるマインドセット:具体的な対応策の模索

Airbnbの日本市場参入において、特に大きな問題となったのが、宿泊施設の法規制でした。日本の法律は細かく規定されており、その中にはAirbnbのビジネスモデルに適合しない部分が多くありました。例えば、旅館業法や消防法など、従来のホテル業務を前提とした規制が、Airbnbのホスト型ビジネスにはそぐわないものでした。

この問題に対し、私たちはまずリスクの特定と分析を行いました。法的なリスクがどこにあるのか、またそれがどの程度の影響を及ぼすのかを慎重に見極めました。そして、その上で「どの部分で妥協が可能か」「どうすれば法律を遵守しながらビジネスを進められるか」という観点から、具体的な対策を考えました。

たとえば、ホストに対しては法律の遵守を促すガイドラインを提供し、自治体との協議を通じて柔軟な対応策を見出すなど、単にルールを守るだけでなく、どうルールの中で動くかを重視しました。

リスクをマネージする法務の価値

この一連のプロセスを通して、私は法務の役割が単なるリスク回避に留まらないことを改めて実感しました。法務はビジネスの最前線で、いかにしてリスクを受け入れ、コントロールしながら成長を支えるかが求められています。

Airbnbでの経験は、ビジネスのスピードが速く、ルールが追いつかない現代において、法務がどのように柔軟に対応すべきかを教えてくれました。法務の仕事は、リスクを単に避けるのではなく、リスクを理解し、必要な対応策を打ち出すことで、ビジネスを支える力を持っています。

読者の皆さんも、日々の業務で直面するリスクをただ回避するのではなく、その先にある解決策を見つけ出し、ビジネスをサポートするためのパートナーとしての役割を強く意識していただきたいと思います。、そのリスクとどう向き合い、進むべきかを示す姿勢こそが、法務部門の新しい価値を創造します。

(つづく)

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[リーガルリスクマネジメントの教科書とは?]

リーガルリスクマネジメントの教科書』(日本加除出版)は、2023年に出版された教科書です。リーガルリスクマネジメントという臨床法務技術を独学で学んでいただけるよう、心をこめて作成いたしました。きっと喜んでいただけると思います。

渡部友一郎『攻めの法務 成長を叶える リーガルリスクマネジメントの教科書』(日本加除出版、2023)

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(了)

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