24年4月 社外役員就任のご報告(こちら)

ご報告:社外監査役就任(ファインディ株式会社)

1. ご報告の要旨

いつも大変お世話になっております。この度、ファインディ株式会社(代表取締役 山田 裕一朗 CEO、 https://findy.co.jp )から招聘を受け、謹んで「社外監査役」に就任しました。同社の『挑戦するエンジニアのプラットフォームをつくる』というミッションにワクワクしております。Airbnbの弁護士業に全力投球続けつつ、findyでも”happy to help”です。

2. 本投稿の読了により得られること

このエントリでは、主に中堅・若手組織内弁護士の方に向けて、なぜ「社外役員」をお受けしたのか?― 中村直人弁護士/國廣正弁護士から頂いたきっかけになった一言やインハウス弁護士が他社の社外役員に就任する際の「難しさ」を考察・共有いたします。

3-1. なぜ「社外役員」をお受けしたのか

<事業部の懐刀になる>
DeNA時代、(アイデアを尊重する上司に恵まれ)私は、法務部の自席を離れ、定期的に事業部の空き机を借りて仕事をしていました。法務部エリアにアポなしで訪れるのは怖いと聞き、「懐刀」になりたいなら、近くにいる(会いに行く法務)が一番と思ったからです。

<ある日の会話>
事業部の横に座ると、色々な話が聞こえてきます。法務部にあがってこない課題、課題に対する新しいアイデア、聞いたことがない新しい取引先への往訪・会食、そして、たまに法務部への不満。

ある日、取引先から契約書(修正案)が戻ってきたので、事業部(プランナー・エンジニア)と議論して、契約の修正文言をカタカタと「その場」で打ち込んでいたときです。

エンジニア「ゆういちろうさんは凄いなぁ。」
「え、なんでですか?」
エンジニア「だって、法律とか契約書とか難しすぎ。読んでも意味がわからないです。
「逆ですよ。エンジニアのみなさんがコードを書いているモニターを隣で見てて、いつも凄いなぁって尊敬します。」
エンジニア「そうですか?」
「はい。弁護士は、法律や契約書は得意ですが、みなさんのようにITのサービスを構築できません。」

今でもそのように思っています。DeNA及びAirbnbの日米IT企業の弁護士を12年強。世界を変えていくエンジニアの皆様に優しくしていただき、深い敬意を抱いています。

3-2. 中村直人弁護士/國廣正弁護士のお言葉

ある恩師にキャリア相談をした際、以下のキャリアへの助言を頂きました。

「40代では、社外役員にも挑戦し、更に研鑽を積み、(社内弁護士でも社外弁護士でもない立場から)視野を広げ、より広く社会に貢献する方法を学びなさい」

そして、別の機会に、中村直人弁護士/國廣正弁護士と1on1のチャンスを頂いた際に、次の趣旨の戒めをいただきました。

「(社外役員になるなら)異なる意見を歓迎できる経営者の会社にしなさい。」

これは、若手・中堅の弁護士が、(a)社外役員の機会(報酬・地位)に飛びつくなという戒め、かつ、(b)弁護士を形だけ座らせるのではなく、異なる意見をappreciateできる器を持った経営者を待てという戒め、と独自に解釈しました。今回、山田さん含め様々な方とお話し…この日をお待ちしてて良かったと思いました。

3-3. インハウス弁護士が「社外役員」になるときに先回りして準備しておくべきこと

<インハウス弁護士(後輩)の方へ>

結論、法律事務所に所属していない場合、社外役員(社外取締役、社外監査役。グループ会社の役員除く。)の就任はかなりハードルが高い可能性があります。

会社に前例がない場合、どれだけ会社に貢献して信頼の通貨を貯金できているかにかかっている気がいたします(=信頼の通貨の貯金が足りない方は今からせっせと貯金しましょう)。

<外資の場合、+3つのチャレンジがあるかも>

今回、インハウスの大先輩や国内外の法律事務所の恩師にもお話をうかがいましたが、米国企業の場合、3つのチャレンジがあります。

  • 第1に、社内の「利益相反チェック」を含む副業制限です。法務部門という立場と相手方の監査役という独立性の関係上、自社事業と相手方事業とが少しでも被っていると難しいと思われます。
  • 第2に、海外IPOを支援した際に痛感していたのが、日本の会社法の「監査役」はドイツの二層監査をベースとしており(*)、米国やコモンローの一層監査(取締役が監督する)というベースの国では、監査役自体が何かよく理解できないのです。私も、この点の説明が非常に難しかったです。会計監査人と勘違いされており、なんでYuichiroがやる必要があるのという質問に度々直面しました。結構、基礎的な制度の違いを説明するのはタフです。
  • 第3に、ジェネラルカウンセル(最高法務顧問)やCLOのキャリアにおいて、海外において、社外役員の経験はトラックで必要条件ではないということです。ジェネラルカウンセルにいつかなりたいという夢と社外役員とが論理的につながらないのです。ここは、日本でのコーポレートガバナンスの重要性や法務部門において取締役会の運営などが極めて法務スキルとして重視されていることを説明する必要があります。

以上の3つに限らないのですが、まだまだ前例も多くないため、慎重にしかししっかりと新しいことを学び、職責を果たすことを通じて、貢献し、取り組んでまいります。

(*)記憶違いがあれば切にご容赦ください。

4. 御礼

改めて、山田さん、橋渡しくださった弁護士 重松英 先生、findy社でお会いした皆様、Airbnb社内の承認プロセス(インハウス弁護士の方へ:社外役員を引き受ける大変さはコメント欄に追記)で後押しくださった上司・皆様、そして、私に良い思い出をくれた多くのエンジニアの皆様…エンジニアがさらに輝く世界を作るfindy社での社外役員という挑戦を後押しに対し、心から感謝しています。

私にとっては、『着想・達成欲・目標志向・社交性・学習欲の5つの強みを生かした最高のアドバイス(法律に限らない。)を提供し、多くの種を蒔き育て、心から喜んでもらえるため、注意深く、欺瞞なく、本物の努力を続けること。』というミッションの『最高のアドバイス(法律に限らない。)』ためには、40代、社内弁護士でも社外弁護士でもない、日本企業での社外役員の経験が必要であったため、就任が実現したことについて、社内外の関係者の方への感謝は表し難いです。一層謙虚な姿勢で精勤致します。

個人の見解です/personal view only

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(了)

※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。なお、誤植、ご意見やご質問などがございましたらお知らせいただければ幸甚です(メールフォーム)。

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