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日経「一般的な生成AI(では)ユーザーが法的助言を求める。(23年法務省)指針による適法範囲に収まらない可能性がある。」

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日本経済新聞の月曜版「税・法務」は、多くの法務部門や弁護士の方がご覧になっていると思います。今週の注目記事を取り上げながら、皆さまのご意見も伺えれば幸いです。学びの途中ではありますが、情報交換の場として活用いただければと思います。

今週月曜日に掲載されると思われる記事を週末ざっと見ている中で、やはり児玉記者の記事が目に留まりました。今回はリーガルテックについて取り上げたいと思います。

今週の注目記事丨「一般生成AIと非弁行為の規制と矛盾」の目次

リーガルテック、生成AI進化が問う課金の価値 使い勝手や精度磨く

掲載紙:日本経済新聞 | 掲載日:2025年8月1日

記事によれば、生成AIの進化でリーガルテックの価値が揺らいでいる(全体として、価値が高まるサービスもあれば、相対的に弱まるサービスもある)ことが示唆されています。例えば、リーガルスケープのAIは司法試験短答175点中160点。対して、Gemini118点、ChatGPT115点と汎用AIもある程度の合格域にあることが報告されています。三井住友FGはSMBCリーガルX設立、リーガルオンはOpenAIと提携し競争激化していることが取り上げられた後、法務部は汎用AI併用で解約を検討する例もあることが指摘されています。

私が気になったのは、「非弁行為の規制と矛盾」という最後の部分です。

リーガルテックを巡っては、弁護士以外が法律事務に携わる「非弁行為」を禁じる弁護士法72条との関係が問題となってきた。2023年に法務省が指針を示し、契約関連の既存サービスはおおむね適法性が認められた。だが、進化する生成AIと72条との関係について、関係者の意見や動きは混沌としている。指針策定時の議論の対象は特化型のリーガルテックに限られていた。一般的な生成AIは法務支援を目的としているわけではないが、ユーザーが法的助言を求めるようになった。すでに指針による適法範囲に収まらない可能性があるものの、実質的に制約を課されていないという大きな矛盾も生まれている。

組織内弁護士の視点

児玉記者の問題提起をどう読むか

児玉記者が指摘する「非弁ガイドラインの抜け穴」は、まさに2023年当時の前提条件―自然言語処理が中心で守備範囲が限定的な当時のリーガルテックの機能(AI)―を基にした議論の限界であり、ご指摘の通りだと個人的には思います。

規制改革推進会議に有識者として登壇した際も、法務省見解は既存リーガルテックの機能に照準を合わせたもので、LLMの劇的進化は(関係者は薄々感じていたものの)、当時のリーガルテックの機能が違法にならないことが関係者全員のゴールだったと思うので、将来、法務省の指針がどのようなタイミングで見直されるべきであって、射程はどのようなもので、仮に、海外の事業提供者がいる場合に、どのように法律(弁護士法)を(仮にエンフォースでき[弁護士法の域外適用の問題]、かつ、するのであれば)できエンフォースメントしていくのかといった話は、本来議論されるべきであったものの、議論されていなかったと記憶しております。

ガイドライン遵守と国外ベンダーのギャップ

業界団体の会員企業は自主規制を順守していますが、非会員、言い換えれば、海外ベンダーは拘束されず、より自由闊達に製品を改良し日本市場に参入しています。2025年現在、多言語対応を強みに「日本語も高精度」と売り込む海外勢が増加しており、レベル・プレイング・フィールドが崩れつつある点は看過できません。

▼AIが日本語の壁を崩すことの分析は下記の通り。

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「付加価値」をどう再定義するか

メール/オフィスソフト(オフィスツール全般)と生成AIが自然統合される現在〜未来では、個別SaaSが独自の価値を保持できるかが分水嶺です。各社がハルシネーション低減策としてデータセットを限定し専門書を網羅する方向に舵を切っている今、評価軸は①カバーする文献量②正確性③処理速度に収斂するとみています。

CLMにのみ込まれる単機能サービス

海外では(私が営業窓口として様々なスタートアップから大手のリーガルテックベンダーとお話をしていると)契約書AIレビューは「CLMの1つの付属機能」に過ぎず、もはやコモディティー化の流れが顕著です。

契約レビュー単体で勝負する国内ベンダーは、海外に勝負に出るのであれば(事業計画のミルフィーユを海外展開ということで高く積み上げるのであれば)、実際海外企業に採用してもらえるかは、有力エンタープライズのリファレンスにかかっており、海外でもこの1〜2年でも、SaaS単独でのリーガルテックがコモディティ化され、大手によって、淘汰・吸収が進む可能性があります。

日本市場の防波堤とグローバル競争

日本語・日本法という壁に守られ、国内需要はすぐには消えません。しかし、個人的には、海外展開を狙うならフォーチュン500クラスの顧客獲得数が問われる厳しい土俵に立つことを忘れてはなりません。組織内弁護士としては、国内外サービスの法的適合性と付加価値を冷静に見極め、社内投資判断をアップデートし続ける必要があります。

また、利用者側も、日本国内で利用する分にはよいものの、海外子会社がある法務部門では、どのように国内ツールをグローバルに展開していくのかと言うところは、踏み込んだ検討が必要になってくるのではないかと思います。同じ会社やグループ会社の中で日本だけはある特定の国内企業、海外は、別の有力な海外ベンダーといったような二本立てでいくのか、今後の検討課題であると思います。

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(了)

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