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弁護士の社外取締役よりAI取締役が凄い?[2/3]丨HBR2025年7-8月号の掲載論文

火曜日・金曜日は集まれ! #法務のみんなで一緒に前進

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「勉強時間なんて、忙しすぎて確保できない」と悩む方は多いものです。私は30代前半に他責の姿勢を改め、早朝学習に活路を見いだしました。現在も毎朝4時台に起床し、机に向かっております。この場では、英語版Harvard Business Review(HBR)最新号に掲載された論文をゆっくり読み、講演や執筆で活用できそうなものを備忘録としてまとめています。事業部を支える法務部や組織内弁護士だからこそ、毎週火曜日と金曜日にご一緒に専門外の最新知見に触れてまいりましょう。なお、これは私的な備忘録であるため、内容に誤りが含まれる可能性がございます。原文をお手元でご確認の上、ご検討いただければ幸いです。

(*)英語力が乏しいためノロノロとテクノロジーの力を借りて整理しています。学びがある雑誌で、私もファンの1人です。よろしければ、HBR定期購読(定期購読サイト)をご検討ください。

AI取締役丨一緒に学ぶ論文はこちら

Stanislav Shekshnia and Valery Yakubovich (2025). How Pioneering Boards Are Using AI – They’re harnessing it to help directors prepare, debate, and decide, Harvard Business Review, 103(4), 56-64.

AI取締役の全体像丨わかりやすくまとめてみる

<わかりやすくまとめてみる>
本論文をわかりやすく「町内会」(=自治会、例えば、賀露町内会、◯◯3丁目自治会みたいな町の寄り合い)の例でまとめてみました(むしろ、町内会がない都会にはわかりにくいでしょうか)。
🏘️ 町内会=取締役会:町内会の役員会にAIが「相談役」として同席し、会議の準備・議論・決定を助けるイメージです。
📝 下準備の効率化:回覧板や要望書をAIが要約し、論点や質問案を自動で出します。役員は短時間で全体像を把握できます。
🤝 議論の質向上:AIが「代替案」「賛否の論点」「想定質問」を提示し、思いつきや声の大きさに左右されにくい議論になります。
🧠 決定の後押し:夏祭りの開催場所や防災備蓄の数量などを、AIが複数シナリオで試算し、判断材料を増やします。
🛡️ 情報漏えいは管理で防ぐ:AIだから漏れるのではなく、保管・権限管理の問題です。共有フォルダやチャットの権限設定を徹底します。
⚖️ データの偏りに注意:アンケートが「常連の声」(熱心に毎回アンケートを書いてくる◯丁目の田中さんと佐藤さんなど)だけに偏らないよう、AIで層別に集計し、見落としをチェックします。
⛓️ 「去年通り」の固定観念を外す:AIに最新データで複数シナリオを作らせ、「昨年実績」だけに縛られない検討を進めます。
🚦 導入は段階的に:①個人の効率化(要約・日程調整)→ ②会議での試用(議題整理・メモ)→ ③自治会データを限定連携、の順で試します。
🧑‍🏫 学びながら運用:役員それぞれのデジタル慣れに合わせ、簡単なプロンプト練習と振り返りを重ねて精度を上げます。
🚀 目的は「速く賢い意思決定」:AIは人を置き換えるのではなく、町内の安全・行事・予算のより良い判断を後押しします。

AI取締役の個別論丨本日のポイント

次に、本論文は、リスクの実相とリスクの低減策について論じています。具体的には、「情報漏えい」「サンプルバイアス」「過去へのアンカリング」です。

  1. 情報漏えいはAI固有の帰結ではなく、保存とアクセス管理の問題である。
  2. 近時は、OpenAI等のエンタープライズ提供は学習への流用を禁止し、SAPは単一クライアント専用の小型モデルを提供している。
  3. 筆者は「サンプルバイアス」は重大であると警鐘を鳴らす。なぜなら、かつてのチャットボット騒動が示す通り、学習データの偏りは推奨に反映されるからである。例えば、欧州のある製造業では、社内従業員データだけで策定した安全衛生戦略により自社の事故は減少したが、対象外だった外部請負先では事故が増加した。
  4. 対策/リスク低減策について、筆者は、データ監査とバイアス検出、属性別分析の実施を挙げている。
  5. また、「過去へのアンカリング」も注意点である。「AI」も「人の勘」も「過去」に根差す。
  6. 対策/リスク低減策について、筆者は、最新データの取り込み、因果説明が可能な推論型LLMの採用、前提変数(例:金利)の重み付け見直し、シナリオ分析やデジタルツインによる将来投影で、固定観念を外すことができると主張する。
  7. 著者らは「情報漏えいは管理可能、真の鍵はユーザーの賢明さ」と結論づけ、取締役会レベルのリスク管理は技術によるリスク低減策と運用の両輪で成り立つと指摘する。

AI取締役について30秒考えてみよう。

  • 📝 皆さんはどう思われますか?
  • 🏢 組織内弁護士・法務部として「企業内」で活用できる場面はありそうでしょうか?
  • ✉️ この論文をシェアしたら喜びそうな事業部の方はいらっしゃいますか?(オンライン版は月1〜2本の記事無料で読める場合があるので、事業部の方にシェアしてみてはいかがでしょうか?―感謝されるかもしれません🤝)

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(了)

※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。なお、誤植、ご意見やご質問などがございましたらお知らせいただければ幸甚です(メールフォーム)。