人事丨日本の五大法律事務所 2025年 新パートナー丨女性(*)割合は26%の◯◯法律事務所が首位

筆者が独自に作成。 (c)inhouselaw.org

2025年1月、各法律事務所は新任パートナー弁護士をウェブサイトで公表しました。ご昇進・ご就任の先生方に心よりお祝い申し上げます。以下、順不同で各事務所の発表をまとめます。

本稿末尾では、新しいアメリカのトランプ大統領の政権下で、法律事務所のDE&Iに関してこの6ヶ月間、変化が生じていることについて簡単に共有いたします。

2023年からAirbnb APAC法務部門で「法律事務所における多様性(ダイバーシティー)」に関わる機会を頂いており、今回も女性(*)の比率を確認しました。女性のカウント方法に関する注記は下記の「黄色」欄をご参照ください。記載に誤りがありましたらメールフォームからご連絡いただければ、謹んでまた速やかに、修正いたします。昨年の記事は以下のとおりです。

全体の傾向

本投稿の留意点
性別情報は各法律事務所のウェブサイトで必ずしも公開されておらず、掲載内容がご本人の性自認と一致しない場合や、当方の推測が含まれるため誤りが生じる可能性があります。また、DE&Iの観点からは男女という区分自体が再考されています。それでもアジア諸国、とりわけ日本では男女比が依然重要な指標とされるため、本稿ではその点を踏まえて推計値を示しました。なお、外国法共同事業には日本法弁護士以外の外国籍弁護士が含まれる場合があることにもご留意ください。分析は学びの途上で行っており、誤りやご指摘があればお知らせいただければ速やかに訂正いたします。

表(日本語版)―括弧内数値は2024年調査との比較

法律事務所新任パートナー全体女性(*)新任パートナー女性(*)割合
NO&T7 (▲2)0 (▲1)0% (▲11%)
MHM18 (+1)3 (▲3)16% (▲19%)
AM&T16 (+11)1 (±0)6% (▲14%)
N&A23 (+2)6 (+2)26% (+7%)
TMI11 (▲4)0 (▲1)0% (▲7%)
合計75 (+8)10 (▲3)13% (▲6%)
⚠管理人の集計による。また、性別情報は必ずしも公表されていないため、個人的な推測に留まる。

表(英語版)Figures in parentheses are comparisons with the 2024 survey.

Law Firm Name (5 big law firms in Japan)Total New PartnersNew Female(*) PartnersFemale(*) %
Nagashima Ohno & Tsunematsu7 (▲2)0 (▲1)0% (▲11%)
Mori Hamada & Matsumoto18 (+1)3 (▲3)16% (▲19%)
Anderson Mori & Tomotsune16 (+11)1 (±0)6% (▲14%)
Nishimura & Asahi23 (+2)6 (+2)26% (+7%)
TMI Associates11 (▲4)0 (▲1)0% (▲7%)
Total75 (+8)10 (▲3)13% (▲6%)
⚠Based on personal tally. Gender information is not necessarily publicly available and is therefore only a personal guess.

長島・大野・常松法律事務所 様 新任パートナー

長島・大野・常松法律事務所様では(誤解があれば恐縮ですが)合計7人、うち女性0人(*)。詳細はこちら(敬称略)です。

お知らせ 2025年1月6日

パートナー及びカウンセル就任のお知らせ†

本年1月1日付けで、以下のとおり、新たにパートナー及びカウンセルが就任いたしました。
パートナー
前川陽一松本岳人田島弘基宇治佑星岡竜司渡辺翼大澤大
カウンセル
今野由紀子椿浩明小松諒高橋輝好早川健藤崎恵美河相早織板谷隆平
当事務所は、依頼者の皆様に質の高い法的サービスをご提供できるよう引き続き努力を重ねる所存です。今後ともご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

森・濱田松本法律事務所様 新任パートナー

森・濱田松本法律事務所様では(誤解があれば恐縮ですが)合計18人、うち女性3人(*)。詳細はこちら(敬称略)です。

2025年01月06日

パートナーおよびカウンセル就任のお知らせ

本年1月1日付にて、下記の18名の弁護士および1名の弁理士がパートナーに就任いたしました。

【パートナー】
天野 園子白川 剛士上田 雅大蔦 大輔松村 謙太郎桑原 秀明田中 洋比古長谷 修太郎岡野 智越智 晋平伊藤 雄馬金光 由以白井 俊太郎高石 脩平冨永 喜太郎中尾 匡利林 裕人テッテッ・アウン
【パートナー弁理士】
田中 尚文

また、同日付で14名の弁護士がカウンセルに就任いたしました。

【カウンセル】
青山 正幸加藤 裕之今泉 憲人小川 友規中村 綾子吉田 瑞穂岡野 貴明塚田 智宏紀 鈞涵シュバム・アガルワラネイ・チー・ウーナミター・タンピタッパイブーンサコンラット・サーンソムウォン山本 健太

当事務所は、引き続き、Value. Growth. Impact.のミッションの下、クライアントの皆さまのために最善を尽くしてまいる所存です。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

アンダーソン毛利友常法律事務所様 新任パートナー

アンダーソン毛利友常法律事務所様では(誤解があれば恐縮ですが)合計16人、うち女性1人(*)。詳細はこちら(敬称略)です。

パートナーおよびスペシャル・カウンセル就任のお知らせ

2025.01.06

人事

本年1月1日付で、以下の16名が、当事務所パートナーおよびスペシャル・カウンセルに就任いたしましたので、お知らせいたします。

パートナー

中崎尚弁護士渋谷武宏弁護士呉曉青外国法事務弁護士片山智晶弁護士島田充生弁護士中島浩斗弁護士蔦谷吉廣弁護士先山雅規弁護士山本真裕弁護士小島諒万弁護士佐賀洋之弁護士野村直弘弁護士和田博文弁護士

スペシャル・カウンセル

繆媛媛外国弁護士中原隆雅弁護士高亮弁護士

当事務所は、今後とも、より充実したリーガルサービスの提供に努めていく所存でありますので、引き続きよろしくお願い申し上げます。

西村あさひ法律事務所様 新任パートナー

西村あさひ法律事務所様では(誤解があれば恐縮ですが)合計23人、うち女性6人(*)。詳細はこちら(敬称略)です。

パートナー就任のお知らせ

2025年1月1日付けで、下記23名がパートナーに就任いたしました。

池田 展子、小西 透、井浪 敏史、髙木 楓子、富松 由希子、有松 晶、緒方 健太、松下 外、神谷 圭佑、小川 裕子、渡邉 純子、小俣 洋平、木下 清太、森本 凡碩、カオ・チャン・ギア(ハノイ / ホーチミン事務所)、江口 尚吾、飯永 大地、前澤 友規、政安 慶一、高橋 功、角田 龍哉、上嶋 孝法、グエン・トゥアン・アン(ハノイ / ホーチミン事務所)

TMI総合法律事務所様様 新任パートナー

TMI総合法律事務所様では(誤解があれば恐縮ですが)合計11人、うち女性0人(*)。詳細はこちら(敬称略)です。

パートナーおよびカウンセル就任のお知らせ

2025年1月1日付けで、下記11名の弁護士、2名の弁理士がパートナーに就任いたしました。

【パートナー】

弁護士:永田有吾 、團 雅生、齋藤英輔、松村達紀、髙梨義幸、丸住憲司、白澤光音、野呂悠登、藤井康太、森 卓也、篠原一生

弁理士:栗下清治、茜ヶ久保公二

また、同日付けで下記2名の弁護士がカウンセルに就任いたしました。

【カウンセル】

弁護士:上野さやか、松本佳織

組織内弁護士・法務部門が将来を考える1つの仮説

2025年に公表された主要五大法律事務所の新任パートナーに占める女性比率は13%で、前年から6ポイント低下しました。

N&A様を除き昇進率は伸び悩み、多様性推進の面で課題が生じていると捉える方もいらっしゃるかもしれません。他方、各事務所はDE&Iの枠組みで研修や所内制度の改良をご継続されており、パートナー昇進という重要な人事判断にも多角的な要素が考慮されており、この1か年の数字だけをもって、日本の法律事務所のDE&Iが歩みを止めていると論ずることはやや難しいのではないかと考えています。パートナー会議で検討される諸般の事情、年次(順番待ちの数)、各プラクティスグループからの推薦枠、法律事務所を取り巻く環境変化や経営優先目標の変化、伝統と革新など所内文化との整合性など複合的要因が絡み合った結果が、データ上の一時的な「低下」として表れている可能性もあります。

他方、仮説として、女性パートナー昇進の機会が、男性と比較して、将来数年にわたり引き続き限定されてくる場合、優秀な大手渉外法律事務所の女性弁護士が法務部門・組織内弁護士へ転身を検討し、企業法務部門のさらなる発展・強化につながることも考えられます。このような世界線では、インハウス領域での優良なポジションを巡る競争が活発化し、同時に、古巣の法律事務所と企業の連携が深まるなど(近時、大手法律事務所はアルムナイのネットワークを温める施策に力を入れている)、業界全体にポジティブな波及効果をもたらすかもしれません。他方、既に組織内弁護士や法務部門のメンバーとして働く私達は、非常に優秀なプレイヤーがこれからも継続的に参入してくることを念頭に(これまで同様に黙々と)自己研鑽が必要であると思います。言い換えれば、あなた(私)が今の法務部門の役職者・さらなる高みを目指すとき、渉外法律事務所から企業に転身してきた外部中途人材とあなた(私)とが最終選考に残って比較されたとき、法律の専門性を含めて、何を強みとして、競争優位性を確保していくのかはリアルなキャリアの課題です。

今後もデータ収集と分析を続け、仮説の検証を試みたいと考えています。

補論:米国における法律事務所DE&Iの潮流変化

2025年1月の大統領令14173号は連邦請負企業のアファーマティブ・アクション義務を撤廃し、90日以内に「違法なDE&I優遇なし」と誓約させました。続く2月の司法長官メモは、DE&Iによる差別があれば偽請求法で追及する方針を示し、3月17日にEEOCが米英大手20の大手法律事務所に対してDE&I資料提出を要求、4月3日にはテキサスを中心とする12州司法長官が同調しました。これに対しシカゴ連邦地裁は3月27日、誓約条項の全国適用を一時差し止め。さらに反アファーマティブ団体AAERは、2023年の訴訟に続き25年4月にABA奨学金を人種差別と主張して提訴するなど、民間からの議論も続いています。

大手法律事務所側では、報道によれば、Latham、Kirkland、A&O Shearman などが総額約9.4億ドル相当のプロボノ提供と「多様性基準を採用しない」ことを誓約して調査を回避し、Milbankも1億ドルで同様の合意に達したと報道されています。一方、英系 Simmons & Simmons は低所得層出身パートナー比率20%達成という新目標を掲げ、米国の逆風下でもDE&I推進を継続すると表明しており、対応の温度差が浮き彫りになっています。

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ご相談・講演のご依頼などはこちらからご連絡を賜れますと幸いです。


(了)

※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。なお、誤植、ご意見やご質問などがございましたらお知らせいただければ幸甚です(メールフォーム)。

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