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テック企業の組織内弁護士が意識すべき「リスクマネジメント」のポイント丨<新連載>精読『Workplace Strategies for Technology Lawyers』[7/36]【木曜/土曜 掲載】

問題の所在+ソリューション[各連載回に共通]

Problem Statement (問題の所在) 私は、現在、『リーガルリスクマネジメントの教科書』の姉妹編となる「新しい書籍」を心を込めて執筆しています。新著は、組織内弁護士として、法務部門の中で、少ない摩擦で充実した活躍をするための様々な私の失敗と学びを透明性をもってまとめた本になります。法律の専門家から組織内弁護士への「transformation」には多様な支援が不可欠です

ソリューション ある日、Amazonの書籍の中に、海外の組織内弁護士に対して同じ視点からTip(ヒント)を提供している書籍に出会いました。本書は「Do you want to stand out as a successful in-house counsel?」と問いかけます。海外と日本の違いはあるかもしれませんが、海外で100以上の高レビューを獲得している書籍を一緒に精読していきましょう。

想定する読者 法務部門の方(とりわけ組織内弁護士)、外部弁護士の方、ロースクール生・司法修習生の方

テック企業の組織内弁護士が意識すべき「リスクマネジメント」のポイント

講義ノート

本書の筆者は、テック企業で法務を担当するうえでは、リスクを評価し、明確に説明し、それをある程度受け入れる姿勢を身につけることを強調します。実際のビジネス現場では「どの程度の被害が起きる可能性があるのか(Probability × Harm)」を定量的かつ具体的に示すことが重視されると説明します。

私個人の考え⋯皆様はどう思われますか?

私個人の考えとしては、「リスク評価」をただのストッパーではなく、事業を前向きに進めるためのクリエイティブなプロセスとして捉えることは非常に有益だと思います。皆様はどう思われますか?

この話は、Airbnbで学ばせていただいたリーガルリスクマネジメントの話を象徴しており、まだ、日本の法務部門の中で完全に意識が浸透しきっていないポイントだと考えています。したがって、私は「100%賛成」です。

たとえば、川を渡ろうとするときの安全策を考える場面を思い浮かべてみてください。橋が損傷していないか確認して渡るのか、いざというときにボートを用意するのか、それとも泳ぐ練習をしておくのか。いずれも「リスク」を受け止めつつ、その度合いに応じた準備と工夫をすることで、結果的には川の向こう岸へスムーズに到達しやすくなります。テック企業の法務でも、リスクが高いなら対策を強化し、比較的低ければ新たな手を打つという、柔軟な発想が求められます。

この例を敷衍すると、社内の依頼者が「泳ぐ練習を十分にしたので泳いでわたりたい」というリクエストをしているのに、法務部門が「絶対に橋をわたってください!法務が絶対に許さん!」とブロックしているケースは、まあまあ、存在しております(よくよく調べたら川も、法務担当者が勝手に想像していたのは淀川や隅田川のような川ではなく、事業部が渡りたいと言っていたのは水深0.5m・川幅も3mの公園内の川だったりします)。

ここまで読んでいただいた方は、リスクとビジネスとのバランスをどのように取っていますか。ぜひご意見をお聞かせください。

Workplace Strategies for Technology Lawyers ―原典の推薦―

David Sclar. (2021). Workplace Strategies for Technology Lawyers.

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(了)

※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。なお、誤植、ご意見やご質問などがございましたらお知らせいただければ幸甚です(メールフォーム)。

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