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テック企業の組織内弁護士が押さえたい「コンテキスト」の重要性丨<新連載>精読『Workplace Strategies for Technology Lawyers』[5/36]【木曜/土曜 掲載】

問題の所在+ソリューション[各連載回に共通]

Problem Statement (問題の所在) 私は、現在、『リーガルリスクマネジメントの教科書』の姉妹編となる「新しい書籍」を心を込めて執筆しています。新著は、組織内弁護士として、法務部門の中で、少ない摩擦で充実した活躍をするための様々な私の失敗と学びを透明性をもってまとめた本になります。法律の専門家から組織内弁護士への「transformation」には多様な支援が不可欠です

ソリューション ある日、Amazonの書籍の中に、海外の組織内弁護士に対して同じ視点からTip(ヒント)を提供している書籍に出会いました。本書は「Do you want to stand out as a successful in-house counsel?」と問いかけます。海外と日本の違いはあるかもしれませんが、海外で100以上の高レビューを獲得している書籍を一緒に精読していきましょう。

想定する読者 法務部門の方(とりわけ組織内弁護士)、外部弁護士の方、ロースクール生・司法修習生の方

テック企業の組織内弁護士が押さえたい「コンテキスト」の重要性

講義ノート

本書の筆者は、テック企業で法務アドバイスを行う際には、問題の背景(コンテキスト)を十分に把握することが不可欠と助言します。具体的には、相談を受けたときに「何が起きているか」という表面的な情報だけでなく、「誰が関わっているか」「いつ・どこで問題が発生しているか」「どういう形で回答がほしいか」「なぜこの質問が事業にとって重要なのか」など、多角的に状況を整理することが良い判断を下すカギになると指摘します。詳細なアドバイスはぜひ本書をご高覧ください。

私個人の考え⋯皆様はどう思われますか?

私個人の考えとしては、コンテキストを十分に収集してからアドバイスを考えるのは非常に大切だと思います。皆様はどう思われますか?

私は「賛成」です。

たとえば、他人の会話を少しだけ聞いただけで「こういう内容なんだ」と早合点し、まったく見当違いな返答をしてしまうことがありますよね。実際には途中で話題が切り替わっていたり、前後のやり取りに重要なヒントが隠れていたりするかもしれません。限られた断片的な情報から決めつけると、結論が大きく外れてしまう可能性があるという点は、法務の世界でも同じです。背景をしっかり把握すれば、「今やるべきこと」「優先度が高いこと」を的確に見極められます。

さらに、組織に慣れてくるほど、こうした確認のステップを飛ばして自分の経験だけで背景を推測してしまい、後から事業部門(社内のクライアント)が思い描いていた状況と食い違うケースも出てきます

実は、この助言は新人弁護士だけでなく、私のように経験年数を重ねた弁護士にこそ強く当てはまると感じています。自戒の念をこめて、襟の裏にでも「コンテキストを問うことを忘れるな」と書いておきたいほどです。

ここまで読んでいただいた方は、コンテキストを集める際にどのような工夫をされていますか。ぜひご意見をお聞かせください。

Workplace Strategies for Technology Lawyers ―原典の推薦―

David Sclar. (2021). Workplace Strategies for Technology Lawyers.

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(了)

※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。なお、誤植、ご意見やご質問などがございましたらお知らせいただければ幸甚です(メールフォーム)。

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