加藤雅俊 教授「政府によるスタートアップ…をめぐる環境整備においては、耳障りのよい情報や現実から乖離した『虚像』ではなく、『実像』に基づいて進められる必要がある」丨リーガルリスクマネジメントの教科書丨メモしておきたい言葉だち

1. 本日のピックアップ

本日も、日々の法務業務に役立つ、ちょっとだけメモしておきたい言葉を一緒に見ていきましょう。毎号愛読している「ビジネス法務 2024年12月号」からピックアップ。

加藤雅俊教授(関西学院大学経済学部)の言葉から:

「政府によるスタートアップ…をめぐる環境整備においては、耳障りのよい情報や現実から乖離した『虚像』ではなく、『実像』に基づいて進められる必要がある」

です。

加藤教授に主張よれば、『新しい企業の登場が経済成長に結びつくと言う科学的根拠(エビデンス)は乏しい』らしい。また、『 規制緩和などで起業のハードルを下げると、企業の絶対数は増えるが、経済活性化には貢献しない質の低い起業家が増える』らしい。ふむふむ、そうだったのかー!(いや、まて…しかし、まだ腹落ちできていない)。

そこで、さらに、加藤雅俊教授のインタビューを拝見したところ、誤解があれば恐縮ですが、日本でスタートアップが育たない理由の重要な点を以下の5つにまとめます。

  1. 大企業とスタートアップのパートナーシップの重要性
    スタートアップが成長しイノベーションを推進するためには、大企業との協力が不可欠だと述べています。スタートアップは高度な技術や革新的なアイデアを持っていても、ブランド力や流通チャネルが不足しているため、大企業と連携することで市場へのアクセスや収益化を図れるとしています。
  2. 外部知識を吸収するための「吸収能力」の欠如
    日本企業は外部の知識や技術を取り入れる「吸収能力」が不足しているため、オープンイノベーションがうまく進まないと指摘しています。外部の知識を社内で活用するには、高度な知識やスキルを持つ人材が必要であり、この能力を持つ人材の育成が課題だと述べています。
  3. 高度専門人材の不足と学び直しの機会の欠如
    日本では博士号取得者や修士号取得者の割合が低く、また学び直しをする機会が少ないことが問題だとしています。特に終身雇用を前提とした日本の雇用システムでは、企業が社員に外部で再教育を受けさせるインセンティブが薄く、その結果として最新の専門知識を持つ人材が育ちにくい状況にあります。
  4. 新陳代謝と競争の必要性
    スタートアップが増えることで市場に新しい競争相手が現れ、既存企業にもイノベーションのインセンティブが生まれると述べています。また、新しい企業が市場に参入することで、競争を通じて淘汰される企業が出ることも重要であり、これが市場の健全な新陳代謝を促進するために不可欠だとしています。
  5. 社会全体での起業家やスタートアップへの理解と支援
    起業家やスタートアップに対する社会の理解と支援を高めることが、起業文化を根付かせるために重要であると述べています。起業家やその家族、友人などが彼らの挑戦を支援することで、起業に対する心理的なハードルが下がり、起業の裾野が広がると考えています。

これらの点を通して、加藤教授はスタートアップが経済に果たす役割と、日本が直面する課題を明確に示しています(個人的には、4と『新しい企業の登場が経済成長に結びつくと言う科学的根拠(エビデンス)は乏しい』という主張の関連性が読み解けていない)。

それぞれの主張について、もう少しデータをベースに理解したいなと思ったので、先生の著書を購入(Amazonのリンクはこちら)いたしました。

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[リーガルリスクマネジメントの教科書とは?]

リーガルリスクマネジメントの教科書』(日本加除出版)は、2023年に出版された教科書です。リーガルリスクマネジメントという臨床法務技術を独学で学んでいただけるよう、心をこめて作成いたしました。きっと喜んでいただけると思います。

渡部友一郎『攻めの法務 成長を叶える リーガルリスクマネジメントの教科書』(日本加除出版、2023)

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(了)

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