1. 本日のピックアップ
7月の日本経済新聞様の「ALSP(代替法務サービス事業者)」に関する記事。
弁護士法との関係などセンシティブなテーマも含むため、本記事は、専ら、ALSPや記事の是非には立ち入らず―Airbnbだとどうなっているの?―という個人的なメモを添えております。
日本経済新聞の記事が報じているFact
私が印象に残ったのは、守田達也氏(常務執行役員・双日)「M&Aや人権対応、経済安全保障など法務は多様化している。社内人材にはそれら付加価値の高い仕事をやってほしい。」のお言葉です。
日本の契約書と法域の壁
日本の契約書には、日本語および日本法という言語と法域の壁があります。しかし、コモン・ローの法域では、米国法、カナダ法、英国法、シンガポール法、オーストラリア法、インド法のいずれかの弁護士であれば、基本的にポジションに応募が可能です。さらに、英文契約書の対応においては、世界中から「お安く見てくれる人」を探して依頼することが比較的容易です。これは、人材のプールが非常に豊富であるためです。例えば、米国の企業がインドに発注する例も聞いたことがあります。
FTEではなくCWとしての人材確保
契約書の枚数は業種やビジネスによって大きく異なりますが、lawyers on demandのようにFTE(フルタイム従業員)ではなくCW(契約労働者)として法務部門内部で人材を確保しやすい環境があります。人材プールが豊富であるため、非常に優秀な助っ人が来てくれることが多いです。CWはそのような働き方を好んで選んでいる方も多く、実際に、会社と相思相愛になればFTEに転換して長くFTEとして勤務される方も多いです(なお、能力等のため法律事務所で働けない人と考えるのは著しい誤解・偏見であることも申し添えます)。
日本における法務の効率化の必要性
日本では人材プールが相対的に限られており、今後も人口減少が予測される中、法務の仕事を効率化・仕組み化する必要があります。例えば、NDAをそもそも外注する必要があるのかという話もあるかもしれません。また、日本は相対的に訴訟が少なく、和を尊ぶ文化があります。そのため、訴訟提起が原則「禁じ手」とされるなど、(私の主観ですが、契約にまつわる紛争という意味では世界を眺めても)低リスクの国です。このようなrisk profileの社会において、当該案件を見ると「低リスク」の案件について、日本語の契約書を細かく締結することが本当に企業価値を向上させるのかは、慎重に検討しなければなりません。
一方で、契約書を細かく締結しているからこそ訴訟が起きていないという立論もあるかもしれません。
皆様はどう思われますか?
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<後日更新いたします>
[リーガルリスクマネジメントの教科書とは?]
『リーガルリスクマネジメントの教科書』(日本加除出版)は、2023年に出版された教科書です。リーガルリスクマネジメントという臨床法務技術を独学で学んでいただけるよう、心をこめて作成いたしました。きっと喜んでいただけると思います。
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(了)
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