キャリアに役立つ丨「組織内弁護士 x 社外役員」という別軸を考える

2024年8月末に、日本組織内弁護士協会の研究会において「組織内弁護士 x 社外役員」についてパネリストとしてお話をする機会があったので、謹んで共有いたします。

こんにちは、皆さん。今回は、私が社外役員としてのキャリアを築くまでの経緯や、そこで得た知見、そして日々の努力についてお話しします。この記事が皆さんのキャリアに少しでも役立てば幸いです。

就任の経緯

2019年、前職のグループ会社で社外監査役のお話をいただきましたが、様々な事情で実現しませんでした。しかし、その時に海外の上司と深く話す機会があり、「備えるべき事項」が見えてきました。

2023年、中村直人先生や國廣正先生とそれぞれ1対1でご飯をご一緒する機会に恵まれ、「社外役員」が40代以降のキャリアで重要になるという示唆を受け、そこから動き始めました。

2024年、恩師を含む何人かの方々に「夢」を伝え、情報を頂く日々が始まりました。2月には、JILAプラチナスポンサーでもあるInfoLegalの重松さん(東大ローの敬愛する後輩)から直接お話があり、御縁を頂きました。面接を経て、採用いただくことが決定しました。

両立のための時間と労力

労力としては、「会社・上司への説明・許可基準のクリア」が一番のハードルでした。本業が極めて多忙である一方、幸いなことに、ファインディ社は「エンジニアの採用支援を行うインターネット企業」であるため、取締役会も監査役会もすべてオンラインで完結しています。事前準備は夜や朝に行い、会議時間のみ予定のコンフリクトに気をつけています。

所属先の会社から許可を得る方法

戦略的アプローチ

  1. 信頼の通貨を獲得する: 会社や上司に対する信頼を積極的に築くことが重要です。信頼が強まることで、将来的なサポートを得やすくなります。
  2. 小さな一歩を踏み出す: 無償で社外団体の幹部を引き受けるなど、「兼業」に該当しない社外活動から始めることが有効です。例えば、JILAの事務局や研究会などに参加することが有効です。
  3. 透明性を持って説明する: 社外役員のポジションが会社および自身のキャリアにとって不可欠である理由を明確に伝えることが重要です。

誤解の解消

製造業など特定の業界にいる場合、その業界の知識を活かして同じ業界の社外役員になることを期待するかもしれませんが、これは誤解です。利益相反を避けるため、同じ業界の社外役員には原則として就任できないと考えるべきです。

別の専門性の開拓

本業で得た業界知識とは異なる専門性を開拓する必要があります。2018年以降、副業としてDeNAの卒業生が立ち上げたスタートアップの顧問(会社内部のパートタイム法務部長的なお仕事)を無料で務めた経験が、スタートアップのベンチャーについての知見を蓄える助けとなりました。これにより、現在のキャリアにも活かすことができています。

抽象的な専門性の持つ意義

社外役員のキャリアを描くためには、本業の業界専門性ではなく、コンプライアンスや海外子会社のガバナンスなどの抽象的な専門性を持つことが有益です。利益相反の範囲を自分で狭く考えすぎないようにし、広い視野で準備をしておくことが重要です。

社外役員に就任して感じたメリット

シニアな先生方の視点

中村直人先生や國廣正先生など多くのシニアな先生がおっしゃっていたのは、「社外弁護士でも、社内弁護士でもない、第3の”役員/経営者”の視点」が見えてくることです。この視点を持つことで、より広い範囲でのアドバイスや判断が可能となります。

自分のミッションとの関連性

私のミッションは、『着想・達成欲・目標志向・社交性・学習欲の5つの強みを生かした最高のアドバイス(法律に限らない)を提供し、多くの種を蒔き育て、心から喜んでもらえるため、注意深く、欺瞞なく、本物の努力を続けること』です。Airbnbにおいて、日本企業でのコーポレートガバナンスや取締役会の運営について学び、「最高のアドバイス」を将来経営者に提供したいと考えています。

役員報酬への感謝

役員報酬は、生活を助けて頂いており、その点についても深く感謝しています。

社外役員としての研鑽方法

「利益相反の壁」を念頭に置き、「正しい市場の期待値」を知った上で、「御縁」をいただけるように自分には何が必要かを検討する。その上で、会社・上司のOKをもらうためには、自分が「信頼の通貨」をどれほど今の会社で獲得しているかも考えることが重要です。

社外役員候補になるためのポイント

留意すべき要素

  1. 年齢(経験年数 ― 上場企業の場合、男性のボリュームゾーンは50代以降)
  2. 性別

自分の努力で厚みを増すもの

  1. 専門性
  2. 業界知識(但し「利益相反」と常に緊張関係)
  3. 人柄を含む周りのへの貢献(眼の前の方に「最高のアドバイスを提供する」という姿勢を続けていれば、もしかしたら、いつか順番が回ってくるかもしれない)
  4. 講演・出版を含む業界知名度の向上(その会社の弁護士が候補者として名前を聞いたときに、あなたを存じ上げているか。)

以上、社外役員としてのキャリアを築くためのポイントや私の経験についてお話ししました。この記事が皆さんのキャリア形成の一助となれば幸いです。質問やご意見がありましたら、ぜひこちらからお知らせください。

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ご相談・講演のご依頼などはこちらからご連絡を賜れますと幸いです。


(了)

※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。なお、誤植、ご意見やご質問などがございましたらお知らせいただければ幸甚です(メールフォーム)。

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