1. 選考委員(錚々たる顔ぶれ…!)
はじめに、次回のアワードへ応募する際、選考委員の属性・傾向を分析する必要があります。
JILAの公式ウェブサイトによれば、選考委員は「JILAのプラチナスポンサー及びゴールドスポンサーの推薦、並びに企業法務に関する識見等を踏まえて…ご就任いただ(いた)」ようです。
第1回の審査委員の皆様は下記のとおりです。
名前(敬称略) | 役職 |
平野温郎 | 東京大学大学院法学政治学研究科教授 |
中山龍太郎 | 西村あさひ法律事務所 執行パートナー |
杉本文秀 | 長島・大野・常松法律事務所 マネージング・パートナー |
荒張健 | EY新日本有限責任監査法人 EY Japan Forensic&Integrity Services Leader |
梅津立 | アンダーソン・毛利・友常法律事務所 マネジング・パートナー |
茂木諭 | PwC弁護士法人 パートナー (PwC Japan合同会社の推薦) |
角田望 | 株式会社LegalOn Technologies 代表取締役 執行役員・CEO |
酒井智也 | 株式会社Hubble 取締役CLO |
板谷隆平 | MNTSQ株式会社 Founder / CEO |
渡邊弘 | 株式会社BoostDraft 共同創業者/CRO |
北村豊 | DT弁護士法人 パートナー |
藤田元康 | 外国法共同事業法律事務所リンクレーターズ パートナー |
早川浩佑 | Epiq Systems合同会社 Senior Director – Legal Solutions, Japan |
前田絵理 | EY弁護士法人 ディレクター |
<個人の考察> 日本組織内弁護士協会のプラチナパートナー及びゴールドパートナー団体から審査委員の先生方が選出されています。これはどの賞の応募にも鉄則ですが、自分の業界のことを自分の専門用語で起案して提出するような応募は「即落選」と私はずっと肝に銘じております。例えば、私がAirbnbで使用する、STRやLTRのような言葉を使っても審査委員の先生方には伝わりません。ITの世界に身を置く私は、必ずしも製造業の業界の皆様の法令を熟知しているわけでもございません。そこで、イメージとしては、日本経済新聞のように、読者が当該業界とあまり普段接点がなくても、すっとスムーズに理解いただけるように記載することが大切です。また、これは運次第ですが、事例に関して、世間の認知がすでにある事案は凄さは伝わりやすいが、業界では目立っているが業界外では知られていない事案は凄さを説明するのは難易度が高いと考えています(私見)。では、私が弱小Airbnbで何をやっているのかですが、飾らず書けば、普段から全力で仕事の取り組みつつ、その上で、どの案件がインパクトがありそうかは常に考えておくことをしております。募集が公表されてから考えるのではなく、日々、「準備x100」―特に、Airbnbのように(日本での)人員や事業規模も限られている会社にいれば、日本の著名な大手企業様や資金・人材も豊富・潤沢な事業会社様(とそのチーム)に、案件では、質も量も当然負けてしまいます。だからこそ、何か光るものを普段から一生懸命探して磨くのです(渡部説)。大企業様には正面からは勝てない、これはあたりまえです。Airbnbが、日本の商社様、自動車会社様、金融機関様、製造業の会社様、巨大IT企業様に正面からぶつかっていっても、張手一発で、土俵下へ転落です。ですので、下記の考察でも書きましたが、何か「キラリと光るたった1つ」の唯一勝負できるものを探し育てて参りましょう。繰り返しますが、大企業様やメガ法務部様と同じ土俵で戦っていたら、戦う前に負けています。
2. 団体賞(賞の名称は仮訳)
2-1. 団体賞とは?
団体賞は「JILA正会員又は非登録会員を雇用等している団体(団体の公私は問わない)」が参加要件です。
応募要項によれば『総合的に顕著な実績をあげたと認められる組織内弁護士の所属団体を表彰します。評価項目は、ディール、コンプライアンス(規制対応、不祥事対応を含む)、イノベーション(リーガルオペレーションズ、リーガルテック、新規業務分野への取組みなど)、リーダーシップ、ガバナンス、紛争解決、企業内弁護士の活躍度などです。』
2-2. 渡部さん(Airbnbさん)は団体賞応募したの?
なお、私は、受賞できる見込みが「0.0007%」程度であったため、団体賞にはそもそも応募しませんでした。その理由は下記の考察でも述べますが、中小企業のカテゴリはあるものの、考え抜いたのですが突破できる道が見えなかったからです。
2-3. 白熱した会場
序盤、会場は「株式会社LIXIL」様の4部門制覇にざわつき、誰もがLIXIL様の総合部門優勝(総合部門は各評価項目を合算した最も優秀な企業に贈られる)と思いました。
しかし、結果は、パナソニックホールディングス様の、まさかの逆転優勝。
詳細や実際の議論は存じ上げませんが、各評価項目では僅差であり総合部門の優勝もおそらく極めて僅差の激しいレースであったことを推察させます。
2-4. 団体賞の結果一覧(英語つき)
賞の部門 (Award Category) | 受賞者 (Winner) |
総合部門 (Overall Victory) | パナソニックホールディングス株式会社 (Panasonic Holdings Corp.) |
コンプライアンス部門 (Compliance Award) | パナソニックホールディングス株式会社 (Panasonic Holdings Corp.) |
企業内弁護士の活躍度部門 (In-House Lawyer Contribution Award) | 株式会社LIXIL (LIXIL Corporation) |
イノベーション部門 (Innovation Award) | 株式会社LIXIL (LIXIL Corporation) |
リーダーシップ部門 (Leadership Award) | 株式会社LIXIL (LIXIL Corporation) |
ガバナンス部門 (Governance Award) | 株式会社LIXIL (LIXIL Corporation) |
紛争解決部門 (Dispute Resolution Award) | ルネサスエレクトロニクス株式会社 (Renesas Electronics Corporation) |
ディール部門 (Deal Award) | ルネサスエレクトロニクス株式会社 (Renesas Electronics Corporation) |
中小規模部門 (Mid-Small Size Company Award) | 株式会社メドレー (Medley, Inc.) |
地方企業部門 (Regional Company Award) | 福岡ソフトバンクホークス株式会社 (Fukuoka SoftBank HAWKS Corp.) |
<個人の考察>第1回ということで応募各企業も、どのように記載して提出するかについて、作戦・戦術が難しかったと思われます。1つ明らかになったことは、何か1つに全振りするのでは勝てず、突出した何かがあっても各評価項目について総合的に高い裏付け・パフォーマンスが求められていることです(これはALB Japan Law Awardと傾向が異なります)。個人の推察にすぎませんが、選考委員は、各評価項目をバラバラに採点するわけではなく、1つのフォームを最初から最後まで読んで各評価項目を採点すると想像されます(違っていたらごめんなさい)。そうだとすると、他の項目が1〜10点(例)のうち「3点」が連続して並んでいるのに、ある1評価項目だけ10点をつけるのには勇気が必要です。例えば、3−3−3−10−3−3、はちょっと勇気がいります(想像)。そうだとすると、なにか1項目で勝ちにいくよりも、7−7−7−8−7−7など総合的に高い平均点をマークすることが団体賞の勝利の方程式になるかもしれません。事実、パナソニック様の優勝スピーチにはヒントがあり、各評価項目について「チームのそれぞれの担当者が最高の素材を持ち寄って、それを統合した」旨のお話がありました。そうだとすると、各項目について、高いレベルの記述を繰り出すことで、底点を高く維持し、各評価部門で頭1つ抜きん出る作戦がいいかもしれません。
<でもそれでいいのか?は今後要検討か> ただし、この採点方法であると課題もあります。すなわち、今回のパナソニック様、リクシル様、ルネサス様のような横綱・大関級の会社ではないと勝てないのではなかろうかという素朴な疑問です。また、上記のような採点時に生じうる(解消がやや難しい)バイアスもありうることから、ALB Japan Law Awardのように、カテゴリごとに応募してもらい、カテゴリごとに選考委員をわけて、当該カテゴリーの良し悪しに集中できるようにすることも一案かもしれません。しかし、あえて申し上げれば、制度変更への期待をして待っていたり、甘えてはいけません。これは私見ですが、ALB Japan Law Awardでも横綱・大関級の会社がインハウスの賞をもっていくことが通常であり、弱小Airbnbのように、横綱・大関に対して、いかに準備と着想で対抗するかというところが、知恵の出しどころなわけです。とはいえ、舞の海や旭鷲山(世代がばれてしまう)のようにクルクル素早く横綱を煙に巻こうとしても、張手一発で、場外に吹っ飛ぶのが小さな会社・法務部門の宿命ではあるので、こればかりはその年の「運」なのです。
念のため、申し添えますと、管理人は、日本組織内弁護士協会の理事ですが、本件のJILAアワードの立案・企画・運営については携わっておりません。第1回応募を念頭に、情報遮断措置が講じられており、事実、当日の発表までは私含め応募者は「誰が最終受賞者」かは知らない状態でした。
第2回は、個人賞について書きたいと思います。受賞の報告は、また改めて書きます。
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(了)
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