問題の所在+ソリューション[各連載回に共通]
第5回の読了により、得られる情報
ガーナー教授の教科書は、多種多様なレゴブロックを、部品と色ごとに整理したような「魔法の整理術」そのものです。はじめに、教授は、長々下手くそな法律文書を書く私達のために、合計20のルールを与えてくれます。この20のルールは、すべての法律文書に共通し、さらに、3つの箱に分類されています(下記)。
第1部:すべての法律文書における原則
目次 Garner, B. A. (2023). Legal Writing in Plain English, Third Edition: A Text with Exercises. Chicago: University of Chicago Press.
1. 思考の枠組み
2. 文章のフレーズ
3. 言葉の選択
読者は、読了により、「思考の枠組み」という3つのうち1つの箱にしまってある鍵『§ 4. Use informative headings to mark sections and, if helpful, subsections. / セクション(サブセクション)を示すために「情報量の多い見出し」を使用』を理解して、自分・チームの業務を改善できます。
[No.4/計20]さようなら「見出し」のない法律文書
- ガーナー教授によれば、法律文書において、「情報量の多い見出し」の活用は、内容の明確化と読者の理解促進に重要であるとされる。なぜなら、たとえ論理的構成に成功している文書であっても、「見出し」を欠く場合には、忙しい読者には見落とされる可能性があるからである。
- ガーナー教授は、「見出し」は、①文書内の各ポイントに関する要点を簡潔に示すために使用し、②太字(ボールド)で目立たせることを推奨している。
- 読者は情報の流れを追いやすくなる。
- さらに「見出し」は、考えの分類、明確な方向性の提供、視覚的な変化、テキストの読み飛ばしの容易さのメリットも併せ持つ。
- 熟練した法律家たるには、書き始める前に主要な命題を把握し、各命題を支持する文章を書くことが鍵となる。ガーナー教授によれば、未熟な法律家は、往々にして、伝えるべきメッセージを完全に理解しないまま(とりあえず)書き始める傾向がある。とりあえず書き始める手法は、冗長で、まとまりのない文書という結果をもたらす。
ガーナー教授の教科書(第3版)―敬意をもって強く推薦―
Garner, B. A. (2023). Legal Writing in Plain English, Third Edition: A Text with Exercises. Chicago: University of Chicago Press.
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(了)
※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。なお、誤植、ご意見やご質問などがございましたらお知らせいただければ幸甚です(メールフォーム)。
Problem Statement (問題の所在)「英文契約書は好きでない」「法律英語が上達しないのはなぜ」「欧米弁護士の思考で英語の法律文書が書けない」― 法律英語のライティングの悩みは日本の法律家に共通します。私も、です。
ソリューション 2022年、Airbnb法務部の研修で、魔法のような体験がありました。名著『Legal Writing in Plain English』のガーナー教授から直接学ぶ機会があったのです。「できなかった」理由がすっと理解できました。そこで、毎週1記事、名著を「分析」し、一緒に(同期やライバル達よりも)法律英語に少しだけ強くなっていきませんか? ― 精読して蓄えていきましょう。
想定する読者 法律家・法務部門・司法修習生/ロースクール学生の皆様