問題の所在+ソリューション[各連載回に共通]
第8回の読了により、得られる情報
ガーナー教授の教科書は、まず、「すべての法律文書に共通」する合計20のルールを与えてくれます。20のルールは、わかりやすく「3つの箱」に分類されています(下記)。
第1部:すべての法律文書における原則
目次 Garner, B. A. (2023). Legal Writing in Plain English, Third Edition: A Text with Exercises. Chicago: University of Chicago Press.
1. 思考の枠組み
2. 文章のフレーズ
3. 言葉の選択
読者は、読了により、「思考の枠組み」という3つの第2の箱にしまってある鍵『§ 7. Keep the subject, the verb, and the object together-toward the beginning of the sentence. / 主語・動詞・目的語を文の冒頭に一緒に配置せよ』を理解し、自分・チームの業務を今日この日から改善できます。
[No.7/計20]主語・述語・目的語の別居問題
If any partner becomes a bankrupt partner, the partnership [主語さん], at its sole option, XXXXXXXXXXXXX at any time prior to the 180th day after receipt of notice of the occurrence of YYYYYYYYYYYYYYYYY, may buy [述語さん], and upon the exercise of is option ZZZZZZZZZZZZZ, the bankrupt partner’s partnership interest [目的語さん].
Garner, B. A. (2023). Legal Writing in Plain English, Third Edition: A Text with Exercises. Chicago: University of Chicago Press. p. 42
「うわあああ!わかりにくいけど、線引いて読んでたあああ!逆に、自分もこんな条文や英文メモを量産していた!ガーナー教授に叱られちゃう。」―英文契約書などであるあるですよね。主語・述語・目的語が離れ離れで別居している様子です。日本人の法務部門・弁護士の多くの方がこのような非ガーナー教授流のお手本を、真面目に倣い、英文を複雑怪奇にする技を磨いてきたのではないでしょうか。私も共犯です。
さて、ここで救いです。ガーナー教授は、上記のような法律家の文書に対して、警鐘を鳴らしつつ、次のアドバイスを私達へ送ります。
- 主語と述語(動詞と目的語)を冒頭かつ一緒に配置することにより、読者が内容を追いやすくなる
- 修飾語や条件は主語と動詞の「後」に配置し、関連する単語は括りだしてまとめるのが良い[私達も無意識で「If」から書き始めたりしますよね…]
教授が書き直すと… (以下、劇的ビフォーアフターを想像してご覧ください)
ナレーター「なんということでしょう!」[匠のBGMが流れる]
The partnership [主語さん] may buy [述語さん] any bankrupt partner’s interest [目的語さん]. To exercise its option to buy….
Garner, B. A. (2023). Legal Writing in Plain English, Third Edition: A Text with Exercises. Chicago: University of Chicago Press. p. 42
本書には各章にトレーニングが乗っていますので、ぜひ上記に思い当たる節がある先生・法務部員の方は、下記のガーナー教授の書籍をご購入ください。毎週日曜日1つ1つ一緒に精読していきましょう。
私も still learningですので、1つ1つ改善に腰を据えて取り組んでまいりましょう。
匠(TAKUMI)の背中は遠い。
ガーナー教授の教科書(第3版)―敬意をもって強く推薦―
Garner, B. A. (2023). Legal Writing in Plain English, Third Edition: A Text with Exercises. Chicago: University of Chicago Press.
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(了)
※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。なお、誤植、ご意見やご質問などがございましたらお知らせいただければ幸甚です(メールフォーム)。
Problem Statement (問題の所在)「英文契約書は好きでない」「法律英語が上達しないのはなぜ」「欧米弁護士の思考で英語の法律文書が書けない」― 法律英語のライティングの悩みは日本の法律家に共通します。私も、です。
ソリューション 2022年、Airbnb法務部の研修で、魔法のような体験がありました。名著『Legal Writing in Plain English』のガーナー教授から直接学ぶ機会があったのです。「できなかった」理由がすっと理解できました。そこで、毎週1記事、名著を「分析」し、一緒に(同期やライバル達よりも)法律英語に少しだけ強くなっていきませんか? ― 精読して蓄えていきましょう。
想定する読者 法律家・法務部門・司法修習生/ロースクール学生の皆様