池永朝昭弁護士(プロアクト法律事務所)「悪い情報ほど取締役会は知っておくべきである」丨メモしたい、法務の言葉

図表・データ | 組織内弁護士研究ノート® | 法務部とインハウス弁護士の金貨

メモしたい法務の言葉とは?

図表・データ | 組織内弁護士研究ノート® | 法務部とインハウス弁護士の金貨

Problem Statement (問題の所在)

法務部員・組織内弁護士は、不確実性が高まる環境の中で、社内のクライアント(依頼者、経営者、事業部門など)の意思決定を十分な情報に基づいて支援する役割を担います。 しかし、日々の業務で何をすべきか迷うときもあります。

ソリューション

定期的に、法律雑誌などで見つけた「珠玉の言葉」を紹介します。 ノートやスマホにメモすることで、自分を鼓舞したり新しい気付きを得るきっかけになることを期待しています。

想定する読者

法務部門の方(とりわけ組織内弁護士・インハウス弁護士)、外部弁護士の方、ロースクール生・司法修習生の方

池永朝昭弁護士(プロアクト法律事務所)の言葉

池永朝昭弁護士(プロアクト法律事務所)「悪い情報ほど取締役会は知っておくべきであることはガバナンスの要諦であるが、社内調査の場合にもそれは妥当するのである。」

池永朝昭「調査計画の策定と機関決定」ビジネス法務2025年12月号31-33頁

中堅組織内弁護士による分析(個人的な考え)

個人的なことながら、池永先生は元アンダーソン・毛利・友常法律事務所の弁護士であり、私たち現役世代の組織内弁護士にとって、まだ全国で組織内弁護士が50人にも満たなかった時代から第一線でご活躍されている先達です。私自身、現在も続いている一橋大学ロースクールでのゲストスピーカーの機会は、池永先生から最初にお声がけをいただいたものであり、今でも深く感謝しております。日本組織内弁護士協会(JILA)においても、私より上の世代やシニアに近い中堅世代の方々に多大な影響を与えた先生です。

ところで、取締役会に限らず、組織の上位層に対して「バッドニュースを早く伝える」ことを推奨する先行研究は少なくありません。

たとえば、著名な経営学の論文として多数引用されている Michael L. Tushman and Charles A. O’Reilly III, Ambidextrous Organizations: Managing Evolutionary and Revolutionary Change, California Management Review, Vol. 38, No. 4 (1996) において、組織が環境変化に適応し続けるためには、現場から上層部への「honest communication of bad news」(悪いニュースの正直な共有)を可能にする情報経路が重要と示唆されています(読み方に誤りがなければ⋯多分)。逆に、情報を隠す文化(shoot-the-messenger culture)が組織変革を阻害することを実証的に示しており、経営層への率直な報告が、結果的に組織の適応力と信頼を高めることもわかっています。

関連記事

組織成長を叶える 組織内弁護士の教科書丨迷うたび、読んでほしい
図表・データ | 組織内弁護士研究ノート® | 法務部とインハウス弁護士の金貨

補足情報

ゆる募:お悩み相談箱

法務部員・組織内弁護士としての大切なことや日々の悩みは、誰かに話すだけでも心が軽くなるものです。もし「取り上げてほしい」「ちょっと聞いてほしい」と思うことがあれば、どうぞ遠慮なくメールフォームからお寄せください。いただいたご相談は、できる限り丁寧に目を通し、少しでもお力になれればと考えています。

なお、法律相談に関しては直接対応いたしかねますので、お近くの法テラスにご相談ください。それ以外のお悩みや想いは、いつでもお待ちしております。あなたの声が、きっと誰かの力にもなります。

リーガルリスクマネジメントの教科書とは?

リーガルリスクマネジメントの教科書』(日本加除出版)は、2023年に出版された教科書です。リーガルリスクマネジメントという臨床法務技術を独学で学んでいただけるよう、心をこめて作成いたしました。きっと喜んでいただけると思います。

図表・データ | 組織内弁護士研究ノート® | 法務部とインハウス弁護士の金貨
渡部友一郎『攻めの法務 成長を叶える リーガルリスクマネジメントの教科書』(日本加除出版、2023)

***

ご相談・講演のご依頼などはこちらからご連絡を賜れますと幸いです。


(了)

※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。なお、誤植、ご意見やご質問などがございましたらお知らせいただければ幸甚です(メールフォーム)。