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世界を担うジェネラルカウンセル/組織内弁護士が知っておくべき「グローバルチーム」失速の理由[3/3]丨HBR2025年5-6月号の掲載論文

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「勉強時間なんて、忙しすぎて確保できない」と悩む方は多いものです。私は30代前半に他責の姿勢を改め、早朝学習に活路を見いだしました。現在も毎朝4時台に起床し、机に向かっております。この場では、英語版Harvard Business Review(HBR)最新号に掲載された論文をゆっくり読み、講演や執筆で活用できそうなものを備忘録としてまとめています。事業部を支える法務部や組織内弁護士だからこそ、毎週火曜日と金曜日にご一緒に専門外の最新知見に触れてまいりましょう。なお、これは私的な備忘録であるため、内容に誤りが含まれる可能性がございます。原文をお手元でご確認の上、ご検討いただければ幸いです。

(*)英語力が乏しいためノロノロとテクノロジーの力を借りて整理しています。学びがある雑誌で、私もファンの1人です。よろしければ、HBR定期購読(定期購読サイト)をご検討ください。

一緒に学ぶ論文はこちら

David Livermore (2025). Leading Global Teams Effectively – Avoid the Western assumptions that often derail cross-cultural work, Harvard Business Review, 103(3), 112-119.

全体像丨わかりやすくまとめてみる

<わかりやすくまとめてみる>
今回は例え話を準備するのに手間取ったのですが、この論文は「世界選抜リレーチームの物語(映画)🏃💨」に置き換えると分かりやすいです。多分。

目を閉じて下さい―ここは、ある国の「国立競技場」の一角。国も文化も違う「個性的な」4人の選手が、国際大会に向けて初めて顔を併せました。キャプテンは西洋流のやり方で「各自の裁量でベストを尽くそう」と声を掛け、やる気アップのために、「Runner of the Month」の個人表彰も導入しました。

ところが、集団主義を重んじる選手、さらに、上下関係を重んじる選手は戸惑ってしまい、バトンゾーンでも合図が揃わず、練習は空回りします。分裂しそうな4人⋯。

そこで、伝説的なコーチはやり方を変えます。

受け渡しの合図と位置を全員で標準化し、表彰は「Team of the Month」へ切り替えます。意見提出は1対1、文書、グループ提出の3経路を用意し、まず各自でメモを書いてから共有するルールにしました。すると、静かだった選手の視点が自然に混ざり、提案が増えていきます(自律の過剰を調律)。

次第に雰囲気は穏やかになりましたが、日々のミーティングは当たり障りのない話に流れます。そこで、コーチはチームで明確な規範を共創しました。「6週間以内に3会場でテストする」「『質問はあるか』ではなく『どんな質問があるか』と必ず聞く」。発言順も工夫し、先に若手や少数派から意見を出す時間を確保します。程なく、厳しさと率直さが戻り、必要な異論がテーブルに上がるようになりました(心理的安全性と知的誠実さの両立)。

それでも、国ごとの走り方や価値観の違いがぶつかる場面は残ります。そこで、コーチは「視点取得」の練習を導入しました。選手同士がもし対立したら、相手の立場で自分の主張を1人称で書いてから話すこと。また、「誰が正しいか」ではなく「全員で大会記録を1秒縮める」に目標を再定義しました。共通目標に結び直された議論は実務的になり、受け渡しは滑らかに、記録も着実に縮まっていきます(差異の過剰強調を抑え、成果に集中)。

個別丨本日のポイント

最後に、本論文は、「差異の過剰強調を抑え、視点取得で成果に集中する」ことの重要性を主張します。

  1. 筆者の研究によれば、多様性は力であるが、差異の強調が行き過ぎると逆機能化する
    • Deakin Universityが豪州の労働者265名を調査した研究によれば、不安増大と知識共有の低下を示した。
    • University of Missouriの研究によれば、一部の多様性施策が周縁化を助長し得ると報告されている。ここに、「周縁化」(marginalization)とは、多様性施策や文化的差異の強調が意図せず逆効果を生み、もともと過小評価されている人々(underrepresented individuals)をさらに疎外し、関与や包摂を妨げる現象である。
  2. Thomas RockstuhlとLinn Van Dyneによる199件の文化的知性メタ分析は「差異知識の過信」が硬直化を招くと示している。ここに「差異知識の過信」(overconfidence in understanding differences)とは、人が文化的な違いについて多く知っていると自信を持ちすぎることで、かえって硬直的でカテゴリー的な思考に陥り、行動を「ドイツ人」「X世代」「エンジニア」といった単一ラベルで単純化してしまう現象である。
  3. 打開策は「視点取得」であると本論文は説明する。
    • Adam Galinsky(Columbia)の実験では、高齢男性の1日を「一人称で書く」条件が最も前向きで豊かな描写を生んだ。
    • 実務では、対立時に相手の立場を一人称で説明させるチームの同一性を「共通課題」へ再定義するなどが有効である。
    • Muzafer SherifのRobbers Cave実験は共同課題が対立を緩和することを示し、Hadassah Ein Kerem Hospitalではイスラエル人とパレスチナ人の医療者が「患者最優先」の目的で協働する。
    • Frank DobbinとAlexandra Kalevは、任意参加で技能訓練型のプログラムが有効であるとする。筆者は、差異を認めつつ、チームを共有目標に集中させるのが文化的知性の核心であると主張する。

30秒考えてみよう。

  • 皆さんはどう思われますか?
  • 組織内弁護士・法務部として「企業内」で活用できる場面はありそうでしょうか?
  • この論文をシェアしたら喜びそうな事業部の方はいらっしゃいますか?(Web版は月1−2記事無料で読めるので、探してシェアしてみてはいかがでしょうか?)

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(了)

※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。なお、誤植、ご意見やご質問などがございましたらお知らせいただければ幸甚です(メールフォーム)。