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日経「商事法務・有斐閣・第一法規が無断書籍配信に激おこ」―法律書デジタル図書館は争う姿勢

図表・データ | 組織内弁護士研究ノート® | 法務部とインハウス弁護士の金貨
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日本経済新聞の月曜版「税・法務」は、多くの法務部門や弁護士の方がご覧になっていると思います。今週の注目記事を取り上げながら、皆さまのご意見も伺えれば幸いです。学びの途中ではありますが、情報交換の場として活用いただければと思います。

今週の注目記事

法律書デジタル図書館を提訴 出版社や著者が「著作権侵害」主張

掲載紙:日本経済新聞 | 掲載日:2025年10月15日丨注目記事を執筆された記者:署名なし

記事によれば、商事法務と第一法規、法学者4人(中山信弘名誉教授ら)が、一般社団法人「法律書デジタル図書館」を著作権侵害で東京地裁に訴えを提起し、差止め等を求めています。23年改正著作権法(6月施行)の図書館資料デジタル送信を「営利目的で悪用」と主張しています。同館は会員制で蔵書2万冊超、年会費約13万円、1回あたり手数料250円でPDFを即時送付。既存許諾型サービスと競合し権利者利益を害するとの出版社側に対し、運営側は「適法」として継続を表明しています。

組織内弁護士の視点

すごいバトルが起こっている⋯と思って調べてみたら、2025年10月15日付 株式会社有斐閣・第一法規株式会社・株式会社商事法務「法律書デジタル図書館に対する著作権及び出版権侵害行為の差止等請求訴訟の提起に関するお知らせ」を読むと、これはもう、出版社様のおっしゃるとおりだなと思いました(当初、あれ一般社団法人なのに⋯と思ったら単に営利企業の「事業」を切り出しただけで、経緯はよろしくありません)。

① 被告及び被告代表者について 高田氏は、被告の設立の前から、株式会社サピエンス(本社:東京都千代田区神田須田町二丁目23番1号 天翔ビル秋葉原万世橋908号室、以下「サピエンス社」といいます。)の代表者を務め、同社は、「LION BOLT」という名称で、被告が行う法律書・法律雑誌の所在検索サービスと酷似したサービスを提供しています。高田氏は、2023年8月、サピエンス社からの資金拠出により、一般社団法人である被告を設立しました。被告は、2025年2月20日に会員制の「クラウド図書館」と自称する被告図書館を開館し、同日、法律書・法律雑誌の所在検索サービス及び公衆送信サービスの提供を開始しました。② 旧サービス計画に対する警告書の送付から提訴に至るまで 被告図書館の開館に1年ほど先立つ、2024年4月、高田氏は、著作権者の許諾を得ることなく、サピエンス社が被告とシステムを連携させて大量の法律書・法律雑誌を公衆送信するサービスを、「LION BOLT Prime」と称して計画し(以下「旧サービス計画」といいます。)、 「LION BOLT」利用者に対して営業活動を実施しておりました。同年5月、この事実を把握した有斐閣及び商事法務が、高田氏に対し、旧サービス計画の詳細を確認しました。高田氏は、前述の「図書館等公衆送信制度」の要件を充足していると主張しましたが、有斐閣及び商事法務は、著作権法の専門家のご助言をいただきながら検討した結果、旧サービス計画は、図書館の公共的使命とはかけ離れた、サピエンス社及び被告の営利目的であること等から同制度の適用がない違法なものであると判断しました。そこで、両社が事務局となって、法律書・法律雑誌の出版社が共同して対応に当たり、同年7月から8月にかけて、有斐閣を代表とする32社(当社らを含み、最終的に32社)がサピエンス社に対して2度にわたって警告を行い、旧サービスの中止を求めました。これに対し、同年8月19日、高田氏は旧サービス計画の中止を書面で表明しました。ところが、高田氏は、2025年2月18日、サピエンス社が関与せずに被告単独で実施するサービスであると銘打って、32社に突如一方的に通告の上、同月20日に被告図書館を開館し、著作権者の許諾を得ることなく大量の法律書・法律雑誌の公衆送信サービスを開始しました。

ということで、あとは判決を粛々と待つことになるだろうと思う次第です。出版社側のお怒りはごもっともでございます。加えて、リーガルテックの分野でリーガルライブラリ事業を行っている企業様もいらっしゃいます。出版社様に足しげく通い、ようやく長年かけて信頼関係を築き、書籍のライセンスをいただいている企業様もいる中で、一般社団法人側のご主張にはかなりご無理があるのではないかと考えております。

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(了)

※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。なお、誤植、ご意見やご質問などがございましたらお知らせいただければ幸甚です(メールフォーム)。