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テック企業におけるグレーゾーンとの向き合い方丨精読『Workplace Strategies for Technology Lawyers』[8/36]【木曜/土曜 掲載】

問題の所在+ソリューション[各連載回に共通]

Problem Statement (問題の所在) 私は、現在、『リーガルリスクマネジメントの教科書』の姉妹編となる「新しい書籍」を心を込めて執筆しています。新著は、組織内弁護士として、法務部門の中で、少ない摩擦で充実した活躍をするための様々な私の失敗と学びを透明性をもってまとめた本になります。法律の専門家から組織内弁護士への「transformation」には多様な支援が不可欠です

ソリューション ある日、Amazonの書籍の中に、海外の組織内弁護士に対して同じ視点からTip(ヒント)を提供している書籍に出会いました。本書は「Do you want to stand out as a successful in-house counsel?」と問いかけます。海外と日本の違いはあるかもしれませんが、海外で100以上の高レビューを獲得している書籍を一緒に精読していきましょう。

想定する読者 法務部門の方(とりわけ組織内弁護士)、外部弁護士の方、ロースクール生・司法修習生の方

テック企業におけるグレーゾーンとの向き合い方

講義ノート

本書の筆者は、テック企業の法務では、想定外の新技術やビジネスモデルに既存のルールを適用する場面が多く、法律上の「グレーゾーン」が生じやすいと指摘しています。

その上で、個人の見解として、明確なガイドラインがない状況でも、企業は自らの見解を整理したうえで柔軟に対応する必要があり、必要に応じて規制当局への相談も選択肢に含めながら、合理的な根拠をもとに意思決定を行い、見解を文書化しておくことを主張します。

私個人の考え⋯皆様はどう思われますか?

私個人の考えとしては、このグレーゾーンに対しては一概に「攻める」か「避ける」かを決めつけられず、状況次第で多角的に判断する必要があると感じています。皆様はどう思われますか?

私は中立です。

たとえば、まだ地図に詳しい道が描かれていない山道を想像してみてください。未知のルートを切り開けば、通常の登山ルートでは味わえない絶景や最短ルートを発見できる可能性があります。一方で、道がはっきりしないぶん、予期せぬ落石や崖などのリスクも存在します。グレーゾーンを積極的に利用すれば大きな恩恵を得られるかもしれませんが、具体的なガイドラインや事前準備を怠れば、後から深刻なトラブルに直面する可能性があるのです。

こうした両面を考慮すると、グレーゾーンは必ずしも「積極的に活用すべき」でも「慎重に避けるべき」でもなく、事業の成長と法的リスクのバランスをいかに保つかが重要と言えそうです。

自社で採用する解釈や方針を整理し、必要に応じてステークホルダーや当局と対話を図りながら進めることで、トラブルを未然に防ぎつつ、柔軟な事業展開を目指せるのではないでしょうか。

ここまで読んでいただいた方は、グレーゾーンへの対応について、どのようにお考えですか。ぜひご意見をお聞かせください。

Workplace Strategies for Technology Lawyers ―原典の推薦―

David Sclar. (2021). Workplace Strategies for Technology Lawyers.

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(了)

※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。なお、誤植、ご意見やご質問などがございましたらお知らせいただければ幸甚です(メールフォーム)。

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