新年のご挨拶と大切なお知らせ(こちら)

2024年の最も心に残ったAirbnb法務の教え(2/3)丨リーガルリスクマネジメントの教科書丨メモしておきたい言葉だち

第2回:責める文化から学びの文化へのシフト

1. はじめに

多くの職場で、上司や部下の間に存在する「責める文化」は、チーム全体の生産性や士気を著しく低下させる要因となっています。

特に、法務の分野では、ミスや失敗が大きな影響を及ぼすため、問題発生時に「誰が悪いか」を追求する傾向が強くなりがちです。しかし、上司として重要なのは、責めることではなく、そこから何を学び、どのように成長するかという視点です。

今回は、私の上司が強調した「責める文化」から「学びの文化」へのシフトについて、法務部門や管理職に求められるリーダーシップについてお話しします。

2. 責める文化の問題点

責める文化は、問題発生時に「誰の責任か」を追及することで成り立っています。これは一見すると問題解決に向けた行動のように見えますが、実際には以下のような弊害があります。

  • 防御的な態度を助長: 部下はミスを報告することを恐れ、情報が隠蔽される可能性が高まります。これにより、法務部門であればコンプライアンス違反が見過ごされるなど、リスクが拡大します。
  • 成長の機会を喪失: 責任を追及することにより、部下は自己防衛的になり、ミスから学ぶ機会を失います。結果として、同じ問題が繰り返されるリスクが高まります。
  • チームのモラル低下: 責める文化が蔓延すると、チーム全体の士気が低下し、エンゲージメントが損なわれます。これにより、長期的にはパフォーマンスが低下し、優秀な人材の離職にも繋がります。

法務のリーダーとして、私たちは責める文化を排除し、学びの文化を促進することが求められます。

3. 学びの文化を育む方法

「学びの文化」を育むためには、上司としての具体的な行動が必要です。以下は、私の上司が実践している方法です。

  1. エンド・ステンスの活用: エンド・ステンスとは、「Aも正しいが、Bも正しい」という二つの異なる視点を同時に尊重し、両者を統合して考える方法です。法務の管理職として、部下の意見を尊重しつつ、上司の見解を組み合わせることで、より建設的な解決策を導き出すことができます。
  2. 問題を共有し、解決策を共に考える: 上司として、ミスが発生した際には部下を責めるのではなく、その背景や原因を共に探り、解決策を一緒に考える姿勢を持つことが重要です。これにより、部下は自信を持って問題に向き合い、次に同じような問題が発生しないよう自己成長を図ることができます。
  3. フィードバックを「責める」ではなく「育てる」に変える: フィードバックは、部下を成長させるための貴重な機会です。管理職として、部下の行動や結果について具体的な例を挙げながら、どのように改善できるか、またどのように成長できるかを明確に伝えることが求められます。

4. 責めることなく学びを促進する具体的なアプローチ

学びの文化を実践するために、次の具体的なアプローチを取り入れることが推奨されます。

  • ミスの種類を認識する: ミスには「スロッピーミス」や「ハイステイクスミス」など学びの機会が少ないものもあれば、「アハーミス」や「ストレッチミス」のような学びの機会が多いものもあります。これらを区別し、学びの機会が豊富なミスについては、積極的に振り返りを行い、改善策をチーム全体で共有しましょう。
  • 失敗をチーム全体の財産に変える: 一人のミスを個人の問題として捉えるのではなく、チーム全体の改善策として活用することが重要です。定期的な振り返り会議を開催し、全員で学びを共有する文化を醸成することが、学びの文化を推進する一歩となります。

5. おわりに

「責める文化」から「学びの文化」へのシフトは、法務部門や管理職にとって欠かせないリーダーシップの要素です。上司として、部下の成長を支援し、建設的な対話を促進することで、チーム全体のパフォーマンスを飛躍的に向上させることができます。

次回(2025年の最初の月曜日)は「成長マインドセットと失敗から学ぶ文化の推進」をテーマに、挑戦と失敗をどのように受け入れ、成長に繋げるかについて詳しくお話しします。引き続き、リーダーシップ論を深掘りしていきますので、ぜひお楽しみに。

2. 別室「お悩み相談箱」も受付中(投稿は以下から受け付けております)

※お寄せいただいた大切なご相談にはできるかぎり目を通しております。なお、法律相談は承っておりませんので、法律相談先のご相談は最寄りの法テラスまで、お願い致します。

[関連記事]

[リーガルリスクマネジメントの教科書とは?]

リーガルリスクマネジメントの教科書』(日本加除出版)は、2023年に出版された教科書です。リーガルリスクマネジメントという臨床法務技術を独学で学んでいただけるよう、心をこめて作成いたしました。きっと喜んでいただけると思います。

渡部友一郎『攻めの法務 成長を叶える リーガルリスクマネジメントの教科書』(日本加除出版、2023)

***

ご相談・講演のご依頼などはこちらからご連絡を賜れますと幸いです。


(了)

※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。なお、誤植、ご意見やご質問などがございましたらお知らせいただければ幸甚です(メールフォーム)。

渡部推薦の本丨足りない、は補えばいい