“鏡の法務”―依頼者の目から見た法務部?「契約書の過度な修正要求:ビジネスのスピード感を奪うリーガルの壁」(2/4)丨リーガルリスクマネジメントの教科書

「鏡にうつったあなたのコミュニケーションは?」「クライアントは選択肢がないから我慢しているだけではありませんか?」― 今回のシリーズは、耳が痛いかもしれません(私も読むと大なり小なり絶対にないとは言えず反省しきりです)。ここでは、事業部門のAさんになりきって、弁護士・法務部門Bさんとのやりとりを見て、私含め普段のコミュニケーションを一緒に自省・改善する修行コーナーです。

頼者・事業部門に寄り添う「最高のサービス」を提供する弁護士・法務部を一緒に少しずつ目指してまいりましょう🤝 Happy to helpです。

契約書の過度な修正要求:ビジネスのスピード感を奪うリーガルの壁

企業間の取引で重要な契約書のレビュー。事業部門としてはスピード感を持って進めたいところですが、法務部門とのやり取りがどれだけ大きな壁となるか、ご存じの方も多いでしょう。今回は、そんなリーガル部門と事業部門のリアルなやり取りを描いたシナリオです。

登場人物

  • 事業部門 (Aさん): 新規パートナーシップ契約の担当者。ビジネスを早急に進めたいという強い意志を持っている。
  • リーガル部門 (Bさん): 契約のリスクを最小限に抑えることを最優先する冷徹な法務担当者。

会話の流れ

Aさん(事業部門):
「Bさん、お疲れ様です。新規のパートナー企業との契約書なんですが、先方もこの内容でOKと言ってますので、あとはリーガルチェックをお願いしたいです。急ぎの案件なので、なるべく早くレビューを終えてもらえると助かります!」

Bさん(リーガル部門):
「契約書はざっと見ましたが、これはかなり修正が必要ですね。特に第3条と第5条、責任の範囲と損害賠償の項目はリスクが大きすぎます。このままではとても承認できません。」

Aさん:
「そうですか…。ただ、先方との交渉では、これが落とし所だと合意してるんです。もし可能なら、リスクを少し緩和する修正案を提案していただけませんか?それで先方に再度調整を図ることは可能だと思いますので。」

Bさん:
「いや、リスクが高いまま進めることは法務として認められません。全てのリスクが明確に排除されていない限り、こちらの求める条項に修正するのが条件です。特に、賠償責任を負うリスクはゼロにする必要があります。」

Aさん:
「でも、これだけ厳しい修正を要求すると、先方が契約を見直す可能性もあります。今のタイミングで契約が止まると、ビジネスが大きなダメージを受けるリスクも考えなければいけません。何とかもう少し柔軟に…」

Bさん(冷徹に):
「申し訳ありませんが、リスクを負う契約は絶対に許可できません。リスクを取ることが許されるのは事業部ではなく、法務が責任を負わないといけない部分です。もしこの契約がダメになるなら、それは事業部の責任です。」

Aさん(心の声):
(どうしてこうなるんだ…こちらはリスクを理解した上で進めたいのに、法務はただ「ダメ」としか言わない。この調子じゃ先方も愛想を尽かしてしまう。結局、契約をまとめることができなければ、こっちのせいだって言われるんだろう…。悔しい…)

Aさん(諦めの気持ちを抑えながら):
「わかりました…。先方にはもう一度交渉してみますが、これ以上無理な要求を続けると契約そのものが成立しないかもしれません。それでも、最善を尽くします。」


結論:
事業部門はリーガル部門からの過度な修正要求により、契約交渉が難航。最終的に、先方が契約を見直し、交渉は破談。事業部門は貴重なビジネスチャンスを失い、悔しさと無力感に打ちひしがれる。なお、法務担当のBさんは悪いことをしたとは1つもおもっていない。

まとめ

法務部門の厳格なスタンスが、ビジネスのスピード感と柔軟性を奪うことは少なくありません。もちろんリスク管理は重要ですが、事業部門の意図やビジネスの現実を理解し、より建設的な解決策を見出すことが求められています。法務が「リスクがあります」と言うだけで終わらず、事業と共に歩む姿勢を示すことが、これからの企業成長の鍵となるでしょう。が求められています。事業の現場で、法務がどう見られているのか、今一度考え直してみてはいかがでしょうか?

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[リーガルリスクマネジメントの教科書とは?]

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渡部友一郎『攻めの法務 成長を叶える リーガルリスクマネジメントの教科書』(日本加除出版、2023)

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(了)

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