内田貴 東大名誉教授「弁護士の資格を取って法律事務所を開いたはいいけれどもお客が来ない…飢えるまでその事務所に座っている必要はないのです。普通に会社や役所に就職すればいいだけの話です。」丨リーガルリスクマネジメントの教科書丨メモしておきたい言葉だち

1. 本日のピックアップ

今週は、第二東京弁護士会の機関誌「二弁フロンティア」7月号に掲載された内田貴先生の講演録のお言葉―「弁護士の資格を取って法律事務所を開いたはいいけれどもお客が来ない…飢えるまでその事務所に座っている必要はないのです。普通に会社や役所に就職すればいいだけの話です。」(原文は下記)―を謹んでピックアップしました。

内田貴『リーガル・リテラシーのあり方と法曹養成制度』二弁フロンティア2024年7月号26頁より引用

二弁フロンティアの編集部が、わざわざ講演録末尾に「編集部から」と題する文章を掲載している(掲載にあたり色々と、念の為、敷衍・釈明されている)通り、弁護士のそれぞれの立場におかれましても、色々と考えさせられるご提言であったのではないかと推察しております。

私も、このBlogコーナー通例の「良き言葉」という趣旨ではなく、今回は、企業・官庁にお勤めの方の中には、例えば、『普通に会社や役所に就職すればいいだけ』の部分には、少し違和感を抱かれる方もいるのではないかと思いピックアップいたしました。

皆様はどのようにお感じになりましたでしょうか。

価値観は千差万別であるため、一概に何が正しい、正しくないとは申し上げられませんし、私も公に声高く申し上げるような考えを持ち合わせておりません。

しかしながら、スタートアップを支援したり、企業の中にいるからこそ感じるのは、「営業努力」をしていても外部環境を含め様々な要因で二進も三進もいかず、経営や生活が苦しくなることは誰にでも起きうるということです。スタートアップでメンバー全員が必死になって朝から晩まで営業をしても、大手企業の参入であっという間にボートが転覆してしまうこともございます。個人の自助努力や経営の創意工夫は大切ですが、二進も三進もいかない場合が人間には共通してあことは、どのような議論をするときも忘れてはならないと思います(なお、内田先生が忘れているという非難ではなく、一般論として、難しい議論をする場合、サポートできないステークホルダーについてもリスペクト・共感を示すことが重要という話です)。

また、『普通に会社や役所に就職すればいいだけ』という発言のニュアンスは、講演会でリアルに聞いたわけではないので判断が難しいのですが、「人間、食い扶持というものは探せばあるものだ」という意味かもしれません。実際の状況を考えると、20代の私が弁護士資格を取った際には「法律」の基礎しか素養がなく、会社や官庁が採用してくれたか(正直)自信がありません。また、年齢を重ね、一般的に転職が難しい年齢になったときに競争が激化している中で『普通に会社や役所に就職すればいいだけ』と言われても、現実には難しいと感じることもあるかもしれません。

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<後日更新いたします>

[リーガルリスクマネジメントの教科書とは?]

リーガルリスクマネジメントの教科書』(日本加除出版)は、2023年に出版された教科書です。リーガルリスクマネジメントという臨床法務技術を独学で学んでいただけるよう、心をこめて作成いたしました。きっと喜んでいただけると思います。

渡部友一郎『攻めの法務 成長を叶える リーガルリスクマネジメントの教科書』(日本加除出版、2023)

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(了)

※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。なお、誤植、ご意見やご質問などがございましたらお知らせいただければ幸甚です(メールフォーム)。

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