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【日曜朝連載】良い法律文書(a good writing voice)は、理性の声(a companionable voice of reason)であり読み手に寄り添う丨名著精読!『Legal Writing in Plain English』第21回

問題の所在+ソリューション[各連載回に共通]

Problem Statement (問題の所在)「英文契約書は好きでない」「法律英語が上達しないのはなぜ」「欧米弁護士の思考で英語の法律文書が書けない」― 法律英語のライティングの悩みは日本の法律家に共通します。私も、です。

ソリューション 2022年、Airbnb法務部の研修で、魔法のような体験がありました。名著『Legal Writing in Plain Englishガーナー教授から直接学ぶ機会があったのです。「できなかった」理由がすっと理解できました。そこで、毎週1記事、名著を「分析」し、一緒に(同期やライバル達よりも)法律英語に少しだけ強くなっていきませんか? ― 精読して蓄えていきましょう。

想定する読者 法律家・法務部門・司法修習生/ロースクール学生の皆様

読了により、得られる情報

ガーナー教授の教科書は、まず、「すべての法律文書に共通」する合計20のルールを与えてくれます。20のルールは、わかりやすく「3つの箱」に分類されています。今回の鍵は下記ハイライト部分に関するルールです。

第1部:すべての法律文書における原則
1. 思考の枠組み
2. 文章のフレーズ
3. 言葉の選択

目次 Garner, B. A. (2023). Legal Writing in Plain English, Third Edition: A Text with Exercises. Chicago: University of Chicago Press.

[No.20/計20]良い法律文書(a good writing voice)は、理性の声(a companionable voice of reason)であり読み手に寄り添う

メモ

ガーナー教授は、良い法律文書(a good writing voice)は、理性の声(a companionable voice of reason)であり読み手に寄り添うと主張します。具体的には、「話すことができる形」(speakable)であることが1つの基準となります。

上記を実現するためには:

  • 感情を適切に調整すること
  • 冷静で公平な立場から、具体的で明確な表現を心がけること
  • 特に裁判官に向けて書く場合、論理(rationality)と理性(rationality)に訴えるこ
  • 過度な感情表現(expressions of emotion)や過度な特徴づけ(Overblown characterizations)を拝すること
  • 直接的で誠実な調子(unexcited, assured, firm, courteous, direct, and sincere)を維持すること
  • 読み手が自然に抱く疑問に先回りして答えること
  • 、第一人称(first-person)や第二人称(second-person pronouns)を使い、読み手に直接話しかけるようにすること
  • “And”や”But”、”So”で文を始めること

が、魅力的な文章を書く鍵となります。文章は、人間味を帯び(speaks to them directly)、自然な会話の流れ(a natural style)を文章にもたらします。

ガーナー教授は、良い文章とは、信頼できる(sincere)、正直な(honest)、真実性を持つもの(genuine)であり、読み手に直接訴えかけるものであることを滔々と説きます。

この章が、まさにそのようなガーナー教授の言葉であり、Airbnbで講義を聞く機会があったあの瞬間を思い出します。ぜひ原文に触れていただきたいです。

ガーナー教授の教科書(第3版)―敬意をもって強く推薦―

Garner, B. A. (2023). Legal Writing in Plain English, Third Edition: A Text with Exercises. Chicago: University of Chicago Press.

現在・将来、英文の法律文書を扱う法律家・法務部員の方は必携です(Amazonを見る

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<22回追加予定>

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(了)

※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。なお、誤植、ご意見やご質問などがございましたらお知らせいただければ幸甚です(メールフォーム)。

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