24年4月 社外役員就任のご報告(こちら)

あのさ、ちゃんとメールに書いてるでしょ!丨リーガルリスクマネジメントの教科書みんなの相談室(3)丨営業時間 火曜朝

1. 本日の相談室(火曜日朝のみ営業)

若手の組織内弁護士の方

渡部先生、相談があります。

相談内容 私は、最近法律事務所から企業の法務部に転職しました。入社直後から、上司・他部門とのコミュニケーションで誤解が発生する場面があり、疲れます。きちんと書いてあるのにメールをちゃんと読解していないのではないかということもあります(きちんと書いてあるのだから読んでほしいです)。そのため、イライラしたり、業務の効率が落ちています。

クリアなコミュニケーションを実現し、誤解を減らすためのアドバイスはありますか?何かアドバイスはありませんか?

わたなべ

共感 なるほど!コミュニケーションに誤解が生じた場合、特に法務部門の仕事の場合「訂正」のために奔走したり、誤った認識を持つ関係者に再度正しい情報を提供するなど「後片付け」に時間を取られ、業務の効率が落ちていますよね。業務の効率が落ちるとイライラしたり、期末評定に対する評価も不安になりますし、何よりも、基礎となる信頼感が高まっていないような気もして心がざわざわすることもありますよね。お気持ちは自然なことで誰にも共通することだと思います。

私なりに心を込めた回答 私では力不足かもしれませんが、お困りのことと思いますので、知恵を絞ります。何かお役に立てばよいのですが、盲点を指摘するにあたり書き方が難しいのですが、あなたを非難する意図はありませんのでその前提で読み進めていただけたらです。

  • リーガルリスクマネジメントの臨床法務技術を駆使して、わかりやすく親しみのあるコミュニケーション関係を構築する点については、商事法務での連載「Legal as a Service(リーガルリスクマネジメント実装の教科書)第6回 注文の少ない法務店」において検討した内容とも重なりますので、まず記事をご紹介します。
  • 次に、本来であればお話を伺えれば、より詳細な事実関係がわかるのですが、今回は2つを仮定しています。
  • 第1のケースとして、あなたの提供した「情報」が客観的に(残念ながら意図せず)誤っている場合(ただし、あなたは主観的に正しいと思っている場合)、メールにせよ口頭にせよ、提供された情報を一般人が通常の注意力を持って読むと、貴方が思ったとおりには読めない場合、自然な帰結として「誤解」が生まれます。
    • ただ、ご質問の文面を読む限りでは、あなたとしては客観的に正しい情報を伝えたが、相手側がその通りに理解しなかったケースを想像しています。ですので、次の第2を見てみます。
  • 第2のケースとして、あなたの「伝え方」が(もっと伸びしろがあるため)最相手が「すっと理解できなかった」というケースがあるでしょう。
    • これはあなたのことを申し上げているわけではなく、一般論として、法律家・法務部門のメールは往々にして長文で「相手が知りたいこと」ではなく「自分が言いたいこと」がつらつらと書いてあることがあります。
    • 実際のあなたのメールやコミュニケーションを五感で見ないと難しいのですが、1つの可能性として、「伝えたつもり」の盲点はもしかしたら1%くらいの可能性で存在していないでしょうか?
    • もし私の勝手な推測がかすっていた場合、その対応としては、次の2つの方法をおすすめします。
      • はじめに、あなたが書いたメールについて、上司・同僚からフィードバックをもらいましょう。どこがわかりにくかったのでしょうか?どこが書いたつもりでも読み飛ばされていたのでしょうか?
      • 次に、これが恥ずかしい場合、ChatGPT 4.0を利用して、文章を貼り付けて、「文書の論理構成を再検証して、読み手が理解しやすいように段落を分け、小見出しをつけて、文書をリライトしてください」とお願いしてみてください。あなたの文書よりもきっとわかりやすい論理構成や流れで文書が生成されると思います。このように、上司・他部門とのコミュニケーションの原因は、他のマネージメント・同僚も貴方と同程度に誤解が生じていない場合、あなたの個人的な課題(何か伸びしろがある)である可能性があります。
  • 私も、組織内弁護士になった直後の頃、法律事務所の内部宛の感覚でメールを書いていましたが、誰も全部読んでいなかったでしょう。裁判所や弁護士同士の文書を卒業して、社内のコミュニケーションが上手なマネジメントの分量にまでDistill(絞り込み・削ぎ落とし)、簡潔なメールを作成するトレーニングを日々続けましょう。
  • 誰しも、私も、常に道半ばです! このチャンスはあなたがさらに最高の法務サービスを提供するために必要な試練だと感じております。

教科書該当箇所 渡部友一郎『攻めの法務 成長を叶える リーガルリスクマネジメントの教科書98-105頁(日本加除出版、2023)

2. お悩み相談箱(投稿は以下から受け付けております)

※お寄せいただいた大切なご相談にはできるかぎり目を通しております一方で、すべてのご質問やご相談を掲載したり、個別にご回答できるものではないことをご了承ください。上記ご了解の上でご連絡頂きますようお願いします(メールフォーム)。なお、法律相談は承っておりませんので、法律相談先のご相談は最寄りの法テラスまで、お願い致します。

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<後日更新いたします>

[リーガルリスクマネジメントの教科書とは?]

日米の法務の知恵がここに融合。法律家・法務部門のポテンシャル、総開花。
条文を引くように、誰しもが独学できる「攻めの法務」の基本書、心を込めて、あなたへ。


× リーガルリスクがあるから“NO”
◎ “YES” を実現するため、法務・法律家として伴走します!

企業が成長するために必要な、「攻めの法務――リーガルリスクマネジメント」の方法・プロセスを、マンガと講義で体系的に学習できる。
米国企業AirbnbのLead Counsel・日本法務本部長に就く著者が、自らの知識・経験を注ぎ込んだ、企業法務の新しい「教科書」。

【マンガ編のストーリーで「リーガルリスクマネジメント」のプロセスを追体験!】
〈あらすじ〉
大手法律事務所のアソシエイト弁護士である堤かおりは、指示を受けて業界No.1営業代理店「デンエイ」の法務部に出向。事業部の契約書や提案に対し「リスクがあるから“NO”」と回答する日々を送っていた。そんなある日、アメリカ帰りの弁護士・加古川が法務部にやってきて、かおりの「NO」に待ったをかけるようになり……?

【読者参加型の講義編で「リーガルリスクマネジメント」の実践方法を立体的に解説!】
■BUSINESS LAWYERS主催の「伝説の講義」を再編成!演習問題で、「攻めの法務」を実践レベルに導く。
■「リスクの特定/分析/評価/対応」について、クライアントへの助言方法も含めて解説。
■演習問題では受講者から出た回答例も収録。自分の回答と比較することで、企業法務の初任者・ベテランを問わず、認知のバイアスに気づくことができる。

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経営支援の観点からリーガルリスクをマネジメントするための最良の書といえる
  -名取 勝也 弁護士(アップル、ファーストリテイリング、日本アイ・ビー・エムの元最高法務責任者)
最適解を見出すリーガルリスクマネジメントの神髄を学ぶ渾身の作
 -平野 温郎 教授(東京大学教授)
正解のないワクワクする法務へ
 -羽深 宏樹 氏(京都大学特任教授)
リスクの解像度を上げてチャンスに変える!スタートアップも必携
 -馬田 隆明 氏(東京大学FoundX ディレクター)
まさか、マンガにしてしまうとは! 革新的なリスクテイクの教科書
 -平泉 真理 弁護士(グラクソ・スミスクライン株式会社 法務担当取締役)
新入社員の頃の自分に読ませたい
 -依田 光史 氏(アビームコンサルティング株式会社 執行役員 CLO)
信頼される法務担当者を目指すならば、本書を読んで自分に向き合ってほしい
 -高野 雄市 氏(三井物産株式会社 執行役員 法務部長)
これは、クライアントマネジメントの教科書でもある
 -藤原 総一郎 弁護士(長島・大野・常松法律事務所)
産業育成型弁護士の開拓書
 -藤井 康次郎 弁護士(西村あさひ法律事務所パートナー)
イノベーションに関わるすべてのロイヤーにとって必読の書
 -堀 天子 弁護士(森・濱田松本法律事務所パートナー)
『リーガルリスクがあります』を卒業し、ビジネスと伴走していくための教科書
 -前田 敦利 弁護士(アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー)
マンガで明快! “No”と言わない伴走型企業法務への必読書!
 -白石 和泰 弁護士(TMI 総合法律事務所パートナー)
法務最先端を疑似体験する読者の人材市場価値は向上するだろう
 -西田 章 弁護士(弁護士ヘッドハンター)
企業法務に関わる全ての人必読の法的リスク管理の「バイブル」
 -松尾 剛行 弁護士(桃尾・松尾・難波法律事務所)
法務のマインドセットを学ぶ最良書
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理想と現実の狭間で葛藤する企業法務人材に向けた実務必携の一冊
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あなたの判断で、世界を変えに行こう!
 -瀧 俊雄 氏(株式会社マネーフォワード執行役員CoPA)
イノベーションを起こすには、主人公のような法務パートナーが必要です
 -吉兼 周優 氏(株式会社Azit 代表取締役CEO)
社会の前進を生みだす「イネーブル法務」に生まれ変わること間違いなし
 -門奈 剣平 氏(株式会社カウシェ 代表取締役CEO)
DeNA 時代から「事業部の懐刀」であった戦友の手紙だ
 -大見 周平 氏(株式会社Chompy 代表取締役)

(※順不同:肩書は2023年2月時点:個人の見解です)

https://www.kajo.co.jp/c/book/07/0701/40940000001

(了)

※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。

渡部推薦の本丨足りない、は補えばいい