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弁護士資格を馬鹿にしてくる上司…丨リーガルリスクマネジメントの教科書みんなの相談室(4)丨営業時間 火曜朝

1. 本日の相談室(火曜日朝のみ営業)

若手の組織内弁護士の方

渡部先生、相談があります。

相談内容 今の上司は、昔、司法試験を受験していたようです。弁護士資格がないコンプレックスからか弁護士資格をバカにしたような言動があります。何かアドバイスはありますか?[質問を大幅に修正しております]

わたなべ

共感 まず、あなたのお気持ち自体は、no judgement(価値判断を入れず)で、お辛いものと思います。また、イライラして当然です

  • 膨大な時間をかけて努力を続けて手にした国家資格である弁護士資格を馬鹿にされる(とあなたがお感じになる)言動については、non-acceptableであったと思います。ここは法律相談の場ではないため、ハラスメントではないかという話はさておき、職場では、上司部下の関係であろうと、リスペクトをもって接することは最低限のラインであり、相手が誇りに思っていることを合理的な理由なく「下げる」ことは、弁護士資格であろうとなかろうと、誰しも共通して、嫌な気持ちになると思います。
  • また、あなたのお気持ちや悩みは、おそらく、法務部管理職に弁護士がいない/少ない法務部門において、一定数の弁護士資格を持つ法務部員は、共通して経験したことがあるのではないかと推察しています(透明性を持って言うと私も正直ありました)。
  • 一定の洗練された職能集団や組織(例えば、弁護士有資格者が法務部長をしている法務部門、留学制度があり法務部役職者が米国弁護士資格を持っていて資格の有無がフォーカスされにくい法務部、上司同僚が全員弁護士の法律事務所)では生じないもので、何か、その会社のその法務部のそのポジションに入ったがために生じた災難のように感じる気持ちもわかります。

私なりに心を込めた回答 複雑な質問であるため、あえて、シンプルに回答します。私が心理学学士・認定心理士を取得した際に、最もありがたみを感じた言葉があります。心理学は、書店に並んでいるビジネス本を見ると、まるで相手の心を読み取ったり操ったりするようなイメージもありますが、そうではないのです。

『他人と過去。どちらも変えられない。』

臨床心理学のほかに、心理的アセスメントという専門科目があります。この中では、いわゆる心理検査(心理テスト)やカウンセリング(面談)についても基礎ですが実践的な授業がいくつかあります。心のさまざまな問題を考えたとき、往々にして、我々は「変えられないものを変えよう」とするがためにストレスを溜め込みます

本件でも、『他人と過去。どちらも変えられない。』― まず、上司は他人であって、変えられません

では、変えられるものにフォーカスします。壁が扉になる可能性があり、慎重に多角的に考えていきます。

  1. あなた自身を癒やす(方法:セルフコンパッションのセルフガイド)
  2. あなた自身の考え方を広げてみる(方法:オンラインカウンセリングで新しい見方を探ってみる)
  3. お恥ずかしいですが、管理人が切り抜けた方法を少し踏襲してみる(方法:ひたすら「コト(仕事)」に集中する。良い仕事をすることだけにフォーカスして、雑音は意識外に置く。下記インタビューもご参考になれば幸いです。)
  4. 病む前に、前時代的な法務部や会社にさっさと見切りをつけることも検討し、そのための勉強・準備にフォーカスする(方法:転職)

どのような悩みを抱いていたのでしょうか。

渡部:DeNAに入った直後は、まだ「弁護士、弁護士」していました。法務を変えたい、もっと良いサービスを提供したいという思いを今のようにはうまく形にできず、ポジションも平社員でしたので、チーム全体をどう高めるかという点にまで昇華できませんでした。

インハウス弁護士の方から、法務部での不協和が生じて苦しいという話を聞くこともありますが、どうアドバイスされますか。

状況は人によって異なると思いますが、まずは成果を着実に出していくなかで、弁護士資格の有無に関係なく「◯◯さんは良い仕事をしているよね」と評価してもらえることが大きいと思います。私も似たような道を通って参りました。

当時はまだ資格に頼っていました。

今は「良いリーガルサービスを提供してくれる渡部友一郎さん」と思ってもらえることが一番うれしいです。

たとえば、Airbnbの社内コミュニケーションで「弁護士」って名乗るのは周りを笑ってほぐしたり、はげますときぐらいです。

Airbnb流、事業を前に進める法務の力 リードカウンセル渡部 友一郎氏に聞く

もっとお力になりたいのですが、回答は上記のとおりです。

さらに、本稿では言及しなかったものの私は「上司の方」の気持ちもわかる気がします、きっと、不安が根底にあるのでしょう(しかしあなたに落ち度はなく、リスペクトを欠いた言動は職場環境を向上させるものではなく、弁護士資格と問わず、誰かの過去の努力や状況を馬鹿にすること(特にそれが個人的な憂さ晴らしやコンプレックスなど自分自身の問題である場合)は、現代において、何ら正当化されるものではなく、あなたのお気持ちは正当であることは覚えておいてください)。

他方、もし心に余裕ができたら、コンパッションの気持ちで相手がなぜそういう言動をしてしまうのかという心理にも少しだけ想いをはせつつ、慈しみ、その上で、次のフレーズをいつでも思い出してください―『他人と過去。どちらも変えられない。』―だからこそ、あなたは最高の弁護士・法務部員として自分のサービスを磨くことに集中しましょう

きっと私含め誰かがあなたの頑張りを見ていてくれるはずです。

何回小馬鹿にされても、あなたに内在する「根源的価値」はノーダメージです。忍耐強いあなたは、きっとこの経験もいかして、経営陣・事業部にとって最高のビジネスパートナーになり、将来は、心理的安全性が確保され各メンバーが、資格の有無なんぞに関係なく、このような思いをせずにのびのびとしたamazingな法務チームのリーダーになって輝かれる気がいたします。

ただ、ご無理はなさらず―人生の主人公は他ならぬあなた自身―です。気遣いしている上司ではありません。必要があれば、部門長・人事、そして、外部のリソース、専門職も頼ってください。

教科書該当箇所 渡部友一郎『攻めの法務 成長を叶える リーガルリスクマネジメントの教科書182-185頁(日本加除出版、2023)

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DeNA 時代から「事業部の懐刀」であった戦友の手紙だ
 -大見 周平 氏(株式会社Chompy 代表取締役)

(※順不同:肩書は2023年2月時点:個人の見解です)

https://www.kajo.co.jp/c/book/07/0701/40940000001

(了)

※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。

渡部推薦の本丨足りない、は補えばいい