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???「鏡よ、鏡よ、鏡さん。世界で一番美しいのは誰?」←AIへの指示が悪い?

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弁護士 渡部友一郎

自転車操業中の渡部です。AI(ChatGPT)に助けていただきながら、なんとか日々生き延びております。AIへの指示(プロンプト)が「うまくいった!」と思うときもあれば、逆に「あれ、うまく通じていないな(失敗)」ということもあります。本日はAIへの指示についての若干の考察です。

『白雪姫』― 正確に覚えていない人が多い

昔話「白雪姫」を知っている人は多いが、そのあらすじに関する知識やイメージは人さまざまである。 [略](1)あらすじを「知っている」「だいたい知っている」とする回答の合計は94.3% であった.(3)SD 法による白雪姫とお妃のイメージはヒロイン(善玉)対ヒール(悪玉)となって対照的であった. (4)白雪姫が殺されそうになった年齢の回答は,平均値14.03 歳,最頻値は15 歳,回答百分率でみると15 歳(19.6%),16 歳(17.8%),14 歳(14.1%)と続き3 つの合計で51.5%,グリム版に記載された7 歳と回答した者はわずかに4.9% であった.

大野木裕明「白雪姫の心理的イメージに及ぼすグリム版あるいはディズニー版の影響」仁愛大学研究紀要6巻(2015年)

白雪姫の物語は、グリム童話ではなく、ディズニー版白雪姫が「本筋」となっているとも言われています(グリム童話では、女王は「継母」[中立的な言葉を選ぶと父と再婚した新しい母]ではなく「実母」とされているなどの主要な違いが多数あるとされています)。

しかし、「朧気ながら見えてきたんです、白雪姫のストーリーが。」という私達も、一生覚えている印象的なシーンがあります。それが、冒頭にも引用した次のシーンです。

「鏡よ、鏡よ、鏡さん。世界で一番美しいのは誰?」

「鏡よ、鏡よ、鏡さん。世界で一番美しいのは誰?」

ピュアであった子供の頃の私達は、まだ責任能力もなく、[お話の導入部分であるがゆえに]お妃様(継母)のこの質問に深く疑問を覚えることはありませんでした

ただただ、「白雪姫が一番美しい」という鏡の忖度なしの回答に対して、「そんなこと教えちゃだめ!」と、白雪姫の生命身体に迫る急迫不正の侵害を、ただただ案じるばかりであったと思います。

ちょ、まてよ

しかし、ちょっとまってください。

お妃様は、質問を工夫すれば、もっと適切な回答を入手できたのではないでしょうか。

鏡=AI(ChatGPT) と お妃様=私達ユーザー

自転車操業中の渡部が、AI(ChatGPT)に助けていただきながら、なんとか日々生き延びている中で、ふと、AIへの指示(プロンプト)が「うまくいった!」と思うときもあれば、逆に「あれ、うまく通じていないな(失敗)」という経験から

お妃様は、鏡(AI)に対する、質問(指示・プロンプト)が単に悪かったのではないか?

と思うようになりました。具体的には、ChatGPTから最良の回答を得るための玉石混交の各種「ChatGPTであなたも仕事ができる!」的な書籍を参考に質問を再構成すると:

「鏡よ、鏡よ、鏡さん。世界で一番美しいのは誰?」

では、AIに対して、「役割」や「Context」を付与していないので、次のように質問するのがよかった可能性があります。

「鏡よ、鏡よ、鏡さん。あなたは、私の性格、プライベート及び仕事の状況にとても理解があり、かつ、共感性が非常に高い能力を有しています。この前提で、###以下の私の質問に対して、提案やアドバイスをすぐにすることなく、私の話を聞いて、気持ちを受け止めてください。1回の会話は100文字以内で、短めに話してください。
###質問
私は、自分の美しさに人並み以上の自信がありますが、本当にそうなのか、不安な気持ちでいます。私は世界で一番美しいでしょうか。」

(*)谷口恵子『AI仕事革命 -ChatGPTで仕事を10倍効率化-』のプロンプトを参照した。AIへの指示の基礎を沢山学びたい方には一読の価値があるが、プロンプトを自ら色々とトライされている方には図書館で読めば足りる書籍と存じます、なお、エクセルでプロンプトがダウンロードできる特典がついています

Open AIの有料版モデルの1つのご回答はこちら

素晴らしい答えですね。さらに、AIはこう共感性高く応答します。

お妃様は、このAIの回答を重く受け止め自省できたのであれば、後々、『白雪姫と王子の結婚披露宴の席。王妃は真っ赤に焼けた鉄の靴を履かされ、死ぬまで踊らされる。』こともなく、きっと、書籍よりも幸せな人生を歩まれたことと思います。なお、結婚披露宴で処刑するというのは子供にはショックも大きく、ディズニーでは、稲妻に打たれて崖下に転落して死亡(筆者未確認)し、憲法第36条に定める『拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。』の観点からも、原作よりは穏当になっているところです。

補論丨お妃様はどうしても白雪姫との比較をしたかった

なお、反対説(異なる視座)も十分に検討しておく必要があります。

すなわち、お妃様は、心理的な満足感ではなく、真実「白雪姫よりも美しいか否か」を客観的評価として知りたかったというContext・動機があったという点です(下記はこちらのサイト様から引用)。

倉橋由美子『大人のための残酷物語』ではきちんとした比較をしている。

王様はまもなく若いお妃を迎えました。これがまた目を見張るほど美しい方でしたけれども、大層気品が高い白雪姫がまるで天使の人形のように美しいのを見た時から、心は穏やかではありませんでした。

新しいお妃は秘蔵の魔法の鏡を取り出してかう尋ねました。
「鏡や、教へておくれ。誰がこの国で一番綺麗なの」すると鏡は答えました。
「女王様、一番綺麗なのは女王様です」
「本当ですか。あの白雪姫も綺麗でせう」
「ですが、白雪姫はまだ子供です。女王様とは比較になりません」

それを聞いたお妃は、一度は安心したものの、考えてみればまた不安が募るのでした。


不特定多数との比較では十分納得がいかず、白雪姫という特定の対象との比較を持ち出す心理、そしてたとえ今世界一でも、いつか覆される不安のためには、毎日のように鏡を取り出しては答えを確かめざるにはいられませんでした

ここでは、美しいお妃様の「美しさ」がChallenge(挑戦)されているので、もしかしたら、私はピンとこないのかもしれませんが、「美しさ」が、例えば、ビジネスパーソンであれば、わかり易い例で、「会社での地位(年老いた自分が若手に追い抜かれていく不安)」「名誉(自分が高い名誉をもっていたと思ったら若者に追い抜かれていく不安)」「財産(自らが優位だとおもった財産の大きさが、若者に抜き去られる不安)」などなんでもいいので、自分の「誇り」が脅かされている状況を想像したらよいのかもしれません。

(なお、私は随所で書いているように『お先にどうぞ』のマインドと、自分が大したものではないことを自覚しているので、「Happy to help」と後ろから追いかけている若者に逆に手を貸して自分も一緒に成長を楽しんでいるかもしれません)。

お話をはなれて、お妃様は、AIに私が謹んで現世からオススメしたような「共感してくれる相手」(慰め)ではなく、どうしても、白雪姫という特定の対象との間で自分を比較してしまう状況にあり、これは、同じ人間であれば誰しもに共通する不安なのかな、だからこそ、鏡に対し、毎日毎日「鏡よ、鏡よ、鏡さん。世界で一番美しいのは誰?」と聞くのは無理からぬこと・やむを得なかった、としみじみ共感を覚えます。

皆様はどう思われますか?

まとめ

既に巷の書籍で言い尽くされているように、AIには役割をきちんと与えよう。

最後までご高覧いただき、ありがとうございました。

おまけ

そうですよね。「美しさは主観的なもので、人それぞれの価値観や見方によって異なります。」にお妃様が納得されていたら、王子様も小人も出てこないですよね。おっしゃるとおりです。

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(了)

※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。なお、誤植、ご意見やご質問などがございましたらお知らせいただければ幸甚です(メールフォーム)。

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