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<新連載>テック企業の法務に求められる問題解決力とは?丨精読『Workplace Strategies for Technology Lawyers』[1/36]【木曜/土曜 掲載】

問題の所在+ソリューション[各連載回に共通]

Problem Statement (問題の所在) 私は、現在、『リーガルリスクマネジメントの教科書』の姉妹編となる「新しい書籍」を心を込めて執筆しています。新著は、組織内弁護士として、法務部門の中で、少ない摩擦で充実した活躍をするための様々な私の失敗と学びを透明性をもってまとめた本になります。法律の専門家から組織内弁護士への「transformation」には多様な支援が不可欠です

ソリューション ある日、Amazonの書籍の中に、海外の組織内弁護士に対して同じ視点からTip(ヒント)を提供している書籍に出会いました。本書は「Do you want to stand out as a successful in-house counsel?」と問いかけます。海外と日本の違いはあるかもしれませんが、海外で100以上の高レビューを獲得している書籍を一緒に精読していきましょう。

想定する読者 法務部門の方(とりわけ組織内弁護士)、外部弁護士の方、ロースクール生・司法修習生の方

テック企業の法務に求められる問題解決力とは?

講義ノート

本書の筆者は、テック企業で働く法務担当者は、単に法的リスクや問題点(イシュースポッティング)を指摘するだけではなく、解決策を提示することが求められていると指摘します。

例えば、サービスや製品の開発において法律上のリスクを発見した際、契約書や取引形態の工夫、情報交換の方法変更、ビジネス上の優先順位付け(トリアージ)など、多角的な解決策や代替案を示す必要があると述べています。

本書の筆者は、社内に法務担当者が少ないことやビジネスの変化スピードが速いことなどに起因し、法務としては素早くかつ幅広い領域の問題を発見・検討するだけでなく、事業を前進させるための建設的な意見やアイデアを提示することが重要とされるからであると分析します。

私個人の考え⋯皆様はどう思われますか?

個人的には「賛成」です。

法務が単にリスクを洗い出すだけでなく、いかに前向きな提案を示すかは企業の成長スピードに大きく影響すると考えられています。問題があると分かった時にただやめるか進めるかを判断するのではなく、リスクを適切にコントロールしながらビジネスを前進させる案を用意することで、社内外での信頼が高まりやすくなります。

たしかに、法務の業務負荷が増すと懸念する声もありますが、ビジネスへの貢献が明確であれば周囲からのサポートやリソース獲得につながる可能性が高まり、結果として法務部門の体制強化にもつながるでしょう。責任範囲のあいまいさを懸念する声もありますが、実務上はリスクや手段を具体的に共有し続けることで、誰がどの範囲まで判断を担うのかが把握しやすくなるともいわれています。

私自身、同様の外資系テクノロジー企業で働く組織内弁護士とのやり取りを通じて、問題点の指摘だけではなく解決策まで提示できる人が高く評価されていると感じます。Airbnbのように事業が急拡大する企業ほど、学問的な評論だけではなく現場で役に立つアイデアを求めているからです。

ここまで読んでいただいた方は、法務はリスク管理と問題解決のどちらに重点を置くのがよいと思われますか。ぜひご意見をお聞かせください。

Workplace Strategies for Technology Lawyers ―原典の推薦―

David Sclar. (2021). Workplace Strategies for Technology Lawyers.

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(了)

※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。なお、誤植、ご意見やご質問などがございましたらお知らせいただければ幸甚です(メールフォーム)。

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