1. 本日のピックアップ
第一法規様の「会社法務A2Z 2024年10月号」からピックアップ。
「コンプライアンス部門の立場を強くするには…『人事』で示す…コンプライアンス部門長(は)最低でも執行役員クラスとする」―を謹んでピックアップしました。
- 樋口教授の指摘は、経営者がいくらコンプライアンス重視を強調しても、従業員はそれを「建前」と捉え、本音では異なる意図があると感じてしまう、という点に本質的な問題を指摘しています。これは、組織文化や従業員の認識と経営者のメッセージとの間に大きなギャップが存在することを意味しており、組織全体のコンプライアンス意識を高めるためには、単なる言葉ではなく、行動によってその「本気度」を示すことが必要であるという示唆です。
- 樋口教授の主張は、組織全体のコンプライアンス意識を向上させるために「人事」が果たす重要な役割を強調しており、これは非常に的を射ています。なぜなら、コンプライアンスの意識は単に研修や講義を行うだけでは定着せず、トップマネジメントのコミットメントを具体的な形で示す必要があるからです。特に、コンプライアンス部門のトップを執行役員クラスに置くことは、組織におけるコンプライアンスの優先度を明確にし、従業員に対しても「コンプライアンスが最優先事項である」というメッセージを強く発信することになります。これは、コンプライアンス部門のリーダーシップを強化し、その権限を拡大することにつながり、組織内でのコンプライアンス遵守の実効性を高めるのに非常に有効です。
- 一方で、社内で起こり得る以下のような反論が考えられます。「コンプライアンス部門のトップを執行役員クラスに据えることで、組織内での存在感は高まるかもしれないが、実際に組織の業績や競争力にどのようなプラスの影響を与えるかが不明確である。むしろ、過度なコンプライアンス重視が、ビジネスの迅速な意思決定や柔軟な対応を妨げる可能性があるのではないか。」
- これに対して、「コンプライアンス重視がビジネスの成長を妨げる」という見方は、短期的な視点に過ぎず、むしろ長期的な視点から見ると、組織の持続的な成長と競争力の強化に大きく寄与するという点を挙げることができます。コンプライアンス違反が生じた場合、その影響は非常に大きく、企業のブランドや信用、ひいては株価にも甚大な影響を及ぼすことがあります。これは、昨今の不正会計やデータ改ざん、ハラスメントなどの不祥事が企業にもたらす損害を見れば明らかです。
樋口教授の主張は、組織全体の健全な成長と信頼の確立のために非常に有意義なものであり、経営者がメッセージを発するという危機管理の専門家からのよくある提言に加えて、人事を持って重みをもたせるという点が新鮮でした。
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[リーガルリスクマネジメントの教科書とは?]
『リーガルリスクマネジメントの教科書』(日本加除出版)は、2023年に出版された教科書です。リーガルリスクマネジメントという臨床法務技術を独学で学んでいただけるよう、心をこめて作成いたしました。きっと喜んでいただけると思います。
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(了)
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