リスク回避を超えるアプローチ:法務がビジネスを支える新たな役割
法務部門や弁護士が日々直面する課題の一つに、「リスクがあります、終わり」と言ってしまうことがあります。これは決して間違いではありませんが、それだけではビジネスを支える役割としては不十分です。法務がビジネスの成長を支えるために必要なのは、リスク回避の先にあるアプローチを提示することです。
この記事では、実際の経験を通じて得た「リスクを超えて進む法務のアプローチ」について紹介し、どのようにビジネスをサポートできるかを考えていきます。
リスクを指摘するだけでは不十分:クライアントの期待を超えて
かつて、私はあるクライアント企業の新規プロジェクトの法務アドバイザーとして関わる機会がありました。プロジェクトの初期段階で、私は関連する法律のリスクを洗い出し、詳細なリスク分析を行いました。しかし、結論として「法的なリスクがあるため、この方法では進めない方が良い」というものでした。
クライアントは失望した様子で、「それでは、どうすればいいのか?」と尋ねました。この時、私は気づきました。クライアントが求めているのは、リスクがあることの指摘だけではなく、どうすればリスクを管理しながらビジネスを進められるのかという「次のステップ」だったのです。
具体的なソリューション提案への転換
この気づきをきっかけに、私はクライアントの視点に立ち、リスクを回避するだけでなく、どうすればリスクを受け入れながらも前進できるのかを模索しました。具体的なソリューションとして、以下のようなアプローチを提案しました。
- 代替案の提示: 現行のプランでは法的リスクが大きい場合、リスクの少ない代替案を複数提示し、選択肢を広げる。
- リスク低減策の具体化: リスクを減少させるための具体的な行動、たとえば契約内容の修正やコンプライアンス体制の強化などを提案する。
- 他社事例の紹介: 同様のリスクに対して他社がどのように対応したのか、実例をもとにアプローチを示すことで、実行可能なイメージを持たせる。
このような具体的な提案により、クライアントは「単にリスクを避ける」だけでなく、「どう進めるか」という視点で考えられるようになりました。最終的にプロジェクトはリスクを最小限に抑えつつ進行し、成功を収めることができました。
法務の新たな役割:ビジネスの成長を支援するパートナー
この経験を通して学んだことは、法務部門や弁護士は単なるリスク管理者ではなく、ビジネスのパートナーとして機能するべきだということです。リスク回避を超え、どうすればリスクを取れるのか、その具体的な道筋を示すことで、クライアントや事業部門の信頼を得ることができます。
ビジネスのスピードが増し、競争が激化する現代において、法務の役割も進化する必要があります。リスクを指摘するだけでなく、そのリスクとどう向き合い、進むべきかを示す姿勢こそが、法務部門の新しい価値を創造します。
(つづく)
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