リーガルリスクマネジメントを実践し、まだまだ油断すると私達の周りにあふれる『◯◯法に抵触するリスクがあります(完)』というinformed decisionに役立たない法務の助言。
これに対して、彼の悩み抜いた末に生み出された法的助言は、素晴らしい輝きを放っていました。クライアントは「貴方(先生)にお願いしてよかった!」そう感じているはずです。
しかし、彼との会話で気がついたことがあります。
『リーガルリスクマネジメントに基づく助言』に自信が持てないとき、誰に相談したらよいのでしょうか?
会社であれば、自信があってもなくても上司、さらに法務部長が、リーガルリスクマネジメントによって分析された回答案にフィードバックをくれます(*)。
私の場合も、シンガポール人の上司・アジア太平洋地域の法務部門の同僚とのDiscussionでアドバイスが磨かれていくことを感じます(pushing boundariesとグイグイと現実のリスクを見極めさせられるので、つらい作業ではあります)。
リーガルリスクマネジメントの教科書に対するフィードバックとして『よくわかってない若手には危険である』というコメントを見たことがあり、なるほど、そのように感じる方もいるのかと思うと同時に、少し考えが正確に伝わっていないなと思いました。と申しますのは、拙著で述べている通り、『リーガルリスクマネジメント』はコミュニケーションを含む「ツール」「枠組み」であり、各弁護士・各法務部員の人間として必ず持つ認知バイアスの歪みを是正するために客観的フィードバックを得る長所があります。この方の指摘としては、リーガルリスクマネジメントは、ガーディアンとしての法務意識が乏しい若手には「事業部に迎合する」おそれを内包する短所がある、というご意見のようでした。しかし、このような抽象的リスクは「How to use」の問題であって、チームである上司や法務部長がプロダクトを見てあげようよという話です。若手が1人法務であっても、外部法律事務所に自分の分析結果を示し議論をすれば良いと考えます。
では、自分自身が、外部法律事務所や上司に聞くことができない法律事務所の責任者だったらどうすればよいのでしょうか?
先輩や友人にリーガルリスクマネジメントの枠組みに従って導いた答えを説明してみてはいかがでしょうか。
私も後輩の話を伺い、1つ1つ後押しするようにともに考え、「すごく正当な不安だよ」「そして、不安と戦って出されたこのアドバイスの理論立てはとても正確で素晴らしいよ」と声をかけて差し上げました。
もしリーガルリスクマネジメントのアセスメントに自信がもてないとき、そのときは、コミュニケーションツールという原点に立ち返り、周りの方と相談してみてください。もし誰もいなければ、どうぞ私に遠慮なくお知らせください。Happy to helpです。
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ご相談・講演のご依頼などはこちらからご連絡を賜れますと幸いです。
(了)
※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。なお、誤植、ご意見やご質問などがございましたらお知らせいただければ幸甚です(メールフォーム)。
私の信条の1つに『後輩は宝物』そして『Happy to help』があります。
東大ロースクールの後輩で、四大法律事務所から独立して個人事務所としてスタートアップを支えている素晴らしい弁護士がいます。彼から連絡があり、久しぶりにZoomをしました。