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紛争知能(CIQ)丨あちこちで対立する”弁護士先生”or”法務様”に欠如する最新の能力とは?[2/3]丨HBR2025年7-8月号の掲載論文

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「勉強時間なんて、忙しすぎて確保できない」と悩む方は多いものです。私は30代前半に他責の姿勢を改め、早朝学習に活路を見いだしました。現在も毎朝4時台に起床し、机に向かっております。この場では、英語版Harvard Business Review(HBR)最新号に掲載された論文をゆっくり読み、講演や執筆で活用できそうなものを備忘録としてまとめています。事業部を支える法務部や組織内弁護士だからこそ、毎週火曜日と金曜日にご一緒に専門外の最新知見に触れてまいりましょう。なお、これは私的な備忘録であるため、内容に誤りが含まれる可能性がございます。原文をお手元でご確認の上、ご検討いただければ幸いです。

(*)英語力が乏しいためノロノロとテクノロジーの力を借りて整理しています。学びがある雑誌で、私もファンの1人です。よろしければ、HBR定期購読(定期購読サイト)をご検討ください。

一緒に学ぶ論文はこちら

Peter T. Coleman (2025). The Conflict-Intelligent Leader, In these turbulent times learning how to manage disputes is a must, Harvard Business Review, 103(4), 46-55.

全体像丨わかりやすくまとめてみる

<わかりやすくまとめてみる>
本論文をわかりやすくまとめると、社内の対立は「なくす」より「操縦する」時代という考えが繰り返し説明されています。「紛争知能/ICQ」(後述)は、本論文では多様な側面から分析されており、一言でストーリーには例えがたかったのですが、その操縦術をまとめると下記のとおりです(多分)。
└ 🛣️「渋滞の交通管制」社内の分極化は交通渋滞のように放置すると全体の流れを止めます。紛争知能は信号機と誘導路を整え、流れを回復させる発想です。
└🪞「運転の4つの基本」ミラー確認は自己認識、同乗者との会話は社会的スキル、路面状況に合わせるのは状況適応、ナビで全体最適を見るのはシステム思考です。これら4点が高いほど安全に目的地へ到達できます。
└ 🧯「防災訓練は平時にやる」火事の最初の48時間が肝心なように、衝突が起きる前から関係者把握や連絡経路、合意の土台を整えるほど初動が強くなります。
└ 🤝「小さな共同作業の積み上げ」懇親より共同の小プロジェクトで信頼を作る方が効きます。小さな成功が「次も一緒に」を生み、緊張時のクッションになります。
└ ⚖️「定跡と即興の将棋」譲れないラインは明確にしつつ、着地点は創造的に探ります。表では原則を守り、裏では解き方を柔軟に増やす姿勢が鍵です。
└ 🩺「同じ薬は効かない」利害の対立とアイデンティティの衝突では処方が異なります。シャトル交渉や多層の関与など、症状に合わせて打ち手を替えます。
└ 🗺️「地図の縮尺を変える」目の前の部署間対立だけでなく、インセンティブやサプライ網など上流の構造を描き出すと、根治の手が見えてきます。
└ 🌳「木を植える経営」倫理基準や対話の場、異論を受け止める仕組みを先に作ると、担当者が替わっても和平のインフラが働き続けます。
└ 🌬️「追い風が吹いたら帆を上げる」偶然の出会いや非公式の対話、共通の関心ごとが突破口になります。チャンスを見逃さず素早く形にします。
└ 🧩「揉め事を学習資産に変える工場」安全に異論を言える場を日常化し、建設的な衝突の成功例を称えると、行動が鏡のように全社へ広がります。対立は燃料にもなります。

まとめてみたものの、あまり自信がないので、本論文を早速3回にわけて見ていきましょう。

個別丨本日のポイント

本論文は、次に、「紛争知能」に関して、高CIQリーダーの7原則(外交と経営の実証)を説明します。7原則の詳細は、様々な外交における紛争解決の事例をベースとして構成されており、(私が当該外交事例や紛争について十分語れる知識がないため、恐れ入りますが、特にこの部分は)原典を御覧ください。

  1. 「Lay the Groundwork(土台を築く)」:対立が表面化する前に、関係者の特定、連絡経路の整備、信頼醸成、基本原則の共有を進めることで、交渉の場を安全かつ生産的に設計するアプローチである。初動の48時間と最初の一手が以後の関係性と結末を規定するため、小さな合意を文書化して積み上げることを重視する。
  2. 「Grow Rapport(関係資本を育てる)」:単に衝突を止めるのではなく、協働を生む「ポジティブ・ピース」を意図的に設計する原則である。共同プロジェクトや信頼醸成措置を組み込み、ポジティブな相互作用の比率を高めて、将来の緊張を緩衝する関係性を育てる。
  3. 「Balance Discipline with Creativity(規律と創造の両立)」:譲れない原則や一線(レッドライン)を明確に保ちながら、着地点は柔軟かつ創造的に模索する二刀流である。公には価値と基準を堅持しつつ、非公開では選択肢を広げ、包み替えや組み合わせで互恵的解を編成する。
  4. 「Master Adaptivity(状況適応を極める)」:対立の性質や文化、力学に応じて介入様式を切り替える能力である。シャトル型、マルチトラック、対話の安全回廊など多様なツールを持ち、いつ踏み込み、いつ身を引き、何を調整するかを文脈に合わせて選択する。
  5. 「Leverage the Broader Context(広域文脈を梃子にする)」:当事者間の対立を超え、制度・地域・市場インセンティブなど上流のシステム要因を可視化して介入点を見出す考え方である。二者間で行き詰まれば多者間に開き、実務的論点の分割や順序づけ、システム・マッピングで再構成する。
  6. 「Aim for Generational Peace(世代単位の平和を志向する)」:短期の停戦ではなく、規範・制度・人材ネットワークといった「平和のインフラ」を育て、数10年のスパンで持続可能な和解を設計する原則である。当事者交代や環境変化があっても機能し続ける枠組みと学習メカニズムに投資する。
  7. 「Be Opportunistic(機会主義をいかす)」:偶発的な転機や非公式チャネル、情動の変曲点、意外な共通基盤を敏感に捉え、突破口へ即応的に転換する姿勢である。準備された柔軟性により、予期せぬ追い風を具体的な合意と関係強化に結びつける。

30秒考えてみよう。

  • 📝 皆さんはどう思われますか?
  • 🏢 組織内弁護士・法務部として「企業内」で活用できる場面はありそうでしょうか?
  • ✉️ この論文をシェアしたら喜びそうな事業部の方はいらっしゃいますか?(オンライン版は月1〜2本の記事無料で読める場合があるので、事業部の方にシェアしてみてはいかがでしょうか?―感謝されるかもしれません🤝)

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(了)

※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。なお、誤植、ご意見やご質問などがございましたらお知らせいただければ幸甚です(メールフォーム)。