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Jeremy Korst, Stefano Puntoni and Olivier Toubia (2025). How Gen AI Is Transforming Market Research – A guide to the most promising opportunities, Harvard Business Review, 103(3), 90-99.
全体像丨わかりやすくまとめてみる
<わかりやすくまとめてみる> 本論文の論点は多岐にわたりますが、あえて例えるのであれば、「新作メニューを考えるレストラン 🍽️」の事例に置き換えると理解しやすいかもしれません。従来、シェフは客一人ひとりに試食してもらい、感想を集めて味を調整してきました(従来の市場調査)。しかし、生成AIは、客の好みを学習した「分身」を大量かつ短時間で作り出し、その分身たちに一斉に試食させてフィードバックを得る調理支援マシンの役割を果たします。
└ 第1の論点では、このマシンがシェフの仕事(インタビュー要約・データ分析・レポート作成)を高速化し、全体の約9割の店舗が導入を検討していることが示されています。
└ 第2の論点では、分身(シンセティックデータ)の味覚が本物の客と95%一致した実験結果が紹介され、試食会そのものを置き換えられる可能性が示唆されています。ただし、微妙な配合のズレが起こる場合もあるため、実際の客による最終確認は必須です。
└ 第3の論点では、厨房横に常駐する「デジタル常連客」—つまり客のデジタルツイン—に新メニューを随時試してもらう発想が紹介されています。42%超の店舗がすでに試行中ですが、価格設定など複雑な要素ではAIが誤解するリスクもあるため、人間の舌との併用が安全策だと指摘されています。
このように、本論文では、生成AIは「速い・安い・大量」に試食データを集める夢の機械ですが、香りや後味のような繊細なポイントではリアルな客の最終チェックが欠かせないと説いています。多分。
個別丨本日のポイント
次に、本論文は、シンセティックデータが「置換」するEYによる調査の解説に進んでいきます。
- 回答者の 81 %が「合成データを利用または利用予定」と答えた
- しかし、価値評価で「優れている」としたのは 31 %にとどまり、精度への懸念が際立った。
- 精度検証として引用されたのが EY Americas と Evidenza の二重盲検テストである。EY が米国 10 億ドル超企業の CEO 調査結果を秘匿したまま、Evidenza が 1,000 体超のシンセティック CEO に同一質問を実施したところ、結論は「95 %同じ」だった(Toni Clayton-Hine 談)。
- 本論文よれば、合成データは質問文や選択肢順に敏感で回答揺らぎが起きるため、(1) 過去 Q&A をプロンプトに含める、(2) 関連文献を知識ベースに参照させる、(3) 自社データでパラメータを微調整する、の 3 手法で精度向上を推奨される(らしい)。
- Columbia と Stanford の研究は、大手モデルが「高学歴・リベラル寄り」に偏る事実を報告し、実務家の 77 %がバイアスを主要懸念と回答した。香料など多感覚刺激の評価や価格弾力性テストでも不整合が起きる点も指摘され、筆者は、現段階では、最終判断には人間調査とのハイブリッド検証が欠かせないとまとめる。
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(*)英語力が乏しいためノロノロとテクノロジーの力を借りて整理しています。学びがある雑誌で、私もファンの1人です。よろしければ、HBR定期購読(定期購読サイト)をご検討ください。