金野志保 弁護士(第一東京弁護士会)「独立役員のマインドとして最も重要なのは”経済的独立性に裏付けられた精神的独立性”である。」丨メモしたい、法務の言葉

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1. コーナーの狙い

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Problem Statement (問題の所在)

法務部員・組織内弁護士は、不確実性が高まる環境の中で、社内のクライアント(依頼者、経営者、事業部門など)の意思決定を十分な情報に基づいて支援する役割を担います。 しかし、日々の業務で何をすべきか迷うときもあります。

ソリューション

定期的に、法律雑誌などで見つけた「珠玉の言葉」を紹介します。 ノートやスマホにメモすることで、自分を鼓舞したり新しい気付きを得るきっかけになることを期待しています。

想定する読者

法務部門の方(とりわけ組織内弁護士・インハウス弁護士)、外部弁護士の方、ロースクール生・司法修習生の方

2. 今回の「メモしたい、法務の言葉」

独立役員のマインドとして最も重要なのは『経済的独立性に裏付けられた精神的独立性』である。

金野志保弁護士

金野志保「女性弁護士社外役員の現在地」自由と正義2025年5月号30頁

3. 中堅組織内弁護士による分析(個人的な考え)

金野先生は、執行側にとって耳の痛い指摘でも口にすべきだと強調し、「発言が再任に影響すると思って黙ることは許されない」と述べています。そのうえで「いつ退任してもよい覚悟が必要」と説き、弁護士は本業があるため経済的独立性を保ちやすく、それが精神的独立性にもつながると指摘しました。同時に、金野先生の素晴らしいところは、「歯に衣着せぬ発言」という意味ではなく、執行側が受け入れやすい表現を選ぶ配慮が欠かせないとも述べています。金野先生のご指摘に完全に同意です。

また、前回触れたとおり、取締役会は法廷とは異なる場です。

論理を詳細に示すだけでは議論が前に進まない場合もあり、一定のアンラーニングが求められます。中村直人先生や國廣正先生の言う「外部弁護士でも社内弁護士でもない、経営という第三の立場」を自覚し、優れたコミュニケーション力を備えた人材の選任が重要です。周囲からのフィードバックがないことを「問題なし」と短絡的に解釈せず、発言が実際に届いているかを常に確認する姿勢も求められます。

取締役会で長文のリーガルメモや専門用語を多用しても、読み手や聞き手が消化できなければ意義は限定的です。内容だけでなく、伝え方が論理的にも感情的にも受け入れられるよう丁寧にパッケージする必要があります。外部弁護士が取締役に就任した結果、事務局が運営に苦慮する事例も組織内弁護士や法務部門同士の話でよく話題にあがります。

私達は、改めて、書面を出せばきちんと(根気強い職業裁判官の皆様に)処理・読破してもらえる法廷を勝手にデフォルト化(原則化・常識化)せず、弁護士としては、一緒に働いている価値観の多様な皆様お一人おひとりに、意見が届いて(響いて)初めて価値が生まれるという点(会社や組織での常識)を謙虚に自覚したいところです

<ゆる募>「お悩み相談箱」

法務部員・組織内弁護士としての大切なことや日々の悩みは、誰かに話すだけでも心が軽くなるものです。もし「取り上げてほしい」「ちょっと聞いてほしい」と思うことがあれば、どうぞ遠慮なくメールフォームからお寄せください。いただいたご相談は、できる限り丁寧に目を通し、少しでもお力になれればと考えています。

なお、法律相談に関しては直接対応いたしかねますので、お近くの法テラスにご相談ください。それ以外のお悩みや想いは、いつでもお待ちしております。あなたの声が、きっと誰かの力にもなります。

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[リーガルリスクマネジメントの教科書とは?]

リーガルリスクマネジメントの教科書』(日本加除出版)は、2023年に出版された教科書です。リーガルリスクマネジメントという臨床法務技術を独学で学んでいただけるよう、心をこめて作成いたしました。きっと喜んでいただけると思います。

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渡部友一郎『攻めの法務 成長を叶える リーガルリスクマネジメントの教科書』(日本加除出版、2023)

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ご相談・講演のご依頼などはこちらからご連絡を賜れますと幸いです。


(了)

※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。なお、誤植、ご意見やご質問などがございましたらお知らせいただければ幸甚です(メールフォーム)。