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【新コーナー】2025年こそ登壇・プレゼンが上手になりたい弁護士・法務の方へ (2)丨東京大学公共政策大学院様『第6回組織風土に関する研究会』登壇を題材にして

1. 新規登壇コーナーの狙い

2024年までは、登壇・講演の機会があった場合、主に「◯◯にてお話をさせていただく機会がございました(お礼)」という形で、記事を執筆しておりました。

2025年から、形を変えて、皆様にもっと貢献したいと考えています。具体的には、私が、当該新規登壇に際して『最高のアドバイス(法律に限らない。)を提供し、多くの種を蒔き育て、心から喜んでもらう』という自分のミッションを実現するために、どのような創意工夫や準備をしたのかという、講演・登壇に至るまでの「裏側」をご紹介いたします(なお、2025年は多忙を極めているため、2ヶ月に1回程度にセーブしており、不定期連載となります)。

Problem Statement (問題の所在) 講演や登壇を通じて「聴衆の方に貢献したい」と考える弁護士・法務部員の方の中には「どうやったら講演に呼んでもらえるのだろう?」「何を話せばいいのだろう?」とお悩みの方も多いと思います。また、弁護士会・研究会・会社などの組織にとって―「次の研修会のテーマはどうしよう?」「講師を誰にお願いしよう?」―というお悩みも「あるある」です。

ソリューション そこで、私が講演・登壇の機会があった場合には、謹んで、共有させていただきます。内容は準備のお話を通じて、皆様のSpeaking Oppotunityやプレゼンテーションの準備に関する役に立てば嬉しいです。

想定する読者 法務部門の方(とりわけ組織内弁護士・インハウス弁護士)、外部弁護士の方、企業や団体で講演機会のある大学の先生

問題の所在・ソリューション・想定読者は上記のとおりとなります。

2. 今回の「お持ち帰りいただけること」(創意工夫)とは?

東京大学公共政策大学院様『第6回組織風土に関する研究会』登壇

あなたの憧れの先生(あなたの知っていることは大抵知っている)が集まるクローズな場所での「登壇」機会をいただいた場合、「1点だけ先生にお持ち帰りいただきたいこと」を考え抜いてください(最低1ヶ月)

いきなりスライド作りに取り掛かったりしないでください。また、総花的な内容、文献を読めばわかる内容、全部捨ててください。

あなたの「経験」という「野イチゴ」を、お鍋でじっくり煮詰めて煮詰めて、味見して不味かったら全部捨てて、またゼロから煮詰めて煮詰めて、これだ!という「1点の絶品ジャム」を作ってご提供ください

今回頂いた登壇及び最も大きな「学び」は、上記のとおりです。

3. インハウス弁護士(講師)による補記

研究会への参加と若い立場からの挑戦

東京大学公共政策大学院の建物で開催された今回の研究会は非公開のため、出席されている先生方や詳細については記載を控えますが、メンバーとして集まっているのは日本を代表する先生方や実務家の方々です。ご依頼をいただいたときは、非常に嬉しく、また身に余る思いでした。

これまでの経験を総動員して、前述のとおり、私は「1点ものの絶品ジャム」を作る気持ちで準備をしました。

先生方と比べるとまだ若く、知識や経験に大きな差がある場合、いったい何を話すべきかと悩むかもしれません。教科書に書かれたことや、たまたま見つけた論文などの情報は、すでに先生方が熟知している可能性が高いのです。

主催者との連携が導く期待値の理解

こうした状況で、主催者の方が、なぜあなたを呼ぶことが研究会やクローズドな場にとって有益だと考えたのか―その理由を深掘りすることから始めます。

具体的には、過去に開催された研究会の様子や雰囲気、期待されている役割を主催者とよく話し合い、90分の中で質疑応答をどれくらい確保するのか、講義では何を話せばよいのかなど、詳細を窓口である主催者を中心にしっかり確認するのです。

1回だけ呼ばれるあなたよりも、何度も参加している主催者の方のほうが全体像を把握し、研究会の流れを理解していますから、何が期待されているのかをきっと上手に教えてくれるでしょう。

「1点ものジャム」を作る姿勢

もう一度「1点ものジャム作り」の話に戻ります。

きっと喜んでもらえる内容というものは、すでにあなたの中にあるからこそ主催者は声をかけてくれたのです。あなたの中にある「野イチゴ」をどうやって煮詰め、どのような形でお持ち帰りいただけるようにするかを徹底的に考えてください。

逆に最悪の事態は、あなたが話し始めた途端に先生方がパソコンやスマートフォンを開いてしまい、質問も儀礼的なものにとどまってしまう状況です。これはプレゼンテーション技術以前に、提供するジャムが「1点もの」ではなく、先生方の興味・関心を引く内容になっていない証拠でもあります。

たとえば、高速道路のパーキングエリアを思い出してください。パーキングエリアの売店には、その土地ならではのお土産が数多く並んでいますが、「思わず手に取ってしまう郷土の品」もあれば、どこかで見たような量産品は手に取ってもらえません。あなたの提供するお話が、「誰もが通り過ぎてしまう量産品」にならないよう、何度も煮詰めて「1点ものジャム」を作りたいものです。先生方にとって既知の情報や調べれば分かる内容ではなく、あなた自身の経験や着眼点からしか語れないことを整理して届ける―それこそがあなたに期待される役割です。

話し手の姿勢がもたらす成果

先生を説得しようとするのではなく、「先生のお役に立てることを1つでもお伝えしたい」という姿勢で準備すれば、話した内容のすべてが持ち帰られなくても、先生が「1点ものジャム」のひとさじ分を手にして帰ってくれるかもしれません。

実際、この研究会では、私がずっと一目お会いしたかった研究会に参加されていた先生が、当日、体調不良で途中退出する可能性があると話していたにもかかわらず、私の冒頭の話をきっかけに最後まで真剣に耳を傾けてくださったという経験がありました。おそらく、「1点ものジャム」が少しだけ先生の心に届いたのではないか、と今でも嬉しく思います。

また別の高名な先生から「とても興味深い話を聞かせていただきました。いつも本当によく準備をされていますね」と声をかけられたときも、心から光栄に感じました。

この経験が、皆さんが憧れの先生方の前でお話しするときに少しでも参考になれば嬉しく思います。

4. 過去の登壇例

5. 登壇のご依頼があれば、お知らせいただけたら幸いです。

講演のご相談は、こちらのGoogle Formからご連絡を賜れますと幸いです。


(了)

※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。なお、誤植、ご意見やご質問などがございましたらお知らせいただければ幸甚です(メールフォーム)。

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