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テック企業の組織内弁護士が押さえておきたい「業務管理」とは?丨<新連載>精読『Workplace Strategies for Technology Lawyers』[4/36]【木曜/土曜 掲載】

問題の所在+ソリューション[各連載回に共通]

Problem Statement (問題の所在) 私は、現在、『リーガルリスクマネジメントの教科書』の姉妹編となる「新しい書籍」を心を込めて執筆しています。新著は、組織内弁護士として、法務部門の中で、少ない摩擦で充実した活躍をするための様々な私の失敗と学びを透明性をもってまとめた本になります。法律の専門家から組織内弁護士への「transformation」には多様な支援が不可欠です

ソリューション ある日、Amazonの書籍の中に、海外の組織内弁護士に対して同じ視点からTip(ヒント)を提供している書籍に出会いました。本書は「Do you want to stand out as a successful in-house counsel?」と問いかけます。海外と日本の違いはあるかもしれませんが、海外で100以上の高レビューを獲得している書籍を一緒に精読していきましょう。

想定する読者 法務部門の方(とりわけ組織内弁護士)、外部弁護士の方、ロースクール生・司法修習生の方

テック企業の組織内弁護士が押さえておきたい「業務管理」とは?

講義ノート

本書の筆者は、テック企業の組織内弁護士は、短い時間のなかで多種多様な案件に対応する必要があるため、各ミーティングやアポイントに向けて入念に準備しておくことが不可欠と指摘します。夕方や週末など少しまとまった時間を使って、次に参加する会議のポイントを整理しておくと、より的確なアドバイスを出しやすくなると指摘します。

加えて、業務を進めるうえでは、提案したアドバイスがきちんと実施されているかを追跡したり、検討内容や決定事項を簡潔に記録しておくことにより、「成果」のアピールの整理にもつながると提案しています。

私個人の考え⋯皆様はどう思われますか?

私個人の考えとしては、こうした「準備と記録を丁寧に行う」業務管理は非常に重要だと思います。もっとも、これはあくまで「留保付きの賛成」です。

実際のところ、テック企業の組織内弁護士やリーガル部門のスタッフは、オーナーシップが高い方が多いため、いつの間にかプロジェクトマネージャーのような業務まで担ってしまうケースがあります。

たとえば、レストランのシェフを想像してみてください。本来なら料理の品質に集中する立場であるはずが、予約の管理や仕入れ先との交渉、スタッフのシフト調整などあらゆる業務を一手に引き受けてしまうような状態です。結果的に、肝心の料理のクオリティに影響が出かねないのと同様、リーガル本来の役割への注力がおろそかになるリスクがあります。

たとえば、せっかく出したアドバイスが本当に実行されているかを何度も確認したり、関係者を集めるためのミーティングを自分で主催したりするのは、オーナーシップの表れとして素晴らしい反面、それ自体がリーガルの本来の役割を超えてしまっている可能性も否定できません。

実際にAirbnbなどでは、プロジェクトマネジメントの専門資格を持ったノンロイヤーのスタッフが複数名在籍し、グローバルなプロジェクトを進めるうえで弁護士をサポートしています。

こうした体制があると、リーガル部門は純粋に法的な観点でのアドバイスやリスク管理に専念しやすくなり、結果的には事業全体のスピードアップと精度向上が期待できるでしょう。もちろん、場合によっては弁護士自身がExcelでスケジュールを管理することもあるかもしれませんが、本当にそこまで踏み込む必要があるのかは常に検証すべき課題だと感じます。

ここまで読んでいただいた方は、リーガル部門がプロジェクトマネジメントまで担うべきだと思われますか。ぜひご意見をお聞かせください。

Workplace Strategies for Technology Lawyers ―原典の推薦―

David Sclar. (2021). Workplace Strategies for Technology Lawyers.

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(了)

※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。なお、誤植、ご意見やご質問などがございましたらお知らせいただければ幸甚です(メールフォーム)。

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