2024年の最も心に残ったAirbnb法務の教え(1/3)丨リーガルリスクマネジメントの教科書丨メモしておきたい言葉だち

第1回:勇気ある文化と明確なコミュニケーションの重要性

1. はじめに

職場において、上司と部下のコミュニケーションはチーム全体のパフォーマンスを左右する非常に重要な要素です。特に、法務部門や管理職としてリーダーシップを発揮するには、明確かつ率直なコミュニケーションを行うことが求められます。

今回は、2024年最も心に残った私の尊敬するシンガポール人の上司が強調した「勇気ある文化」と「明確なコミュニケーション」の重要性について、具体例を交えながらご紹介します。

2. 難しい会話を避けない理由

法務部門では、日々の業務の中で法的なリスクやコンプライアンスの問題に対処する必要があります。このような状況下で、時には難しい会話や意見の対立が避けられないことがあります。しかし、こうした場面で上司やチームメンバーが率直に意見を交わし合うことで、チームの透明性が高まり、結果として法務の質も向上します。

上司が強調したのは、難しい会話を避けることで信頼関係が損なわれ、エンゲージメントが低下するというリスクです。これに対し、Brené Brown氏の「勇気あるリーダーシップ」にあるように、リーダーシップは恐れずに困難な対話に挑む姿勢から始まります。法務の管理職として、私たちは部下と信頼関係を築き、オープンなコミュニケーションを奨励することが求められます。

3. 「ホスト精神」の真の意味

Airbnbのコアバリューである「ホスト精神(Be a Host!)」は、法務のリーダーシップにおいても非常に重要な概念です。「ホスト精神」とは単に親切心や礼儀正しさを示すだけでなく、相手の成長を支援し、協力的な関係を築くことを意味します。上司は、フィードバックや意見交換を通じて部下を支援し、彼らが自信を持って法務業務に取り組める環境を整えることが「ホスト精神」の本質であると述べています。

具体的には、部下が業務上の悩みや問題点を率直に共有できる場を設けることが大切です。上司として、ただ問題点を指摘するのではなく、どうすれば解決に向かうかを一緒に考え、部下の成長を支援する姿勢が必要です。これにより、法務チーム全体のパフォーマンスが向上し、クライアントに対しても一貫した高品質なサービスを提供できるようになります。

4. 勇気ある文化を育むためのステップ

勇気ある文化を育むためには、以下のステップを踏むことが効果的です。

  1. フィードバックを奨励する文化の醸成: フィードバックは、管理職としてのリーダーシップを強化するためのツールです。法務部門のリーダーは、部下が自由に意見を述べられる環境を整え、積極的にフィードバックを求めましょう。
  2. 難しい会話に臆せず挑む: 上司として、困難な対話や意見の衝突を避けず、率直なコミュニケーションを奨励することが大切です。特に、法務分野ではリスクの指摘が重要なため、正直な意見交換が求められます。
  3. 共感と理解を深める: 部下の立場や背景を理解し、共感を示すことが、信頼関係を築くための基盤となります。上司として、部下が安心して意見を述べられる環境を提供することが求められます。

5. おわりに

勇気ある文化と明確なコミュニケーションは、法務部門やチーム全体のパフォーマンスを飛躍的に向上させる力を持っています。法務に携わる管理職として、私たちはこの文化を育むためにリーダーシップを発揮し、部下と共に成長する姿勢を持ち続けることが重要です。

次回は「責める文化から学びの文化へのシフト」をテーマに、どのようにして建設的なフィードバックと成長マインドセットを育むかについて掘り下げていきます。引き続き、リーダーシップ論を深掘りしていきますので、ぜひお楽しみに。

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[リーガルリスクマネジメントの教科書とは?]

リーガルリスクマネジメントの教科書』(日本加除出版)は、2023年に出版された教科書です。リーガルリスクマネジメントという臨床法務技術を独学で学んでいただけるよう、心をこめて作成いたしました。きっと喜んでいただけると思います。

渡部友一郎『攻めの法務 成長を叶える リーガルリスクマネジメントの教科書』(日本加除出版、2023)

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(了)

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