工藤亮平弁護士(岩田合同・パートナー)「情報漏洩の発生ルートは2つ:『現職従業員の故意過失による漏洩』『中途退職者による漏洩』で約85%」丨リーガルリスクマネジメントの教科書丨メモしておきたい言葉だち

1. 本日のピックアップ

中央経済社様の「ビジネス法務11月号」からピックアップ。

工藤亮平先生(岩田合同・パートナー)による―「情報漏洩の発生ルートは2つ:『現職従業員の故意過失による漏洩』『中途退職者による漏洩』で約85%」―を謹んでピックアップしました。

  • 工藤亮平弁護士(岩田合同法律事務所・パートナー)は、「情報漏洩の発生ルートは2つ:『現職従業員の故意過失による漏洩』と『中途退職者による漏洩』で約85%」と指摘しています。
  • この言葉は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が2020年に実施した「企業における営業秘密管理に関する実態調査」に基づいています。この調査によれば、情報漏洩の主要なルートは「中途退職者による漏洩」が最も多く、全体の36.3%を占めていることがわかりました。また、現職従業員による「誤操作、誤認等」が21.2%であることから、これらの2つのルートが情報漏洩の多くを占めていることが確認されています​。
  • 企業における営業秘密の管理において非常に重要な視点です。特に、現職従業員や中途退職者による情報漏洩は、企業の競争力に直接的な打撃を与え、重大なリスクを伴います。企業はこれらのリスクを軽減するために、従業員と秘密保持契約を締結し、さらに情報漏洩を防ぐためのセキュリティ対策を強化する必要があります。実際、調査でも秘密保持契約の締結が増加していることが明らかになっており、これは企業が内部不正に対して対策を強化している背景です。
  • 他方、社内から聞かれやすい声としては、「情報漏洩のリスクは確かに存在するが、全ての従業員や退職者に対して厳格な管理を行うことは、企業文化や職場の雰囲気を悪化させる恐れがある。従業員の信頼や自主性を損なうことは、結果的に企業の生産性や従業員のモチベーションを低下させるのではないか。」 というものがあります。
  • しかし、「従業員の信頼や自主性を尊重することは重要ですが、企業の持続可能な成長のためには、適切なリスク管理とセキュリティ対策が必要です」と、法務が指摘できると思います。企業が従業員に対して明確なポリシーを示し、セキュリティ対策の重要性を理解させることで、従業員も自己の行動が企業全体に及ぼす影響を理解し、主体的に情報を保護するようになります。また、信頼を失わないためには、透明性のある情報共有や従業員との対話が重要であり、厳格な管理と従業員の信頼関係を両立させることは可能です。結果として、強固なセキュリティ対策は企業の競争力を維持し、長期的な信頼を獲得するための重要な施策です。 このように、適切な情報管理と従業員との信頼関係のバランスを取ることで、企業の持続可能な成長と競争力の維持を図ることができます。

あらためて情報セキュリティについて考えるうえで重要と考え、先生の言葉をピックアップさせていただきました。

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[リーガルリスクマネジメントの教科書とは?]

リーガルリスクマネジメントの教科書』(日本加除出版)は、2023年に出版された教科書です。リーガルリスクマネジメントという臨床法務技術を独学で学んでいただけるよう、心をこめて作成いたしました。きっと喜んでいただけると思います。

渡部友一郎『攻めの法務 成長を叶える リーガルリスクマネジメントの教科書』(日本加除出版、2023)

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(了)

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