法務部門が抑えたい「創業者の最後の仕事」―1.3兆ドル規模の「世界的事業承継ラッシュ」の最新知見[1/3]丨HBR2025年9-10月号の掲載論文

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「勉強時間なんて、忙しすぎて確保できない」と悩む方は多いものです。私は30代前半に他責の姿勢を改め、早朝学習に活路を見いだしました。現在も毎朝4時台に起床し、机に向かっております。この場では、英語版Harvard Business Review(HBR)最新号に掲載された論文をゆっくり読み、講演や執筆で活用できそうなものを備忘録としてまとめています。事業部を支える法務部や組織内弁護士だからこそ、毎週火曜日と金曜日にご一緒に専門外の最新知見に触れてまいりましょう。なお、これは私的な備忘録であるため、内容に誤りが含まれる可能性がございます。原文をお手元でご確認の上、ご検討いただければ幸いです。

(*)英語力が乏しいためノロノロとテクノロジーの力を借りて整理しています。学びがある雑誌で、私もファンの1人です。よろしければ、HBR定期購読(定期購読サイト)をご検討ください。

「創業者の最後の仕事」―1.3兆ドル規模の「世界的事業承継ラッシュ」の最新知見丨一緒に学ぶ論文はこちら

Josh Baron, Ben Francois, Tony Guidotti and Nien-hê Hsieh (2025). The Founder’s Final Act: How to hand over ownership and burnish your legacy, Harvard Business Review, 103(4), 86-94.

「創業者の最後の仕事」―1.3兆ドル規模の「世界的事業承継ラッシュ」の最新知見丨全体像丨わかりやすくまとめてみる

<わかりやすくまとめてみる>
本論文をどのように例えるか迷ったのですが、「映画監督」が、自分が生み出し、育て上げた作品(会社)を、自分が去った後も名作として残すにはどうすべきか、という視点で見たらわかりやすいかもと思いました。

🎬 「俺の作品」への執着が最大の敵:ずっと現場で指揮を執ってきた名監督(創業者)ほど、「自分がいないと現場が回らない」と思い込み、引き際を失います。準備なしに急に倒れると、現場は混乱し、ドラマは打ち切り(廃業)になってしまいます。
✍️ 「誰にメガホンを渡すか」で作品の味が変わる
①息子に継がせる(家族承継): 作風は守られるかもしれませんが、実力不足だとファン(従業員・顧客)が離れます。
②大手制作会社に売る(PE/投資家): 予算は増えますが、「視聴率至上主義」になり、本来の良さが消されてしまうかもしれません。
③制作スタッフ全員で権利を持つ(従業員所有): 現場の熱量は維持されますが、経営的な判断が遅くなるリスクもあります。
🏗️ 名作を残すための「制作委員会」作り:Patagoniaの例などは、単に監督を交代するだけでなく、「このドラマのテーマ(環境保護など)を永遠に変えない」というルールを持った制作委員会(永続目的信託など)を作ったことに相当します。

監督個人の才能に依存せず、作品の魂を守り続ける仕組みを、引退前に作り上げることが「最後の仕事」なのです。

全3回の論文の内容を、ここにいる法務部門の我々みんなで、順番に抑えていきましょう。

「創業者の最後の仕事」―1.3兆ドル規模の「世界的事業承継ラッシュ」の最新知見丨個別丨本日のポイント

本論文は、冒頭に、「70%」が計画未策定という現実を提示したうえで順を追って論じはじめます。

  • 現在、米国の民間企業の過半数が55歳以上の所有者に握られており、これらは290万社、従業員数3210万人、売上高6.5兆ドルに及ぶ、かつてない規模の「世界的事業承継ラッシュ(大承継時代)」を形成している。
  • しかし、2019年のSTEP Global Family Business Surveyによれば、世界の同族企業CEOの70%が後継者計画を持っていない。Chick-fil-AやNikeのような有名企業であっても、創業者が直面する最大の問題は「誰が後を継ぐか」である。
  • 多くの創業者が計画を先延ばしにする主因は、自身のアイデンティティが会社と一体化しており、手放すことに痛みを伴うからだ。

計画なき継承は、莫大な税負担や家族間の対立、最悪の場合は事業の解体・清算を招く。

本論文は、まず「レガシーの定義」から始めることを推奨する。自身、家族、従業員、ビジネスパートナー、社会という5つのステークホルダーに対し、どのような成果を望むかを明確化し、「必須(Must have)」と「あれば良い(Nice to have)」に分類する方法を提唱する。

例えば、売却による個人の富の最大化は、家族による経営関与や従業員の雇用維持とトレードオフになる可能性がある。感情的な決断を避け、優先順位を論理的に整理することが、成功への第一歩となる。

「創業者の最後の仕事」―1.3兆ドル規模の「世界的事業承継ラッシュ」の最新知見丨30秒考えてみよう。

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(了)

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