
新堀光城弁護士(KPMG)の言葉丨目次
新堀光城弁護士(KPMG)―メモしたい法務の言葉とは?
新堀光城弁護士(KPMG)の言葉
新堀光城弁護士(KPMG)「(リーガルテック導入の)75%以上の企業では、関連業務間や部門間での連携がなされていない」丨メモしたい、法務の言葉
新堀光城=荒尾宗明「法務機能を高度化するデータマネジメント」ビジネス法務2026年1月号12-15頁
中堅組織内弁護士による分析(個人的な考え)
新堀光城弁護士(KPMG)が指摘した「75%の企業で部門間連携がなされていない」という現実は、多くの法務パーソンが薄々感じていた恐怖を言語化したものです。
リーガルテックを導入したはずなのに、なぜか思ったように仕事が楽にならない。その違和感の正体は、システムがサイロ化(孤立)していることにあります。ここでは、この孤立が組織にもたらす致命的な帰結について、経済学とシステム理論の観点から二つの警鐘を考えて生きたいと思います。
法務・コンプライアンスリスクサーベイ2024:持続可能な経営に向けた改革
https://kpmg.com/jp/ja/home/insights/2024/03/legal-risk-survey2024.html
「生産性のパラドックス」:投資したのに成果が消える
MITのエリック・ブリニョルフソン教授が1993年に提唱した「生産性のパラドックス」は、この状況を不気味なほど正確に予言しています。
“Delays in the realization of productivity gains from IT… can be attributed to the difficulty of managing the organizational change required to capture the benefits of new technologies.” (ITによる生産性向上の実現が遅れているのは…新技術の恩恵を享受するために必要な組織変革を管理することの難しさに起因している可能性がある。) Erik Brynjolfsson, “The Productivity Paradox of Information Technology” (1993).
「部分最適の罠」:法務の効率化が全社の害になる
システム理論の大家ラッセル・アコフによれば、「システムの一部を改善しても、必ずしもシステム全体が改善されるわけではない」と言われています。
“An improvement in the performance of a part of a system taken separately may not, and usually does not, result in an improvement in the performance of the system as a whole.” (システムの特定の部分のパフォーマンスを個別に改善しても、システム全体のパフォーマンス改善にはつながらないし、通常はそうならない。) Russell L. Ackoff, “Creating the Corporate Future” (1981).
結論:ツールを買うな、つながりを創れ
難しい悩みですが、ブリニョルフソンのパラドックスとアコフのシステム論。この二つが示す未来は明白です。連携なきリーガルテック導入は、投資対効果を生まないばかりか、組織内の分断を加速させる可能性があることは、抑えておきたい内容です。
新堀弁護士の警鐘を真摯に受け止めるならば、私たちが次にすべきは、新しいツールのカタログを見ることではありません。(情シスなど会社横断的な部門との連携はもちろん)隣の席の営業部門や経理部門の担当者と話し、「データをつなぐ」ための地味で泥臭い調整を始めることです。その人間同士のつながり(インターフェース)の構築こそが、サイロを破壊し、真のリーガル・トランスフォーメーションを実現する唯一の道なのかもしれません。
そのような設計こそが、自動化の皮肉を乗り越え、真の知恵を生成する鍵となるでしょう。
そして、それがもっとも大変なパーツであるのですが⋯(Airbnbでまさに責任者の一人としてリーガルテックをサポートしている中で)。
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