1. 本日の相談室(火曜日朝のみ営業)
共感 今回のご相談も「う…わかる(涙)」と思います。採用に携わったことがある法務部門の方は、経験されたことがある「あるある」だと思います。イライラやご不満は正当だと思います。
- きっと、先生も、お忙しい中、「良い同僚になれる方が来てほしい」と真剣に面接に時間を割いている分、徒労感が半端ないのだと拝察しております。
- 特に、製品やサービスのことを聞いても、要領を得ず、さらに、調べもしていないことを恥にも思ってなさそうな候補者がくると、多くの方が、さっさと面接を打ち切りたくなると聞きます。
- 他方、誤解があれば恐縮ですが、1つ指摘を許していただければ、上記は、たしかに弁護士資格を持つ法律事務所からの転職希望者「あるある」であることは否定いたしませんが、調べもせずに面接にきてる候補者は、資格問わず、いらっしゃる気がいたしますので、本稿では「弁護士様」(すなわち、「複数ある競合の事業会社ではなく、なぜ御社か」という根幹を全く説明できないレベルの法律事務所所属の候補者、または「弁護士バッチ」を売りにしている候補者=弁護士に属する者であれば弁護士が無条件に優秀であり倫理的に優れ法務部門に的確な人材であるという錯覚)を念頭に置きつつも、「弁護士様等」と資格に関わらないことを前提とさせていただきます。
私なりに心を込めた回答 大切な悩みのご相談、改めて、ありがとうございます。私にも盲点があると思うのですが、アイデアのご提供として、以下をシェアさせてください。
問題の所在
はじめに、当Blog定期となりますが、米田憲市編『会社法務部[第12次]実態調査の分析報告』(商事法務、2022年)241頁には、下記のとおり、弁護士資格を持った人を採用するときの「心配事・懸念」がきちんと調査されています。弁護士を採用したくない理由堂々の第2位「企業文化や企業風土に対する理解(に欠ける)」は、まさに、歴代の法律事務所弁護士が、「複数ある競合の事業会社ではなく、なぜ御社か」という根幹を調べず/考えずに、(ヘッドハンターの進めるままに)事業会社の法務部門の就職面接に行っていることが原因と推察しています。
特に、弁護士資格の有無に関わらず、企業の最重要な「事業」を構成する「製品」や「サービス」を調べずに面接に臨む弁護士様等が存在します。
他方で、現役の「企業人」とは異なり、個人事業主の集まりでもある法律事務所で身に付けられるとは限らない(組織人としての)「企業文化や企業風土に対する理解」は転職活動の一瞬で身に付けることはできません。
むしろ、そのことにすら意識が至らず、「専門性」「地頭」「学歴・成績」といった法律事務所就職時の延長線上で就職活動をしている人もいるかもしれません。ですので、言い訳をお許しいただけるのであれば、候補者個人が何か悪意・害意があってそうなっているわけではなく、一般企業への就職活動経験がなく、学歴・成績・司法試験合格(たまに人柄やコミュニケーション能力)など、法律事務所の就職活動の延長線上で、サービス・製品に完全に意識が及ばないことは、構造的な要因も寄与している可能性があります。
他方、あなたやご同僚など面接官の貴重なお時間を奪う正当な理由にならない、との指摘に反論の余地はございません。
3つの謹んでの提言
その上で、この問題の業界全体での解決方法なのですが、3つあります。皆様のアイデアもぜひお聞かせください。個人のバイアス・盲点さらに誤解もあるかと思いますが、考えるお役に立てば幸いです。
誰も幸せにならない「弁護士様等」の面接準備状況を改善し、候補者と法務部門との間で、真に有意義な時間がもたらされることを願っています。
念の為、本稿は、優秀な人・能力主義的な観点から、弁護士という資格を持つ方に一定程度の優秀な方々が高い確率で分布・存在していることは否定していませんが、冒頭に掲げたデータの通り、「弁護士を採用する懸念」に向き合えていない面接候補者がいるとすれば、それは双方にとって不幸であることを指摘しているにとどまります。
意見は多様ですが、本当に「優秀」な方は、その卓越した能力の一部として、相手方の懸念や気持ちに配慮し、それに適合する努力を怠らない能力ももっている、と私は考えています。
教科書該当箇所 渡部友一郎『攻めの法務 成長を叶える リーガルリスクマネジメントの教科書』182-185頁(日本加除出版、2023)
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信頼される法務担当者を目指すならば、本書を読んで自分に向き合ってほしい
-高野 雄市 氏(三井物産株式会社 執行役員 法務部長)
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-瀧 俊雄 氏(株式会社マネーフォワード執行役員CoPA)
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-吉兼 周優 氏(株式会社Azit 代表取締役CEO)
社会の前進を生みだす「イネーブル法務」に生まれ変わること間違いなし
-門奈 剣平 氏(株式会社カウシェ 代表取締役CEO)
DeNA 時代から「事業部の懐刀」であった戦友の手紙だ
-大見 周平 氏(株式会社Chompy 代表取締役)
(※順不同:肩書は2023年2月時点:個人の見解です)
(了)
※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。
渡部先生、相談があります。
相談内容 単刀直入に質問いたします。