さまざまな業種の方とお話する際のとっかかり
インターネットサービスの組織内弁護士をしていると、同じインターネットサービスの会社の組織内弁護士・デジタルサービスに造詣がある外部弁護士と話すと狭く深い話になります。逆に、相手の方が非デジタルな産業にお勤めの場合、どこまで「デジタル」や「インターネットサービス」に興味関心があるのかをまず測定する必要があります。
現実の世界では、会合には多種多様なセクターの方が集まるため、名刺交換しても、会社の事業を存じ上げないことがままあります(その場合、不勉強で申し訳ありませんがと断ってぜひ積極的にお話をうかがってみましょう。)
本コラムでおすすめしいたのが、誰もがとっつきやすいIT関連の話題が「移動革命(モビリティ革命)」すなわち「次世代のクルマ」の話です。なぜなら、誰しも「自動車」「タクシー」に乗ったことがあるため「移動サービス」の話題は誰もが参加しやすいためです。
引き出しに1つデータを入れておきましょう
過去→現在→未来
学会発表ではないので、正確なデータや論拠を示す必要はありません。
他業種の方とお話する際に、自社の事業をわかりやすくお話するには「過去→現在→未来」の順番で話をデザインするとわかりやすいです。特に若手の法律事務所の先生や若手の組織内弁護士の先生は、「お仕事」の話になると、「デューデリの一端」とか「契約書審査」といった狭いテーマになりがちなため、自分の関わる領域の「過去→現在→未来」を説明できるようにしておくと良いかもしれません。聞く側としても新聞を見ていて「現在」を知っていたが、「過去」「未来」ははじめてしったという場合もあります。
例えば、「モバイルゲーム」の話をするときに、「今市場ではXXXなっています」というよりも、次のように話すとどこかにひっかかりや興味を持って頂ける可能性があります。
- 「過去:もともと携帯電話にゲームが入ってきたのはXX年前で、その後YYY、つい数年前まではZZZZ」
- 「現在:最近のマーケットはAAAという状態で、XXX社さんとYYY社さんがBBBという状態です。法務部門としては、これに伴い、CCCに関心を持っています。」
- 「将来:競争激化により、PPPの収益が悪化しており、QQQ方面では買収などのM&Aが盛んになるかもしれません。」
これはそのまま質問にもつかえて、「不勉強なのですが、先生の会社の業種・サービスの、一昔前と現在とこれからの方向性や将来のゴールがあれば教えて頂けないでしょうか」と時系列・ストーリーで学ぶことができます。
引き出しに入れておくデータは、会話のボールになるデータが良いと個人的に思います。
次に、データを持っていると、大きい・小さい含めて話題が展開しやすいです。さらに、引き出しにデータを選ぶ際に、相手にボールをお渡しできるような広がりがあるデータがよいかもしれません。例えば、「国土交通省の交通政策白書によれば、2005年と比較して、2015年の移動総量(輸送旅客数)は5.7%増えた」と共有されても「そうなんですね」で終わってしまいます。有意義でないのは、あまり会話を豊かにすることに資さないからです。
ところが、上記のようなデータだとどうでしょうか。相手の会社又はクライアントがどれかのサービスを提供しているかもしれません(広がりがある)。「金融」(この場合はオートローンですね)、「データ関連サービス」(カーナビとか)、「シェアリングサービス」(Timesカーシェアとかカレコとか)などは広がりがありそうですね。
また、質問も有効です。「差し支えない範囲で[注:新規事業は当然に話せないため、事業のお話を伺う際には”as long as you can tell me”、と必ず秘密情報などに無神経ではないですよ、という配慮が望ましいです]、移動革命に関連した動きやサービスは御社や御社のおつきあいがある会社様でも話題でしょうか?」といった質問により、知らない情報を学ぶこともできるかもしれません。
深掘り資料
- 国土交通省に「空の移動革命に向けた官民協議会」が平成30年に設置されています、ご存知なければ少しクリックしてのぞいてみましょう。
- 以前もとりあげた「未来投資戦略2018」。日経新聞が盛り上がっているバズワードがあれば、バズワードはバズワードで冷静に置いておき、未来投資戦略に含まれているか、含まれているとしたら何が目指されているのかを点検します。
- 移動手段をめぐっては、地域における移動困難者の増加、ドライバ ーをはじめとする人手不足の深刻化などの問題が山積している。こう した中、世界では、自動運転の開発・社会実装競争のみならず、移動 に関する様々な各種サービス面での競争も開始されている。我が国としては、自動運転及び交通全体の統合サービス・プラットフォームを 含む「次世代モビリティ・システム」の実現に向け、施策を展開していく。 自動運転については、2020 年東京オリンピック・パラリンピック競 技大会を前に、いよいよ社会実装に向けた取組が技術実証の段階から ビジネス化を見据える段階に入りつつある。引き続き「技術」と「事 業化」の両面で世界最先端を目指すためにも、これまでの比較的簡単 なシーンから始めてきた技術実証・サービス実証をより実際のビジネ スモデルに近い形で推進し、技術や社会的受容性を更に昇華させつつ、 社会実装を加速していく。(21頁)
(了)
※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。なお、誤植、ご意見やご質問などがございましたらお知らせいただければ幸甚です(メールフォーム)。