
坂本英之弁護士の言葉丨目次
坂本英之弁護士―メモしたい法務の言葉とは?
坂本英之弁護士の言葉
「CLOは⋯CEOの立場に立って経営全体を見渡す視点を持つことが重要」
坂本英之=小泉志保=木内秀行「General Counsel / Chief Legal Officer 座談会―今後の企業内弁護士の在り方とキャリアプラン」NIBEN Frontier 2025年11月号22−33頁
中堅組織内弁護士による分析(個人的な考え)
(前回1/7投稿の続き)
しかし、それでもやはり専門家がトップにいるほうが成果が出る可能性が高いという主張も有力です。
では、更に議論を進めて、技術専門職の法務部門のトップ(法務部長)であれば弁護士という点は説得的ですが、CEOと肩を並べるCLOが果たして弁護士でなければならないのかは、どう考えればよいのでしょうか?
この点、ライス大学の経営学者Erik Daneの研究が示唆しているように、ある特定の領域(この場合は法律)で高度な専門性を獲得すればするほど、その既存の枠組み(スキーマ)に固執し、変化や新しいアイデアに対して柔軟な解決策を見出せなくなる「認知的要塞化(Cognitive Entrenchment)」という現象陥るリスクが高まることは見逃せません。
経営戦略とは往にして「法的にはグレーな領域」への挑戦を意味しますが、純粋な法律家としての訓練を積めば積むほど、リスク回避バイアスが強化され、イノベーションを阻害する「NO」を突きつけるだけの存在になりかねないというパラドックスが存在します。
ここで、財務・会計の専門家であるCFOと同列に論じてCLOも専門家がなるべきだという立場を考えてみましょう。扱うリスクの性質が「計算可能か否か」という点で同列には論じ得ないという指摘があるかもしれません。
この点、経済学者フランク・ナイトが提唱した古典的な定義に従えば、CFOが扱う財務データや市場リスクは、過去のデータから確率分布を導き出せる「リスク(Risk)」に分類され、これは高度な数理的専門知識によって制御可能な領域です。対して、CLOが扱うレピュテーションや規制の変化は、確率計算が不可能な「真の不確実性(Uncertainty)」に分類されるとも言えます。
そうだとすると、計算可能な共通言語(数字)を持つCFOとは異なり、正解のない不確実性に対処するCLOに求められるのは、法知識の多寡ではなく、政治的判断や倫理観を含めた「総合的な経営判断(Business Judgment)」であり、それは必ずしも弁護士資格に依存するものではないのかもしれません。
皆様は双方の立場を見て、どのようにお考えになりますか?
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