訃報丨ソフトバンクG最高法務責任者Tim Mackey氏(ティム・マキ氏)を偲ぶ (English follows)

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昨日―2025年6月12日、リッツカールトン東京で開催された ALB Japan Law Awards に出席しました。毎年この式典で “常勝軍団” として存在感を放つソフトバンクグループの法務部を率いる最高法務責任者、Timさん の姿を探していましたが、今年はどこにも見当たりません。しかも Timさんは In-house Lawyer of the Year 部門にもノミネートされていたので、きっと会場のどこかでご挨拶できるだろうと漠然と期待していたのです。

ところが、ソフトバンクによる OpenAI への投資案件 が受賞し、外部弁護士が登壇してスピーチを行ったその瞬間、Tim さんの訃報が告げられました。突然の知らせに言葉を失い、喜びと深い悲しみが胸の中で交錯する一夜となりました。

ソフトバンクグループ社 訃報を伝えるリリース

執行役員の退任について(訃報)

2025年6月9日

ソフトバンクグループ株式会社

当社執行役員 CLO 兼 GCO 法務統括のティム・マキは、2025年6月7日に心室細動により急逝いたしました。これに伴い、同日をもって執行役員を退任いたしました。
ここに生前のご厚誼に深く感謝するとともに謹んでお知らせ申し上げます。

(略)

当社 代表取締役 会長兼社長執行役員の孫 正義は、次のように述べています。
「ティムの突然の訃報に接し、深い悲しみにたえません。彼は、法務における豊富な専門知識を生かし、当社のグローバルな重要案件など数々のプロジェクトの実現に尽力してくれました。グループ全体に多大な貢献をしてくれた大切な仲間であり信頼できるアドバイザーでした。彼を深く偲び、ご遺族、ご友人、ご関係者の皆さまに心よりお悔やみ申し上げるとともに、ティムのご冥福を謹んでお祈り申し上げます。」

https://group.softbank/news/press/20250609

ソフトバンクG最高法務責任者Tim Mackey氏(ティム・マキ氏)を偲ぶ

8年前、ALB Japan Law Awards の会場で、私は SoftBank の名刺を差し出す紳士の隣に座り、緊張で胸が高鳴っていました。生まれて初めてトロフィーを手に席へ戻ると、Timさんは立ち上がり、そっと「おめでとう」と肩を叩いてくれました。世界でも屈指の大胆な取引を導いてきたソフトバンクグループの最高法務責任者が、その偉大さと同じだけの温かさを持つ人だと知った瞬間でした。

今夜、授賞式が先ほど終わり、SoftBank の OpenAI への投資案件が賞の1つに輝きました。会場は歓声に包まれましたが、Timさんの訃報を知ったのは、その受賞スピーチの瞬間でした。6 月 7 日、彼は突然旅立ち、その知らせは審査員としてステージに上がる直前に届いたのです。

来年も再来年も、Timさんのあの笑顔と力強い握手はもうありません。それでも、彼が社内外で育てた無数のインハウス・ローヤー、彼が推し進めた日本を代表する歴史に残る挑戦的なディール、そして、彼が根づかせた惜しみない寛容の精神は生き続けます。初めて肩に手を添えて頂いたあの瞬間が、今も「成功は皆で分かち合ってこそ価値がある」と教えてくれます。

Timさん、勇気と優しさをもって導いてくれたことに心から感謝します。あなたの教えを生涯大切にしたいという気持ちです。寂しさがこみ上げてなりません。心より御冥福をお祈り申し上げます。

[Tokyo/Japan] Dear Tim Mackey. Tonight’s award ceremony celebrated SoftBank’s landmark OpenAI deal, yet every cheer echoed with the memory of Tim, our mentor who first welcomed me into this award community 8 years ago, and who left us far too soon.

8 years ago, at the ALB Japan Law Awards, I nervously took a seat beside a distinguished gentleman whose SoftBank business card spoke volumes. Later that evening, when I returned to the table clutching my first-ever trophy, Tim rose, enveloped me in a warm hug, and said, “Congratulations.” In that simple gesture, the General Counsel who thereafter steered SoftBank through some of the world’s most daring transactions revealed the warm heart behind his formidable reputation.

Fast-forward to this evening. The award ceremony has just concluded, and SoftBank’s investment in OpenAI has been named the award. Amid the applause, I did feel Tim’s absence profoundly: only a few days ago, on 7 June, he passed away unexpectedly. The announcement of his passing reached me moments just before stepping on stage, honoring Young Lawyer of the Year for both private practice and in-house in Japan.

Tim will not be here next year, or the year after, to share his signature smile and reassuring handshake. Yet his spirit endures in the countless in-house lawyers he mentored, the bold deals he championed, and the culture of generosity he cultivated. I still feel that first shoulder tap, reminding me that success means little unless we lift others alongside us.

Thank you, Tim, for leading with courage and kindness. We will carry your lessons forward, and in doing so, keep you with us, always. We miss you so much.

日本における、最高法務責任者の巨星

Tim Mackey 氏は約30年にわたり、国際的な法律事務所とソフトバンクグループの双方で実務と経営に深く携わってこられた稀有な法務リーダーです。キャリアの端緒は1995年、福岡ドーム株式会社(現・福岡ソフトバンクホークス関連会社)での企画業務にあり、スポーツ・エンターテインメントの現場でビジネス感覚を磨かれました。

その後、ニュージーランド最大規模の法律事務所 Chapman Tripp にてソリシターとして独占禁止法案件を中心に経験を積み(2004〜2005年)、2005年からは東京オフィスを拠点とする米国の名門 Milbank LLP に移籍。約9年間にわたり M&A や資金調達などクロスボーダー取引を手がけ、ニューヨーク州弁護士としての資格を活かして国際案件の最前線で活躍されました。

2014年には Paul Hastings 東京オフィスに Of Counsel として参画し、アジア発の大型投資案件やテクノロジー分野の規制対応で高い評価を獲得。2018年、ソフトバンクグループに Deputy General Counsel として迎えられ、瞬く間にグループ全体の戦略法務を担うキーパーソンへと躍進します。2020年には SoftBank Group International の Regional General Counsel(日本・APAC・インド担当)として地域横断の法務管理を統括し、同年9月からグループコンプライアンス責任者を兼務。さらに12月にはソフトバンクグループ株式会社のコーポレートオフィサー 兼 最高法務責任者(Chief Legal Officer)に就任し、グローバル投資案件からコンプライアンス体制の高度化まで、ガバナンス全般を牽引してこられました。

こうした豊富な国際取引の知見と、多文化環境においてチームを束ねるリーダーシップこそが、Tim 氏のキャリアを一貫して特徴づける要素です。法律事務所で培った専門性と事業会社での経営的視点を融合させ、ソフトバンクグループの歴史的な投資を数多く支えたその足跡は、世界のインハウスローヤーにとって大きな指針となっています。

関連情報

[外部サイト]

  1. ティム・マキのソフトバンクグループGCO就任について(2020年9月10日、ソフトバンクグループ株式会社)
  2. 故・ティムさんのLinkedIn(数々のご受賞歴)
  3. 執行役員の退任について(訃報)(2025年6月9日、ソフトバンクグループ株式会社)
  4. ティム・マキさん死去(朝日新聞)

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(了)

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