“鏡の法務”―依頼者の目から見た法務部?「のらりくらり法務を打ち破る決断」(3/4)丨リーガルリスクマネジメントの教科書

「鏡にうつったあなたのコミュニケーションは?」「クライアントは選択肢がないから我慢しているだけではありませんか?」― 今回のシリーズは、耳が痛いかもしれません(私も読むと大なり小なり絶対にないとは言えず反省しきりです)。ここでは、事業部門のAさんになりきって、弁護士・法務部門Bさんとのやりとりを見て、私含め普段のコミュニケーションを一緒に自省・改善する修行コーナーです。

頼者・事業部門に寄り添う「最高のサービス」を提供する弁護士・法務部を一緒に少しずつ目指してまいりましょう🤝 Happy to helpです。

新技術導入に対する慎重すぎる対応:のらりくらり法務を打ち破る決断

新技術の導入は、企業の成長に欠かせない要素。しかし、慎重すぎる法務の対応がその道を阻むことも。今回は、優柔不断でのらりくらりと対応を避ける法務担当者に対して、柔軟に対処する事業部門の奮闘と決断を描きます。

登場人物

  • 事業部門 (Aさん): 新技術導入担当。物腰は柔らかいが、ビジネスの成功のために冷静に粘り強く交渉するタイプ。
  • リーガル部門 (Bさん): 優柔不断で決断を避け、リスクを取らないのらりくらりとした法務担当者。

会話の流れ

Aさん(事業部門):
「Bさん、お忙しいところありがとうございます。この新しいAIシステムの導入は、業務の効率化に大きく寄与すると思っています。競合よりも先に導入することで、かなりのアドバンテージが得られるので、早急に進めたいんです。リスク評価をお願いしたいのですが、いかがでしょうか?」

Bさん(リーガル部門):
「ええ、そうですね…。資料は一通り確認しましたが、個人情報保護の面でちょっと懸念がありましてねぇ…。どう進めたらいいか、今のところ結論を出すのは難しいところです。もう少し検討が必要かと…。」

Aさん(冷静に):
「なるほど、個人情報保護の観点ですね。そこは十分に気をつけたいと思っています。もし具体的なリスク軽減策があれば、私たちもすぐに対応しますので、ご指導いただけますか?」

Bさん(のらりくらりと):
「うーん、そうですねぇ…。一旦、さらに詳細な分析をした方が良いかもしれません。現段階で判断するのはリスクが大きい気がしますね。様子を見ながら進めるというか…とにかく急ぐ必要はないかと…。」

Aさん(礼儀正しく):
「相談を始めたのはローンチの3ヶ月前で、誤解があれば恐縮ですが、既に3ヶ月前にすすんでいないように感じています。ローンチは2週間後です。私たちもリスクを理解して進めています。できる範囲で対応策を講じつつ、導入を進められればと考えています。具体的なアクションを教えていただけませんか?」

Bさん(優柔不断に):
「そうですねぇ…。その辺りももう少し様子を見た方がいいんじゃないかと…。何か問題があってからでは遅いですし、リスクを見極めるまでちょっと待ってもらった方が良いかな、と。今すぐ何かを決めるのは…うーん…難しいですね。」

Aさん(徐々にイライラしながら):
「わかりました。でも、このままでは進まないので、すぐに結論が出せる方法を一緒に考えていただきたいんです。競合がどんどん先に進んでいる中で、ローンチも2週間後です。私たちだけが遅れるわけにはいきません。」

Bさん(煮え切らない態度で):
「ええ、まぁ、ちょっと考えさせてください…。うーん、どうしたものか…。確かに競合も動いていますが、法務としてはリスクがクリアにならない限りは…もう少し慎重に考えて…」

Aさん(決断して):
「もう結構です。お時間をいただきましたが、これ以上は待てませんので、法務部長のCさんと直接お話しさせていただきます。その方が話が早いと思いますので。私の部長Dさんからも、今日話しが進まないようなら、Cさんと話をしてくれと言われています。」

Bさん(慌てて):
「えっ…ちょ、ちょっと待ってください!部長に話を通すなんて…。私がもう少し検討を…いや、その…すぐに確認して対応を…」

Aさん(すっきりした表情で):
「いいえ、Bさん。これ以上待っていられないんです。私どもの部長であるDさんの指示もありますので。ご検討ありがとうございました。それでは失礼します。」


結論:
事業部門のAさんは、優柔不断で決断を避け続けるBさんに見切りをつけ、法務部長Cさんとの直接交渉を決意。事前に事業部のD部長と話をつけているあたりも流石Aさん。Aさんの毅然とした態度により、Bさんは慌てふためき、優柔不断な対応が露呈する結果に(きっとC法務部長にも3ヶ月現状をろくに報告していなかったことが想像されます)。Aさんは無駄な時間を過ごすことなく、スピーディーに問題解決の糸口を見つけるための新たな一歩を踏み出す。その後、C法務部長が驚き、激怒したことは言うまでもありません。

まとめ

法務部門の優柔不断さが事業部門の進展を阻むことは少なくありません。しかし、柔軟に対応し、リスクを管理しながら前進する姿勢こそが、企業全体の成長を支える鍵となります。法務もビジネスも同じゴールに向かって歩んでいることを再認識し、協力し合える体制を構築していくことが重要です。長の鍵となるでしょう。が求められています。事業の現場で、法務がどう見られているのか、今一度考え直してみてはいかがでしょうか?

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[リーガルリスクマネジメントの教科書とは?]

リーガルリスクマネジメントの教科書』(日本加除出版)は、2023年に出版された教科書です。リーガルリスクマネジメントという臨床法務技術を独学で学んでいただけるよう、心をこめて作成いたしました。きっと喜んでいただけると思います。

渡部友一郎『攻めの法務 成長を叶える リーガルリスクマネジメントの教科書』(日本加除出版、2023)

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(了)

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